0672・悪党の末路
昼食を食べている間も攻撃をしてこなかったレイス系アンデッド。ミクは本当に何がしたいのか分からず困っていた。何故かミク達を襲う事もせずにジッと見ているだけなのだ。意味が分からず、しかし鬱陶しいなと思い始めた頃、誰かがやってくるのを感知した。
そいつらは5人組だったが、なにやら真っ直ぐにミク達に近付いてくる。それなりに瘴気はあるものの、しかしそれで見えなくなるという程に濃い訳ではない。
「おっ。誰か知らねえけど、メシ食ってるぜ。ちょうどいいや、お前らオレ達の分も持ってるだろ。寄越せよ」
「は? 何を言ってるんだ、おま……うん?」
「「「「「「「「「「オオオォォォォォォ!!!!」」」」」」」」」」
急にレイス系モンスターが活発になったかと思いきや、現れた男5人組に襲いかかる。しかし5人組は素早く水のような物を撒くと、その手前で構え始めた。襲おうとしていたレイス系モンスターは、その水の先には進めないようだ。
「ヒャハハハハ!! 久しぶりだなぁ、オレ達が殺してやった奴等が襲ってくるのはよぉ!」
「鬱陶しい奴等だ。光の精霊よ、その光で我が前の不浄を祓え。【光浄】」
「「「「ウウウゥゥゥゥ!!!!!」」」」
「チッ! 下手クソが。早くしねえと女どもに逃げられるじゃねえか!!」
「五月蝿いぞ。ならば貴様がやれ」
「ああ! んだと!?」
「やめねえか、このバカどもが!! さっさと始末しろい!!」
一番後ろに居たリーダー格っぽいのが強引に纏めると、魔法が使えるヤツは魔法を使ってレイスを攻撃していく。どうやら狩人登録をしている盗賊のようだが、ミク達は暢気に観戦しつつ昼食を続けていた。
何故なら一瞬で殺戮できるうえ、ここは<澱みの山>である。遠慮をする必要などは何処にもない。ついでに近くには狩人も居ないのだ、だからこそ急いで食事を済ませる必要も無かった。
その姿を見て腹を立てたのかは分からないが、男達の1人が持っていた棍棒をミク達の方に投げてきた。しかしその棍棒は空中で跳ね返るようにして男の頭に直撃する。ミクが透明の触手で投げ返したのだが、見た目だけなら空中で跳ね返ったように見えた。
「ぐあっ!? ……ググググ、クソがぁ!!!」
「ぶはははははは、何やってんだお前! 棍棒が跳ね返ってきて頭に当たったぞ。ギャハハハハハハハ!!!」
「バカ笑いはよせ、他の連中が来たらどうする気だ。光の精霊よ、その光で我が前の不浄を祓え。【光浄】」
「「「「「アアアァァァァァ!!!」」」」」
「やっと5体かよ、さっさと始末しろや!!」
「貴様らこそ効果が無くなってるぞ。早く次の聖水を撒け」
「チッ! オレ様に命令すんじゃねえ。魔法を使うしか能のねえカスが!」
「ほう、ならばお前達だけで戦え。私は帰らせてもらう」
「今さらホザいてるんじゃねえ! さっさと仕事しろ! それとテメェらもいちいち挑発すんじゃねえ、ボケ! ここで殺すぞ!!」
「「「「………」」」」
何だか協調性も何も無い、犯罪をする為だけに集まった連中らしい。既に昼食を終えて片付けまでしたミク達は、立って観戦していた。完全な暇潰しである。
ロフェルも魔法使いの魔法を見て覚えているようで、意外にも犯罪者集団は役に立っているようだ。
「チッ、面倒な。奴等は既に立ってこっちを見てるぞ。どうするんだ?」
「なに? クソッ! さっさと倒せ!! 今日は奴等をブッ殺したら帰るぞ!」
「仕方ないか。光の精霊よ、我が前の不浄を滅ぼしたまえ。【至光浄化】」
「「「「「「ギャァァァーーーッ!!!!!」」」」」」
「おお! そんなもん出来るなら最初からやっとけや!」
「ふん! これは一度使えば大半の魔力を失うのだ。後はお前達で何とかしろ」
「チッ! 役に立たねえヤツだ。まあいい、意外に金もってそうだからな。テメェの取り分は無、うぉあっ!?」
「「「「ぬあっ!?」」」」
急に5人組が宙吊りになり、逆さにブラ下げられる。当然やったのはミクであり、ロフェルもそれはすぐに分かった。おそらく透明の触手で足を掴んで、空中に逆さ吊りにしているのだろうと。
「クソがっ!! テメェ何かやってやがるな! さっさと離しやがれ!!」
「放せと言われて放すバカが何処に居るっていうのやら。それもこれから私達を襲うとホザいている奴等だ、放す訳が無い。そもそもお前達は宙吊りにされて逃げられない事が分からないの?」
「火の精霊よ、我が前の敵を燃やし尽くせ! 【火炎壁】」
ミクとロフェルの足下から炎が吹き上げ、それを見て喜ぶ5人組。しかしミク達は何の声も上げない。何故ならその魔法は欠片も届いていないからだ。炎が静まった後、2人は無傷で立っていた。
「あんな子供騙しが通じると思っているとは、随分と頭が悪い盗賊だね。とはいえ頭が悪いから盗賊なのだし、致し方ないというところか」
「な、なんだと!? 貴様なにをやった!!!」
「お前達ゴミに教えてやる必要なんてある? ないよね? 考えれば分かる事をバカみたいに口に出すとは、ね!」
リーダー格の男が隠していたナイフを投げてきたが、それを二本の指でキャッチしたミクは投げ返す。頭の中には「二指真○把」とか出てきているが、今はそれを消す。
投げ返されたナイフが腕に刺さったリーダーは「ギャーギャー」言い始めたが、ミクは無視して全ての触手の透明化を解除。男達の足を吊るしているものとは別に何十本もミクの体から出ていた。
「私がいつ人間種だと言ったのだ? 私が怪物でないといつ言った? お前達が敵に回したのはこういう怪物なのだ。理解したか? 理解したなら始めるぞ」
そう言ってミクは5人の体に触手を巻きつけると、それ以外の触手を刃に変えて切り裂き突き刺した。目を抉り、耳を切り落とし、鼻を削ぎ、両腕を落として傷口を焼き、両足を切り落として傷口を焼く。
あまりの激痛に意識を失うも、更なる激痛で無理矢理に起こされる5人。正しく地獄と言っていい光景にロフェルもドン引きしているが、ミクは淡々と処理を施していく。
最後に灰色の紋様が刻まれると、周囲から凄まじいまでの瘴気が5人に流入し、激痛にのた打ち回る事も出来ずに痙攣している。どうやら痛みが限界を突破しているらしい。
ミクはそれらのオブジェと化した物を持って道を外れて走る。ロフェルも一応ついていくが、ある程度離れた場所で地面を掘って放り込み、上から土を掛けて埋めていくミク。それを見て更にドン引きするロフェル。
元の道へと戻って【葬炎】を使って手足などを焼くと、ロフェルはミクに恐る恐る聞いてきた。
「もしかして、なんだけど………【瘴気の苗床】って、さっきのよね?」
「そう。あれこそが【瘴気の苗床】。心配しなくても息が出来なかろうが死にはしないよ。瘴気が死なせてくれないからね。ここにはたっぷりの瘴気があるから絶対に死は無いし、さっきの奴等はここで殺しをやっていたみたいだ。だから十分な罰となる」
「ええ。罰としては十分というか、あれ以上の罰は無いでしょうよ。聞いてたのと違ってピクピクしてただけだったんだけど、あれはなに?」
「ああ、あれね。簡単に言うと、あまりの痛みに声を上げる事すら出来なかったって事。唯でさえ瘴気が多い場所なんだからああもなる。感じ取れば分かるけど、明らかにさっき埋めた連中に向かって瘴気が流れてるでしょ」
「えっ? ………あっ、ホントだ。これってもしかして、ミクがやったってバレるんじゃないの?」
「別にバレても良いけど? 聞かれたら【瘴気の苗床】にしたと言えば良いだけだよ。だって事実だしね」
「それは犯罪だって言われて捕まったら?」
「滅ぼされたいと見做す。ただそれだけだよ」
「………まあ、そうよね。悪人だから刻んだんだし、それで文句を言うなら言った奴が何とかすれば良かっただけか」
「そういう事。何にもしない、もしくは出来なかった奴が文句を言う権利なんて無いんだよ。何より私が呪いを刻んだと証明出来なきゃ駄目だしね。もしそれを証明しようと思ったら、目の前で見た王城の誰かを呼ばなくちゃいけない。果たして要請して来てくれるかな?」
「協力は無理ねえ。自分に刻まれる可能性があるのに、それに協力するバカは居ないわよ」
つまりは、そういう事である。




