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0663・ロフェルのランク上げ




 朝になって起き上がったミクは、適当に貨幣をアイテムバッグに詰める。あまり手に入っていないのは。ここのスラムの連中は金を持っているのが少ないのと、そもそも路上の者を多く喰らったからだ。


 組織としては辺境伯の組織とジャンキー組織くらいなので、碌に金銭を奪えなかったのである。片方は悪人の組織ではないので奪わず、もう片方は金よりも麻薬の組織だ。仕方がないと言えるだろう。


 ミクは【浄滅】を使って綺麗にし、その後にセリオとレティーを起こす。2匹の後にロフェルを起こしたが、寝起きで頭が覚醒していていないようである。ミクは大人しく覚醒するまで待ち、寝癖で跳ねた髪を整えてやってから宿の外へ出た。


 近くにある食堂を聞いていたので移動し、小銅貨20枚を支払って大麦粥を頼んで席に座る。適当に待っていると運ばれて来たので、食べつつ今日の予定を話す。



 「今日はっていうより、ランクが3になるまで買取してもらえないからね。まずはランク3を目指そうか。<澱みの山>に行くのはそれからだよ」


 「あ、そういえばそうだった。随分前の事だからすっかり忘れてたわね。ランク3じゃないと狩ってきても買い取ってもらないから実績にならないじゃない。……仕方ない、適当な依頼を受けて熟そう」


 「頑張ってきてよ。私はゆっくりするっていうか、ちょっと分体2を出して色々とさせる事があるから」


 「………何をする気?」


 『ちょっと辺境伯の屋敷を調べるだけだよ。この町に麻薬が入ってきてるからね。それもコルクサ国から入ってきてるみたいなんだよ。そこら辺を辺境伯が知っているかを探りたいの』


 「………色々と言いたい事があるけど、それは横に置いておくとして、私は1人で依頼を請けてくるわ。そっちに関わるのは良くないみたいだし」


 「良くない訳じゃないけど、関わる意味は薄いかなぁ。少なくともバレないようにしなきゃならないし」


 「ああ、うん。それ以上は話さなくていいから、とりあえずランクが3になるまではお預けね」


 「そうそう」



 そんな話を割と堂々と朝の食堂でしているが、気付いた者は誰も居ない。そもそも他人の会話に聞き耳を立てる者など多くないし、2人もそこまで危険な事を口走ってはいない。


 朝食後2人は分かれてミクは宿に、ロフェルは狩人ギルドに向かった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ロフェル



 さて、久しぶりに町中の仕事でもしようっと。それにしても本当に駆け出しの頃以来だから何年ぶりだろう? ちょっとした新鮮な気持ちになりつつ、私は狩人ギルドの扉を開けた。


 中に入るとすぐに掲示板へと移動し、そこにある依頼を見ていく。町中の仕事、町中の仕事……っと良いの見つけた!。


 私はラッキーな依頼を発見すると、その木札を掲示板から剥がして受付に持っていく。面倒でもこの仕事はランクを上げる為にはありなんだよね。あって本当に良かった。



 「町の外壁の修繕ですね? 一日仕事ですが、それでもいいですか?」


 「はい、お願いします」



 手続きを終えた私はすぐにギルドを出る。町には色々な仕事があるが、とりわけ町そのものに関わる仕事を熟しておいた方が良い。理由はランクが上がりやすいからだ。査定も甘めにしてもらえるしイメージも良くなる。


 私も詳しく知らないが、ギルド内部では狩人を裏で査定していると聞いた。それはランク7になってから初めて聞けた事だけど、ランク6まではギルド内部での査定で上がるようになっている。


 とにかく地道に真面目にしていると評価が高いらしく、適当な事をしている者はなかなかランクが上がらない。それでも長く頑張れば上がるらしいけど、一定以上には上げないようにしてあったりする。


 特にランク6にする条件は、一定以上の実力と一定以上のギルドへの貢献らしい。ミクの場合は強さが突き抜けているからのランク6だけど、普通はあんな強さなんて持たないから地道に実力を伸ばしていくしかないのよねえ。


 って、現場に着いたから早速挨拶しよう。昔も何度かやった事あるから分かるんだよね。



 「こんにちわ。狩人ギルドで依頼を請けたんですけど……」


 「おう。仕事を請けてくれたか、とりあえずそこに居る奴に話を聞いてから初めてくれや」


 「他の町で同じ仕事を請けた事があるので、多少の説明で大丈夫ですよ」


 「そうか経験者か、そりゃ助かる。早速だが補修をしていってくれ。壊して直すヤツじゃなく、壁塗りだ」


 「分かりました」



 町の壁は基本的に大量のレンガを積んで、それに何かを塗りつけた物だ。その土地によって塗る物は異なり、ワルドー伯爵領では土に麦の茎を細かくした物とモンスターの骨を砕いた物を混ぜた物だった。


 見てみると、ここウェルスの町も特に変わらないらしい。昔、散々塗ったから未だに感覚は忘れてないね。それじゃ、さっさと塗り始めますか。



 …

 ……

 ………



 「おーい。そろそろ昼だから、一旦休憩にしろー!」


 「はーい。分かりましたー!」



 私は足場の上から下りて地面に着地。高い所は危ないけど、町の壁は少なくとも3メートルある。これは最低でもこの高さがないとモンスターが町に侵入してくるからだ。王都の壁は5メートル、いや7メートルくらいあったかな? とてつもなく高かった。


 何処の町もあれくらいの壁にしたいだろうけど、町を拡張する際に困るだろうなとは思う。だってあんな高さじゃ壊して広げるにも時間が掛かるし、その間にモンスターが襲ってくる可能性がある。


 きっと色んな人が協力して何とかするんだろうけど、それでもあの高さは大変だと思う。そんな事をつらつら考えつつ戻りながら、誰も見ていない所で【清潔】の魔法を使って汚れを落とす。


 こんな便利魔法、【詠唱魔法】じゃ聞いた事が無いのよねえ。アンデッドを浄化する魔法があるとは聞いた事があるけど、体や何かに付いた汚れを落とす魔法なんて驚きよ。【根源魔法】って本当に便利。


 【詠唱魔法】でも同じようなものがあればいいのに、どうして神様達は作らないんだろう? それとも私が知らないだけ? ミクが言うには清潔にしていたら病気に罹りにくくなるっていうし、ある意味で一番必要な魔法よね?。


 その割には聞いた事も無いしさ。だいたい【清潔】の魔法は危険な魔法でも何でもないんだから、もっと普及してなきゃおかしいのよ。それなのに何で影も形もないんだろ? おっと、宿に着いたから考えるのは止めよう。


 私達がとっている宿の部屋に戻ると、ミクはベッドで寝ていた。とはいえ眠る必要は無い筈なので何かしてるんだとは思うけど……。



 「おかえり。………ああ、辺境伯の屋敷は調べ終わったから情報を精査してたのと、本体空間で鉄の武具をインゴットに戻してただけだよ。売るにしても武具のままだと出所で五月蝿そうだからさ」


 「それは分かるけど、大量に売ったら結局出所を探られない? それじゃ意味無いと思うわよ」


 「ここで売らないから大丈夫。分体2に適当に売ってきてもらうか、最悪はアルダギオン子爵家に放り投げる。あそこを攻めて来ていた奴等の物だし」


 「あんまりストレーナに迷惑掛けてると怒り出すわよ?」


 「大丈夫、大丈夫。儲かるんだし、最後は諦めて受け入れるよ。迷惑だけならまだしも、ちゃんと利益も渡してるしね」


 「それでも気をつけた方がいいと思う」


 「そう。ならこの近くの村や町で売るよ。ちょうどウェルスの町に来る前の領都で、暗殺組織からアイテムバッグを奪ってるからさ。それに鉄のインゴットを大量に入れて商人風の格好したら職人には売れるでしょ」


 「まあ、職人なら買うでしょうね。でも品質が悪かったりしたら買ってくれないわよ?」


 「私が作ってるのに品質が悪いと思う?」


 「………悪いって事はあり得ないでしょうね。良すぎて何処の鉄だとか聞かれそうだけど」


 「そこはそれ、商人の秘密の仕入先だと誤魔化せば済むよ。どうせ一回きりなんだし」



 まあ、それなら問題ないかな?。


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