0662・スラムと商人
Side:分体2
今度は辺境伯の領都の掃除か。神命でもあるからやるし、悪人は情け容赦なく女子供だろうが喰らうがな。それにしてもスラムに溜まってる奴等が多いな。もしかしたらだが、人数だけで言えば王都よりも多少少ないだけかもしれん。生命反応が既に多い。
スラムの範囲からすれば人口密度はこちらが上だろう。そう思えるくらいには人数が多いが、それでも俺のやる事が変わったりはしない。毒を注入して喰らう、ないしはそのまま喰らうぐらいだ。悪人を喰う事はブレないから当然だが。
とはいえ密度が濃いと、悪人とそうでないのが同じ場所に居たりするから面倒だ。こういう場合は毒を使わず、一瞬の早業で肉で覆って転送する。喰うのは本体空間でも出来るからな、まずは消してしまう事が重要だ。
普通のヤツや善人は置いておき、スラムの中の悪人だけを殺して回る。いつもと同じ事を繰り返すだけだが、気配、魔力、精神、生命力を隠して、更に透明化の能力で透明になっている俺が見つかる事は無い。そう思っていたのだが……。
「カッカッカッカッ!」
「どうしたんだ急に興奮して、何かあったのか?」
鳥形の魔物を腕にとまらせたヤツが、興奮する鳥を宥めている。もしかしたら俺の匂いを感じ取ったか? それとも何かしらの能力で俺を感知している? まさかテイマーなんていうのが居るとは思わなかった。今までの場所では見なかったんだよな。
それとテイマーは割と希少な部類に入る為、そうそうテイマーになれる訳じゃないらしい。【感応】というスキルが無いと成れないらしく、それがモンスターなどの言いたい事が何となく分かるスキルなんだそうな。それでも言う事を聞くモンスターを探すのは大変らしいが。
まだテイマーの腕にとまっている鳥が騒いでいる。俺は建物の壁を登っているが、鳥の奴がジッとこっちを見てるんだよな。騒がなくなったのはいいが、バレてる可能性が高い。こっちを攻撃してきたら喰らってもいいんだが、攻撃はしてこないから余計に面倒な事になっている。
流石のモンスターも何となく手を出すとマズいと分かっているのだろうか? ついでにテイマーの方も普通のヤツで、特に悪い訳でもない。実に面倒な奴等がアジトの前に居やがる。ワザとかこれは?。
ピンポイントで俺に対する嫌がらせをしやがって……。それでも鳥が襲ってこなかった為、俺はスラムのアジトに潜入した。本当に面倒だったな、さっさと処理して行くか。
そう思ったんだが、ここの組織の奴等は変だ。悪人が殆ど居ないぞ? もちろん寝ている奴が多いから、その中から悪人は喰らうんだが……。訳が分からんな。
………ああ、そういう事か。この組織自体が辺境伯の紐付きで、その内部に潜り込んだ連中が悪人だったと。分かりにくいものの、スラムの連中を統制するには、それだけの暴力が要るって事でもある。
体制側と繋がってるって事は、良い意味で辺境伯は見捨ててないって事だ。悪い意味ではスラムも牛耳ってるとなる訳だが、薬を打ったり破滅させたりしている訳じゃないっぽいのでセーフだろう。
ここの辺境伯は健全な方法でスラムを治めようとしているだけだ。そしてその方向性である以上、俺が邪魔する事は無い。
「カッカッカッカッカッ!」
「またか。本当にいったいどうしたんだ。急に興奮し始めるなんて今まで無かったのに……」
俺の邪魔をするヤツは居るが、さっさと離れるから騒ぐな。俺は建物と建物の間から別の路地へと抜け、騒ぐ鳥から距離をとった。それにしても出て行く時まで面倒な鳥だったな。他にも厄介なモンスターをテイムしてる奴が居るかもしれん。注意して進もう。
次のアジトに来たが、ここは完全にアウトだな。どうも麻薬系の薬を使ってるらしく、イカれてるヤツが多い。どこから薬が入って来ているのかは知らないが、中に居るのはジャンキーばかりだ。話を聞く意味も無い。
麻薬系の薬も同じく本体には効かないし俺達にも効かないが、だからと言って納得は出来ない。コレ系の薬は肉がマズくなるんだよ。ガイアでもそうだったが、バカは肉までマズいという碌でもない生き物なんだ。
クズならせめて肉ぐらいはマシにしておけって思うし、ガイアでも薬の成分はその辺りに適当に捨てていた。そもそも本体には要らない物だし、上手く扱う気にもならない。毒は物によって美味しいので味付けには使えるのだが麻薬系は駄目だ。
こんな所というか、こんな文化の星でも麻薬は出回っているらしい。古代からあったという話しだし仕方ないのかもしれないが。
(それでも出回っているというのが問題だな。もしかして辺境伯はこれを取り締まる為に組織を使ってるのか? だとすれば分からなくも無い)
これが一般人にまで出回るとかなり問題だ。何とかスラムだけで食い止めないと死の町にすらなりかねんぞ。もちろん先ほどの組織の連中が何も考えていない訳がないだろうから、わざわざ俺が関わったりはせんがな。
それにしても早速おかしな部分を発見したな。よし、ジャンキーどもの掃除は完了。レティーも嫌がってるが仕方ない。むしろジャンキーの情報こそが必要だからな。その情報は………おいおい、マジかよ。表の商人が関わってるって?。
今日はそっちを潰すのが先だな。一旦スラムを脱出して商人の店に行くと、それなりに大きな店に侵入する。店の中を【空間魔法】の【掌握】で調べると、隠された麻薬類は発見できなかった。となると、ここじゃないな。
俺は裏にある店主の自宅に侵入し、再び【掌握】を使う。すると地下に麻薬類を発見した。地下への通路も発見したので、まずは商人とその家族を探す。生命反応を元に調べるのだが、家族全員アウトだった。どうやら薬をヤっているらしい。
こいつらもジャンキーだったのかと思いつつ喰らい、脳を調べさせると面白い事が判明した。この麻薬類、なんと入手先は草原コボルト。つまりコルクサ国だ。
奴等が何故攻めて来るのかの一端が何となく見えてきたな。もしかしたら食料などの受け渡しを知られない為に攻めて来ているのかもしれない。確かコルクサ国は主に弓兵で向かってくると聞いている。
となると近付かなくてもいい訳だし、敵を倒せても倒せなくてもどっちでもいいとなる。つまり敵の目を引きつけておき、どこか別の場所で取り引きをする。そうすれば辺境伯は分からないままだ。
食料を手に入れる為なら、そこまでするかもしれない。そしてこっちの商人どもは儲かる為なら何でもやる可能性がある。そもそも既にこの商人という実例があるんだしな。
仮にコレが裏だとしても、今さら普通の取り引きなんてゴブルン王国は許さんだろう。今までに数多くの国民が亡くなっているんだ、その遺族が許すまい。だからこそこういう方法に出たのか?。
昔から麻薬類を流していたのなら領都に蔓延してなきゃおかしいし、取調べも厳しくギスギスしていなければ変だ。その割に町の表には出回っていないとなれば、麻薬類を流し始めたのはここ最近か?。
今までは別の事で食料を得ていた? ……草原コボルトの悪人が居れば喰らって情報収集するんだが、居ない以上は何を考えても想像にしかならんか。今日はここまでだな。明日で残りの奴等は喰えるだろうから気にしなくていいか。
それよりこの家族を食い荒らしたら、麻薬類のある地下室は開けておこう。乾燥させた薬物だから、地下室を開けていても問題あるまい。そもそも麻薬類以外は、怪しい盗品っぽいのぐらいしかなかった。
それもついでに見つかればいい。




