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0667・澱みの山




 次の日。ミクとロフェルは起きて準備を整えたら食堂へ行き、小銅貨20枚を支払って大麦粥を注文。席に着いて食事をし、終わったら出発。領都ウェルスから北へと進み<澱みの山>へとやってきた。


 2人にとって距離的には遠くなく、【身体強化】を使えば30分程度で到着する。麓からでも明らかに瘴気を感じ、何故か滞留する場所なのが肌でも分かる。あまり良い印象を持つ場所では無いからか、狩人も浅い場所で狩りをしているようだ。


 ミクとロフェルは気にする事なく進んで行き、<澱みの山>の領域に突入していく。まったくの知らない場所なので慎重に進むが、ミクに関しては既に敵の位置を補足している。それを教えないのはロフェルの成長に繋がらないからだ。


 そのまま進んでいると、初めてのアンデッドである鼠のゾンビが現れた。明らかにゾンビであると分かる見た目をしており、眼が零れ落ちながらも動いている。若干顔を引き攣らせながらも、【根源魔法】である【清浄】で浄化。一撃で終わらせた。


 鼠のゾンビは体が崩れると同時に風化して消え去っていき、サラサラと塵になって崩れては小さな白い欠片と魔石を残す。その白い欠片こそがどうやら<不死玉>と呼ばれる物らしかった。ロフェルも初めてなので、コレだという確証は無かったが。



 「なら粉にして火を着けてみれば分かるんじゃない? 1つならそうした方が早いと思う。これから多くのアンデッドを浄化する練習をするんだし、だったら1個ぐらい潰して確認しておくべきでしょ」


 「まあ、確かに言われてみればそうかな。場合によっては何十個と手に入るんだし、先に確認しておいた方が良いわね」



 そう言って2人は白い欠片が不死玉かどうかの確認を始めた。粉にするのはミクで、肉の塊で覆って粉砕。一瞬で不死玉は粉になった。それを地面に置いて離れた2人は、注目しながらロフェルが魔法で火を着ける。



 「火の精霊よ、我が前に小さな火を」



 白い欠片の粉は火が現れた瞬間「ドン!」と爆発して散った。予想以上の威力と音にロフェルはビックリしたが、ミクも予想以上の爆発の威力に顔をしかめた。


 黒色火薬の代わりになるのかな? ぐらいに思っていたのだが、予想以上に威力が大きく厄介な事が判明。手に入れた不死玉は小さな欠片に過ぎなかったのに、爆発の威力はそれから比べれば大きかったのだ。


 当たり前だがミクやロフェルを害せるような威力ではない。もちろん頭に当たればロフェルは死ぬかもしれないが、既にミクが自身の肉に記録を残している状態なので、たとえ脳が潰されても再生させられる。


 つまりロフェルのバックアップは常にとってあるのだ。これはロフェルも知っている事であり、流石に一度死んでしまっている為に安堵したのが正直なところらしい。一度でも死んだ事がなければ分からない感情なのだろう。



 「それにしても爆発の威力が大きかったわね。あんな小さい欠片なのに、あんなに大きく爆発するなんて……。あれを使ってるなら、そりゃ威力の高い武器にもなるわよ。銃っていうのが厄介な武器だとミクが言う筈」


 「厄介なのは小さい銃が出てくれば簡単に暗殺出来るようになるからだよ。弾は一発だけ、それが撃てればいい。そういうコンセプトで作れば、銃は小さく小さく出来るんだ。それこそ何処に隠されるか分からない」


 「確かに隠して持って来られると、見つからない可能性があるのか。それを一発でも使えれば、要人を暗殺出来てしまう訳ね。そんな恐ろしい世の中に進んで行く、と」


 「ある程度の者達が悲惨な目に遭うまで止まらないだろうね。何故なら権力者にとっても魅力的なんだよ。簡単に暗殺出来る武器というのは敵を倒せるから」


 「でもそれって自分に使われたら非常に危険って事よね? それを喜ぶの?」


 「権力者っていうのは色々な物に守られる。だから自分は大丈夫って根拠無く思い込むの。いや、それが自分に向くとは考えもしない。それに小国でも大国の王を殺せる。その事にも理解が及ばない」


 「それってさ。今まで足蹴にされていたような属国が、下剋上を行うって事よね? それが起きたら大混乱しない?」


 「大混乱するよ。でも一定程度はそういう事が起きないと、大国の王や皇帝は自分に向けられると理解しない。いや、理解しても敵を殺す魅力的な武器は手放せなくなる。そうやって泥沼の時代が始まる」


 「………」


 「愚か者はね、自分が殺されるかもしれないと思っても手放さないものだよ。その所為でずっと殺し合いだ。とはいえ、それはこの不死玉が手に入る土地を持ってなきゃいけない」


 「あっ! ……そうね。ますますアンデッドが居る魔境は重要な場所になっていくわ。辺境伯領だけ独立しそうね」


 「それどころじゃない。自分が手に入れる為に辺境伯家を暗殺する者達も出てくるよ。自分が持ってないから如何に危険か理解しないんだ。さっき言った王や皇帝と一緒だよ。そんな不毛な争いをし続ける事になる」


 「………」


 「おそらくだけど、最後には国の持ち物に変わるんじゃないかな? この<澱みの山>はさ。じゃないと愚か者の欲はとどまる事を知らないだろうね。国の物にならない限り諦めはしないよ、それが欲望ってものだからさ」


 「……はぁ。あまりにあまりだけど、ミクが言う以上はその可能性が高いって事よね?」


 「その通り。さて、下らない話をしてないで、そろそろ進もうか。運良くアンデッドが出てこないだけで、いつ出てくるか分からないからね」


 「ええ。鼠のゾンビも含めて気を付けておかないと、どんな病気をうつされるか分からないわ。スケルトンでも変わらないでしょうけど、まだマシかな?」


 「そうだね。腐った肉が危険なのであって、骨だけじゃ病気の危険は少ないかな? ただし少ないだけで全く無い訳じゃないけど」



 再び歩き出したものの、ロフェルはキョロキョロしながら敵を確認する。ミクは瘴気の濃淡を確認しているので位置は容易く分かるのだが、その方法自体はロフェルに教えてある。ただ、どうしても目に頼ってしまうのであった。



 「ロフェル、目に頼っても上手くいかないよ。瘴気の濃淡を理解しないと。それが出来ればアンデッドの位置は分かるようになる。大事なのは瘴気を感じる事だ、それは<澱みの山>に近付いた時に出来た筈」


 「あれを感じ取ればいいのよね。確かに近付く時には感じたのに、中へ入ったら感じなくなった。いえ、分からなくなっただけね。中に入ってしまったから、無い状態が分からなくなったのか」


 「そうそう。まずは瘴気というものを感じ取る事から始める。周りにあるのが瘴気なんだから、むしろ今の方が分かりやすいんだよ。もし分からないなら【浄化魔法】で綺麗にしてしまえばいい。そうしたら瘴気の有無は分かりやすくなる」


 「成る程、そんな方法があったのね」



 ロフェルはアンデッドの居ない空中に向かって【清浄】を使う。すると使われた空間は瘴気が浄化され綺麗な空間へと変わる。そこと瘴気のある場所を比べると、確かに微量の違いを判別する事は可能だった。


 気を良くしたロフェルは何度か【清浄】を使って瘴気を浄化し、瘴気の有無を正確に調べていく。段々とその事に没頭してしまったので、ミクはロフェルの邪魔をしないようにアンデッドを浄化して不死玉と魔石を回収する。


 傍から見れば危険地帯で何をやっているのだろうと思う2人であった。しかしミクはともかくロフェルは真剣に調べており、とても遊んでいるようには見えない。


 あくまでも本人だけだが。


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