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0679・戦争の話 その2




 Side:ロフェル



 「銃の事を知りたがってるとして、相手はどれぐらいの犠牲を考えてるんだろうね? それとも最初からコルクサだから犠牲者はどうでもいいのか……微妙なところかな。自国の者じゃないし、どれだけ死んでも気にしなさそう」



 ミクが唐突に言い出したけど、裏に居るオーレクトは確かに犠牲の事を何も考えていなさそうね。コルクサというか、草原コボルトがどれだけ死んでも気にしないって感じかしら? むしろ自分達は痛まないんだから、頭が良いとか思ってそうね。



 「コルクサをけしかけておるだけなのだから、何も痛むまい。オーレクトからすれば、関係の無い者が死んで戦力が分かるなら儲けものといったところであろう。実際、我が国が同じ事をしていたらそうであろうからな」


 「そうだろうけど、そうじゃない。犠牲者が大量に出れば混乱するだろうし、場合によっては瓦解する可能性がある。コルクサは遊牧しているのに、オーレクトの意向だけで今の時期に攻めて来た可能性がある」


 「ふむ。それは奴等の自業自得ではないのか? 仮にオーレクトが背後に居る事を知っていても知らなくても、己らの責任である事に変わりはあるまい」


 「そうだけど、あまりに負けると一斉にこっちへ向かってくる可能性があるよ。今までの形で生きていけないならと、女子供も含めて破れかぶれで向かってきたらどうする? って言ってるんだよ。飢えた者や憎しみで動く者には、理屈なんて一切通用しない」


 「それは……」



 確かにそうなる可能性もない訳じゃないわよねえ。季節外れの時期に700人も用意した。それは凄い事だけど、それで殺されたら男手が激減する事を意味してる。そしたら国を維持できるのかしら?。


 場合によれば、そこで負けた時点でコルクサは消滅間際の可能性すらあるのよねえ。そうなったら大人しく国で死ぬなんて事をする訳がない。生きていく為に破れかぶれになる可能性はある。いえ、むしろ高いかしら。



 「今までよりも大人数、かつ時期外れか。それで男手が死ねば確かに国として瓦解しても不思議ではない。元々、国としてはおかしいのだ。コルクサはモールトに対抗して国を名乗っているに過ぎん。国王というのも部族長となんら変わらん」


 「モールトって森コボルトの国の事? つまり森コボルトはちゃんと国家として経営してるって事ね」


 「しておらん。モールトは我が国の東の大森林にあるが、あれらも国と名乗っておるだけだ。森の中に居る部族長が王を名乗っておるに過ぎん。何故なら連中も狩りなどをして暮らしているだけだからだ。極僅かに農業もしているようだがな」



 知らなかったけど、森コボルトって国のていを為してなかったのね。確かに狩猟と採集で生きてるって果たして国と言っていいのかしら? それって部族であって国じゃないわよねえ。一応国と名乗れば国なんでしょうけど……。



 「かつて1つの町を国と呼んだ都市国家というものがあったけど、森に住んでるだけで国とは言わないような気がするけどねえ。どこまでいっても部族でしょうよ、それは。……コボルトって、もしかしてバカしか居ない?」


 「それは我等も思っておる。確かに我等ゴブリン族は他の種族より器用だ。しかしそれにしてもコボルトどもは愚かに過ぎる。オークでさえまともに国家を作っておるというのに……」


 「オークって帝国なんだから、ゴブリンより国も大きい筈でしょ。その割にはあんまり脅威だとは思ってないみたいだね?」


 「オークどもは他にあった国を支配下に入れて帝国となったが、そもそも戦争に強かっただけだ。技術力などを見れば我が国よりは当然落ちる。そして鳴り筒は我等ゴブリンが他種族に対抗する為の武器なのだ」



 あー、そういう事か。銃って力が要らないって聞くもんね。成る程。自分が十二分な力を持ってるから、その視点が無くなってた。確かにゴブリン族がオーク族を倒せる武器なのね。それならゴブリン族から生まれたのも分かる。


 体が小さく背が低く、他の種族に比べて弱いもの。ならば力の要らない武器を求めるのは当たり前よね。更にそれが遠距離武器なら画期的な事。作れた時に製作者は喜んだでしょう、これでゴブリン族の欠点を補えるって。



 「それを今回は草原コボルトに使うんだけど、不死玉も含めて相当にお金を使う事になるけど大丈夫なの? 銃はとにかくお金が掛かる武器で、運用するのも大変なんだよね」


 「それを言ってくれるな。今回の1戦であれば問題は無い。ただ、これが連戦となると相当に辛いな。正直に言って不死玉の買い取り額を減らしたいくらいだが、そうなると我が領からの流出が止まらなくなる。いっそ国で独占した方がいいのではと思っているよ」


 「前にミクが言ってたわね。<澱みの山>を持つのは、最後には国になるって。責任なんかを考えても、1領主よりも国が持っていた方が良いみたいだし。それなら狩人ギルドもそうそう簡単には売り捌けない」


 「1領主ならともかく国に睨まれるのはマズいだろうからね。狩人ギルドは独立している組織ではあるけど、ギルドそのものは国の首都に置かれている本部が統括している。独立と言いつつも国というしがらみからは抜け出せない」


 「1領主とは言ってくれるが、国と比べられたらその通りとしか言えんな。確かにそちらの言う通り、国の持ち物とすれば話は変わるだろう。変わるだろうが………領地にある物を手放すのは難しい」


 「まあ、分かるよ。先代からの連中は五月蝿いだろうし、自分の代で失われると記録に残るだろうからねえ。それでも、やらなきゃいけない事はやらなきゃ駄目なんだけどさ」


 「確かに……」


 「それは横に置いておくとして、私達を参加させたいから呼んだのよね? 話が銃とオーレクトなんかに飛んだけど、私達に何をさせたいの?」


 「そうだったな、すまない。君達はアルダギオン子爵領での戦いの時に輜重を運んだと聞く。しかしここでは不死玉を運んでほしい。火気厳禁なので気をつけてもらいたいが、不死玉自体は火を近づけても爆発はせん」


 「となると粉になったら爆発する? それも不思議なものだねえ。まあ、馬車に積んであるそれを運べば良いのなら了解だよ」


 「うむ。他の馬車にも運んでもらうのだが、君達には一番大きな馬車を頼みたいのだ。それが運べぬと、戦場で鳴り筒を試す事も出来ん。色々と考えている事があるのだ」


 「まあ、私達のやるべき事は了解した。で、依頼はいつから? ギルドを通すの?」


 「依頼は明日の朝からで、朝になったら屋敷まで来てくれ。そしてギルドを通さぬ依頼だ。鳴り筒の事があるのでな」


 「了解。じゃあ、そろそろ宿に戻らせてもらうよ」



 ミクがそう言ったので、私も挨拶して辺境伯の屋敷を出る。なかなかに面倒な事になったなと思うも、ミクが居るからおかしな事にはならないと分かる。仮に鳴り筒こと銃があまり役に立たなくても、戦争には勝てるでしょう。


 それも領主同士の争いじゃなくて、国と国との争いだもんね。今までのとはちょっと違う筈だし、草原コボルトに同情するところも無い訳じゃないけど……それでも攻めてきたのは向こうだからね。


 少なくとも攻めてこなければ負けなかったんだから、コルクサは大敗しても自業自得よ。もし負けそうになっても、ミクは分体2を出すんだろうしね。


 そういえば男性型の分体2は名前付けないのかしら? 男性型だから別の名前があった方が良いと思うんだけど……。


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