0063・盗賊団殲滅
ミクは前で盗賊と戦い、左右に広がって出てくる盗賊はヴェスと騎士達が殺している。そんな状況も長くは続かず、盗賊が怖ろしい速度で減っていく。
流石にキレていた盗賊達もここまで殺されれば理解したようである、自分達が不利なのだと。
「くっそ! 高々数人で攻めてきたと思ったら、ここまで異常な奴等だったとは……! こんな事ならオレが前に出ておくべきだったぜ!」
「あん? お前が前に出てたら、あたし達に勝てたみたいな言い方だねえ。この状況を理解できてもいないか。盗賊っていうのは憐れなもんだ」
「ハッ! 言ってろや、ババア!! オレ様が前に出てきた以上、てめぇらに勝ちはねえんだよ! ……死ねや!!」
盗賊の頭は杖のような物を左手に持っていたが、それは魔道具だったらしく、突然火の玉がミクに向かって飛んでくる。
ミクは素早くカイトシールドで防ぐものの、結構な大きさの火の玉だった事もあり舐めるように炎が広がった。その為、咄嗟に盾を手放してバックステップを行う。
「チッ! あのまま火傷を負ってりゃいいものを。面倒な女だぜ。まあ、いい。魔石は十分にあるんでな、てめぇらを焼き尽くすなんて簡単な事なんだよ。そのまま死んでい、ぐぁぁぁぁl!?」
盗賊のボスが偉そうに喋っている間に練っていたのであろう魔力を使い、ヴェスは魔法陣から氷の矢を発射した。それが盗賊のボスの左腕に突き刺さり、かなりの深さまで到達したようだ。
「【氷矢】の魔法さ。魔道具を使って魔法を使った気になられてもねえ……ハッ! 所詮は盗賊の浅知恵だ、下らない」
「クソが!! てめぇら、なにもんだ!! 何でてめぇらのような奴等が、こんな田舎の盗賊の所に来やがる!! おかしいだろうが!!」
「たまたま王都に帰る前に盗賊どもを見つけてねえ、掃除しとこうと思ったのさ。行きは襲えなかったけど、帰りなら良いだろう?」
「は? かえ……せ、<雪原の餓狼>か!! チクショウ!! 何でてめぇみたいなバケモンと戦わなきゃなんねえんだ!! 最悪じゃねえか!!」
他の盗賊も理解したんだろう、途端に恐慌に陥る盗賊達。しかし残りの数も多くなく、ここからの逆転など不可能である。
盗賊達が驚いて動けない隙に一気に突撃した騎士達は、次々に盗賊を突き殺していく。もはや剣はボロボロで碌に切れない状態になっており、突きしか効果が無いような状態になっていた。
それでも突きは使えるのだから、やはり切るより突く方が使えるのは間違い無い。もしくはミクのウォーハンマーのように殴るかだ。未だに威力が衰えていない為、ドゴォン!! という音と共に頭が弾け飛ぶ。
「くそぉ!! てめぇだ! てめぇさえ居なけりゃオレ達が勝ってたんだよ! てめぇだけは道連れにしてでも殺してやる!!!」
「道連れなんて出来る訳がないでしょ、くだらない。幾らなんでも頭が悪過ぎる。でも盗賊ならこんなもんか、所詮は教育も受けてないし」
「ウェストライダ家を舐めるんじゃねえ!!!」
「なにっ!?」
ヴェスは驚いているようだが、ミクは気にせず始動。【陽炎の身体強化】を続けつつ、ウォーハンマーを盗賊のボスに投げつけた。
当然、武器を投げつけてくるなんて思っていないボスは慌てて腕をクロスするも、直撃したウォーハンマーによって腕を粉砕され吹き飛ばされる。そして地面に叩きつけられた瞬間、ミクの大型ナイフが喉に刺さった。
捻って抜いたミクは【清潔】を使って綺麗にし、剣帯に付いている鞘へと戻す。ヴェスが命じる前に止めを刺したミクに対し、騎士達は思うところがあるようだが、ミクは一切気にしていない。
「できれば捕らえて話を聞きたかったが仕方ない。戦闘においては敵を殺す事が先だ。それより洞窟の中を詳しく調べよう。本当にウェストライダ家の者なら、テリオルヴ家の奴のように何処かから支援を受けてるかもしれない」
「ウェストライダ家もまた国より裏切られた家……。何だか嫌な感じです。過去からの怨嗟の念が、今の国に降りかかっているような」
「言いたい事は分かるんだけどねえ、歴代の連中も私の話を碌に聞こうともしなかった。散々教えてやったって言うのに、最後は金やら品で懐柔される。それは国の歴史に汚点を残すだけだっていうのにねえ」
女性騎士も洞窟の中に入っていった。それを見たミクはすぐさまレティーに盗賊のボスの脳を食わせる。それを見ていたヴェスは驚いたが、ミクは黙るように言った。
レティーが脳を喰い終わった後、【念送】を用いてミクとヴェスに伝えてくる。
『どうやらこの男はウェストライダ家の者だと育てられただけのようですね。実際にその証拠は無いみたいですが、この国に対する相当の怨みと憎しみを植えつける形で育てられたようです』
「!? ……この声、まさかブラッドスライムが?」
「そう。レティーはイリュの持っていた【念送】というスキルを真似て、自分の意思を特定の相手にだけ送れる。そしてレティーは脳を食った相手の知識と記憶を手に入れられるの。だからさっさと殺して死体にしたわけ」
「成る程ねえ。しかし、ウェストライダ家として育てられた……か。今から200年ぐらい前に貴族で無くなってるから分からなくもないけど、子孫は今でも怨み続けてる。厄介な事さ、本当に」
『盗賊を始めたようですが、何の伝手もありませんね。元々の盗賊のボスを倒して、ここの盗賊団を乗っ取ったようです。貴族との繋がりは見えません。ただし、ここの領主を殺す計画はありますね』
「領主を殺すって……。仮に殺してどうするつもりだったのか、訳が分からないね。殺したところで領地が手に入る訳じゃないし、何か得をする訳でもない。むしろ顔が知られて、何処にも行けなくなるだろうに」
『とにかく獣王国に混乱が起こせれば何でも良かったようです。また何処かに移動して盗賊団を奪い、別の領主を殺す。そうやって混乱させようと思っていた、という感じでしょうか? まだ計画段階ですし、具体的な事は何も決めていません』
「あくまでも想像というか、妄想の中って訳かい。……おっと、戻ってきたね。特に何も無かった感じだけど」
洞窟の中から出てきた騎士達だが、何やら落胆したような顔をしている。なのでヴェスは何も無かったのだろうと思ったようだ。
「報告します。洞窟の中には生活雑貨や武器類以外は特に何もありませんでした。魔道具が他にないか探しましたが特に無く、魔石は多少あったぐらいです。それ以外には特に何も……」
「食い物はどうだい? 保存食か何かはあったろう」
「それが……汚れたものや、カビが生えかけたものなどがあったくらいで、まともな物は殆どありませんでした」
「洞窟の中は湿気が酷いからねえ。とはいえ、それ込みで保存するもんだよ普通は。ここの連中はそんな事も知らなかったのか、その程度の食料しか残ってなかったか」
「おそらくその程度の食料しか残ってなかったのだと思われます。如何いたしましょうか?」
「武器だけミクのアイテムバッグに入れてくれるかい? 何か使えそうなのがあったら、お前達が使いな。流石に盗賊との戦いでボロボロになったろうからね」
「「「「ありがとうございます!!」」」」
「それとは別に、ミクのウォーハンマーは凄いねえ。あれだけのパワーで振り回してるのに問題なしときてる。騎士もこういう武器を持たせた方が良いのかもしれないね」
ミクの武器を見ながら語るヴェス。携帯性には劣るから旅や移動の際には邪魔になるんだけど、と思いつつ、ミクは洞窟の中に入って武器を回収するのだった。




