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0675・澱みの山の異変?




 Side:分体2



 さて、オーレクト帝国の者が間者として入り込んでいたのは分かった。こいつらで全員だと思うので、さっさと麻痺させて連れて行くか。まずは透明の触手で麻痺毒の注入だ。



 「「「「「ガッ!?」」」」」



 そして倒れたら人型になって目隠しを着ける。唯の布だが、こいつらに本体空間を見せる訳にはいかんからな。ついでに【善なる呪い】を刻んでおいて、と。……よし、これで完了だ。さっさと運んで辺境伯の屋敷の庭に捨ててこよう。


 間者どものアジトから出た俺は、ウェルスの町で一番大きい屋敷へと行き、そこの庭に間者どもを捨てていく。既に屋敷の者は就寝しているのか庭を見ている者は誰も居ない。俺は透明な触手を使って目隠しを取り、さっさと本体空間に戻った。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日。セリオが起きた後にロフェルを起こし、【浄滅】を使って準備が終わったら食堂へ。小銅貨20枚を支払って朝食を食べ、終わったら<澱みの山>へ。今日もアンデッドの判別と浄化の為に山を登る。


 昨日と同じ場所まで進んでも、レイス系のモンスターは何故か一切出てこなかった。しかしその理由をミクは瞬時に理解、放っておく事にした。昨日のオブジェを攻撃しているなど、ミク達にとってはどうでもいい事でしかないからだ。


 そのまま進んで行くと、遂に熊のアンデッドまで出現し始めた。ここは確実に現行ギリギリの場所とされている所だ。狩人ギルドにも出ていたが、熊のアンデッドが不死玉の大を持っている。


 他にも幾つか不死玉の大を持つアンデッドは居るのだが、それらは余り出てこないらしい。そもそも幾ら瘴気があったとしても、肝心のアンデッドの元になる生物が居ない限りは、瘴気からアンデッドが生まれたりはしない。


 なのでこの熊も<澱みの山>に来てアンデッドになってしまった熊なのだ。といっても弔いの気持ちなど無く浄化して終わりなのだが。



 「可哀想だとは思うけど、だからといって殺らなきゃ殺られる敵だしね。襲ってくる以上は倒すし、そもそもアンデッドは浄化してやるのが救いでもあるんでしょ?」


 「そうだね。アンデッドは<彷徨さまようもの>と言い換えてもいい存在だ。自分が浄化されて消え去るまで彷徨さまよい続けてしまう。しかもアンデッドを焼いたりすれば倒せるけど、それじゃ瘴気は微々たる量しか減らない」


 「大本である瘴気を減らすには、やはり浄化する為の魔法じゃないと駄目って事ね。いや、あの悪党が使ってた聖水でもいいのかな?」


 「アンデッドが入って来ないっていうか越えられないだけで、そもそも掛けて効果があるかは疑問なんだけど? あれも聖水って言われてるだけで、本当に〝聖水〟かは定かじゃないしね。あくまでもアンデッドが嫌う水ってだけだし」


 「唯の塩水だったら笑うけどね」


 「何で塩水?」


 「ガイアにある国の1つである日本では、穢れたものに対して塩を撒くという事をするのよ。地面に塩を盛ったりとかね。魔除けの塩って言うぐらいだし」


 「ふーん……」


 「まあ、それぞれの地域で色々な考えがあって、様々に活用されてきたんでしょうね。知識の無い者が塩漬けにしたら腐らない、だから塩は不浄を清めるんだ。とか言ったのが、ずっと後世にも残っただけかもしれないしさ」


 「ああ、成る程。古くから言われてる事って訳ね。そういうのはあるから、確かに塩が穢れに効くと言われてたら後世まで残るでしょう。本当に効くかどうかは別にして」



 そんな雑談をしつつもアンデッドを浄化していく2人。片手間で浄化している姿を見れば他の狩人は目を剥くかもしれないが、ミクやロフェルにとっては大した事では無い。そんな事を続けていると、大きな音が聞こえてきた。


 ドーン! ザザザザザザザザ! という、何かが吹き飛ばされた後、地面を滑るというか引き摺られるような音だ。ミクとロフェルは顔を見合わせた後、その音の原因へと向かった。


 【身体強化】をして走って行った先、その目で見たのは怪獣大決戦である。谷間になっている場所で、鱗が赤いレッドドラゴンとゾンビのドラゴンが争っている。


 何故かは分からないが、どうやらレッドドラゴンが劣勢らしい。



 「おのれ、まさかここまでとは思わんかったぞ! ゾンビになって逃げたのはともかく、このような不浄の場所で強くなるとは。貴様には既にドラゴンとしての矜持が無いようだな!!」


 「オオオオォォォォォォ!!!」


 「ドラゴンの矜持どころか唯のアンデッドとは……。幾ら私に勝ちたいと願ったからといって、ここまで愚かな事を仕出かすというのは呆れるしかないな。よほど私を殺したくて仕方がないのだろう。だが死んでやる訳にはいかん!!」



 ドラゴンゾンビが噛みついてきたが、レッドドラゴンはかわしつつ投げ飛ばす。理性がある分だけ投げたりは出来るが、パワーはゾンビの方が強いらしくスタミナが切れない。そのうえブレスまで吐いている。


 まさしく怪獣大決戦に相応しい状況だが、迷惑に過ぎる争いでもある。どうしたものかとミクが考えていると、急に矛先を変えたドラゴンゾンビがミク達の方に向けて火球のブレスを放ってきた。


 しかし【根源魔法】の【火球】をぶつけられたブレスは爆発し、空中で散ったのでミク達には傷を与えられない。それに癇癪を起こしたのか、ドラゴンゾンビはレッドドラゴンからミク達へとターゲットを変える。



 「しまった! ……そこの者ども早く逃げろ! その愚か者はそなたらを狙っておるぞ!!」


 「オオオォォォォォォォ!!!」



 ドラゴンゾンビが迫ってきたものの、ミクやロフェルは平然としている。それどころか内心、「腐った翼でも飛べるんだねー」と関心しているぐらいであった。


 迫ってくるドラゴンゾンビに対して無造作に【浄滅】を使ったミク。その結果、あっさりと消滅したドラゴンゾンビ。ミクにとっては大した敵でもなんでもないという証明である。


 しかも周りの多くの瘴気も浄化してしまい、今は清浄な空気が広がっているだけだ。レッドドラゴンはキョトンとした後、急にミク達の目の前まで飛んできた。



 「あの愚か者を滅ぼしてくれた事には感謝する。感謝はするが、そなたらはいったい何だ? 私の知っている生き物にそなたらのような者はらぬが……」


 「私はミクで彼女はロフェル、ただの狩人だよ。それより何でドラゴンがゾンビになってたかの方が不思議だけどね」


 「それは、まあ……下らん話だ。私とつがいを巡って争ったヤツだったのだがな、負けて余程に怨んだのであろう、私の命を狙ってきたのだ。まあ、再び返り討ちにしてやったのだが、ゾンビになってでも私を殺そうとしおってな」


 「ゾンビになったら瘴気を求めてここに来た、って事?」


 「そうだ。しかしここは瘴気が多く、それで予想以上に強くなりおったのだ。特にアンデッドは体力が無限にあるからな。実力が拮抗しておると疲弊して負ける。私もかなり疲れていたので、あのままだと負ける恐れが高かったのだ。感謝する」


 「知り合いっていうより友人っぽかったけど、いいの?」


 「構わん。そもそも里の皆の前でゾンビに変わったのだ。誰も擁護せぬし、私も滅んで当然だとしか思っておらん。気持ちは分からんでもないが、邪法に身を染めた時点で救いようなどない故にな」


 「まあねえ。多分だけど【死霊術】だろうし、あんな物を使用するヤツの気が知れないよ」


 「本当にな。そなたらには感謝するが、ここで見た事は他言無用で頼む」


 「そもそもドラゴンが自らゾンビに変わるなんて恐ろしい事、言う訳ありません。言ったって信じる者は居ないでしょうしね。ドラゴンってもっと賢いって思われてますし」


 「そ、そうか……。我等ドラゴンも他の生き物と同じく、嫉妬したりなど色々とするのだがな。まあ、そろそろ私は行く。そなたらには助けられた、ありがとう」



 ドンッ! という音と共にジャンプしたドラゴンは、そのまま翼を広げて飛んでいった。ミクはそれを見ながら、「やはり魔法を使って飛んでいる」と再確認できた事に喜ぶ。どうやら第1の星のドラゴンと同じようである。


 2人はドラゴンが飛んでいくのを眺めた後、さっさと元の場所へと戻っていく。まだアンデッドの浄化途中であり、帰る時間には早い。


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