0673・危険な薬の出所は?
「もう少しバカどもが居ると恒常的に瘴気を浄化できそうなんだけど、難しいかな? ああいうバカが居ないか、ちょっと探った方がいいかもしれない」
「アレを増やすのはどうかと思うけど、さっきの奴等に関しては完全に自業自得ね。ここで殺したとか言ってたし、瘴気を増やしていた連中とも言えるし。何よりレイス系のモンスターに怨まれてたのは確実だもの」
「そうじゃないと、私達を狙わずにあいつらだけを狙うっておかしいでしょ。どう考えても怨みの相手が居るからこそ、ターゲットが固定されてる訳だしね。それにしても狩人じゃなくて盗賊の連中だったけど、ああいうのも居るって分かったのは収穫かな?」
「収穫って……何だか嫌な予感がしないでもないわね?」
「それはともかくとして、ロフェルは練習を再開しようか。私は他にも怪しい奴が居ないか調べる事にするから。とはいえ、ここはある程度は進んだ場所だから狩人は多くないけどね」
ロフェルは周囲を調べつつ、アンデッドが居そうな場所へと【清浄】を使用する。人前ならば先ほどの【詠唱魔法】を使って誤魔化しても良いのだが、他人が居ないのならば【根源魔法】の方が楽なのだ。
「特に強力な魔法というか、こっちの方が有利だし? わざわざ不利な魔法を使う必要性が薄いのよねえ。知られない為にも一応は誤魔化すけど、知られたところで簡単には使えないでしょ」
「まあね。そもそも魔法陣の形を覚えていないと使えない以上は、教えてくれる奴が居ないと無理だよ。私は仲間以外に教えないし、見よう見まねで使えるようになっても1つか2つでしょ。なら特に問題ないね」
「特に【浄化魔法】が便利だから本当に助かる。【詠唱魔法】にも浄化系の魔法ってあるのかもしれないけど、私は知らないし聞いた事も無いのよ。ここまで便利ならあっても良いと思うんだけど、先ほどの魔法使いも浄化系は【光魔法】だったしね」
「【根源魔法】では浄化と光は別々なんだけどね。【詠唱魔法】では【光魔法】の中にあるって不思議だとは思う。ただ使われてる【詠唱魔法】が、この星だけなのか銀河か宇宙かは定かじゃないけど」
「その辺りは私には分からないし、多分だけど分かってる者は誰も居ないと思う。そもそもだけど魔法ってそういうものだと思ってるし、他の魔法があって使えるなんて思ってもいないわよ」
「ま、【詠唱魔法】が当たり前なら、それが魔法だと思い込むよねえ。こっちとしては都合が良いから、そのままにしておくけどね。それはともかく、なかなか安定しないねロフェルの的中率」
「うーん……この辺りから本当に濃くなってきてるから分かり難いのよ。それにしても、ここまで瘴気が濃いって何故かしら?」
「さあ? 原因探って潰したら、それはそれで辺境伯が五月蝿いかもね。不死玉が獲れる場所が無くなるってさ」
「銃が既にあるもんね。となると不死玉が獲れる所は利権だから仕方ないのかな? アンデッドが浄化されると考えれば悪い事じゃないんだろうけど……」
「そうだね。アンデッドが浄化されるのは良い事だよ。そもそも星の瘴気が集まって滞留してるなら、星はこんなにも穢れてるって事だからねえ。集まると分かりやすいって感じかな」
「成る程、星の穢れが集まってると考えたら、確かに分かりやすいかも。ただ、ここだけじゃない気もするけど」
「それはそうだろうね。この程度の場所が星に幾つかある筈だよ。それが10か20かは知らないけど、それぐらいないと星全体の瘴気と考えたら、ねえ……」
「瘴気って星全体だとそんなに多いんだ……。それを生きている多くの人が出してるとしたら、どれだけ不幸や悲劇があるのよ。いい加減にしてほしくなるわね」
「それだけ悪党が多いって事だよ。根源の神がゴミどもを見捨てる気持ちがよく分かるねえ……」
「ああ、それは確かにそうね。そこまで星を穢してるなら神々も見捨てる筈よ。それも1つの星だけじゃないんでしょうしね。そんなのばっかりなら、いい加減にしろって怒るのも当然よ」
ロフェルもようやく神々の怒りが理解できたようである。しかしミクに全て喰らっていいと言わない辺りが、根源の神々らしい慈悲とも言えるのだ。怪物からすれば判定が自分が任せで微妙な部分もあるのだが……。
それはともかく、ロフェルと共に<澱みの山>を進んで浄化していき、時間が来たので2人は【身体強化】で走って帰る。その速さは相変わらずであったが、一気に下ってウェルスの町へ。
町に近付いたら速度を落とし、門番に登録証を見せて中に入る。既に走る速さは知られたのか、警戒も驚きもされなくなっていた。そこまで注目されないなら都合がいいと、ミク達は足早に狩人ギルドヘと移動していく。
魔石だけを出して精算した後、酒場へと移動して大銅貨5枚を支払って酒と食事を注文。ゆっくりと待っているとマスターが話し掛けてきた。
「お前さん達は知ってるか? 何でも<ルットン商会>の会頭の家、その地下から危ねえ薬が見つかったんだとよ。御禁制の薬らしいんだが、見つかった書類なんかを調べたらコルクサから入ってきた物なんだそうだ」
「コルクサから? ……遊牧してる癖に危険な薬の元を栽培したりしてるのかな。それともウロウロする際に生えてる所から回収してる? 何にしても、いつ頃から出回ってるかとか知らないから何とも言えないね」
「何言ってんだ、今までそんなもんが出回ってた事なんてねえよ。ワシもこんな仕事をしてるが、そのワシでも聞いた事がねえんだ。間違いなくここ最近の話だぞ。流石にコルクサが戦争以外で絡んでくるなんて初めてだ」
「となるとコルクサ国の連中は搦め手を使ってきたって事かな? ウェルスを弱体化する為に危険な薬を撒いた、もしくは何かの資金源にする為に商人と裏取引をした? コルクサ国がどういう国か分からない以上は、全部想像にしかならないか」
「それは仕方ないんじゃない? だって向こうに行ったって聞いた事ないし、調べるのも難しいでしょうしね。向こうは季節毎に転々と移動してるって聞くし、それなら旅なんて出来ないじゃない? 簡単に余所者だとバレるわよ」
「町や村が無えなら補給も出来ねえしな。やつらはあそこで生きてるから大丈夫なんだろうが、こっちが探りに行ったらメシも食えずに死ぬしかねえ。流石にそこを調べてこいってのは……」
「酷に過ぎるねえ。なら攻めて来た奴を捕まえて拷問してでも聞き出すしかないよ。向こうのヤツに聞く以外に方法が無い。それにしても急に危険な薬をバラ撒くっていう行動も変なものだね」
「確かにな。今までそんな事もしてこなかったのに、急にだ。むしろオーレクト帝国の方がそういう事をやってきそうだがな? あそこは裏で怪しい事もやってるし、表では皇子皇女の殺し合いだ」
「ならさ。オーレクトが、コルクサに、売らせたんじゃないの? それなら、分かりやすくない?」
ちょっと酔ってきたロフェルがそんな事を言い出す。可能性的には無いどころか、むしろやり口としては正しいとも思える配置だ。コルクサの裏にオーレクトが居る。その考え方はマスターにとって違和感を感じないものであった。
ミクはオーレクト帝国の事もあまり知らない為、口を挟まずに食事をしていく。やがて考えが纏まったのか、マスターが口を開いた。
「可能性だけなら何とでも言えるが、オーレクトが裏に居るってのは一考の余地があると思う」
「そう。ま、私はオーレクトの事も詳しくないから何とも言えないんだけどね。とりあえず食べ終わったら連れて帰るよ」
ロフェルは既に撃沈しており、残った食べ物はレティーが溶かしていた。




