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0661・酒場での会話




 夕方頃までゆっくりと休んでいたミクとロフェルは、酒場へと移動しカウンターで夕食を注文する。大銅貨8枚を支払ったら酒が運ばれ、ミクとロフェルは飲みながら夕食を待つ。相変わらず酒は飲むようである。


 少し経ったら食事が運ばれてきたので、セリオとレティーをカウンターの上にあげて夕食を食べる。ここもそうだが、マスターは特に文句を言ったりしないようだ。今まで文句などは言われた事が無いので特に問題無いらしい。



 「そらそうだ。モンスターテイマーの奴等も居るからな。こっちにとっちゃ売り上げが増えてくれりゃ何でもいいのさ。それにテイマー連中の連れてるモンスターは暴れたり襲ったりしないんでな。お前さんのもそうじゃねえのか?」


 「セリオもレティーも仲間だし、私はテイマーとかいうのじゃないよ。どのみち2人は話せば言葉が通じるしね」


 『そうそう、言葉が通じないのと一緒にされたら困るよ。僕達あんなに頭が悪くないしね』


 「そうですね。会話が出来るのですから、わざわざ暴れたりなどしませんよ」


 「………会話が出来るモンスターなんて初めて見たが、そりゃ会話が出来りゃ暴れたりせんわな。話せば分かるんだし。会話にならねえ草原コボルトどもよりも、よっぽどマシってもんだ」


 「草原コボルトってそんなに会話にならないの? 昔から攻めて来る奴等って聞いたけど、そもそも西の奴等は何で攻めて来るのか知ってる? 話を聞いてもそこが抜けてるんだよね」


 「さあな? そういやワシも何で攻めて来るか何ぞ、聞いた事も無いな。奴等は攻めて来る割には、こっちの領土を奪おうとはしねえ。となりゃワシらを殺したいだけか? いや、しかしそんなことで攻めて来るか、普通?」


 「結局、理由は分からないみたいね。草原コボルトというか、コルクサが国として攻めて来る以上は、攻めて来る理由があると思うんだけど……。ミクも言った通り、本当に聞いた事が無いのよ」


 「理由が分かれば対処法も分かると思うんだけど、何故かはサッパリだし分からないまま争ってる。何故か攻めて来なかったり攻めて来たリするし、その期間もまちまち々だったり訳が分からない」


 「確かにそうね。定期的に攻めて来るなら略奪目的とか色々と考えられるけど、そういう感じでもないのよ。ミクは何か考えがあるの?」


 「んー………最初に考え付くのは食糧問題? 向こうは遊牧民族だから、そもそも食料が不安定な筈。だから草が足りないとか、あるいは殺した敵を食料にしてる? 家畜の」


 「「………」」


 「いや、黙られても困るよ。向こうはコボルト族であってゴブリン族じゃないからね? だったらゴブリン族を家畜の餌にする可能性もある。食糧問題は何処も切実だよ、飢えている奴等に何を言っても通用しないし」


 「まあ、それはそうだけどね。……確かに食料問題っていうのはあるかもしれない。誰でもそうだけど食べなきゃ死ぬからね。もしくは軍の鉄製装備なんかを奪ってる?」


 「それを金にして食料を買うって事か? どこに売るんだよ。奴等は遊牧民族で国ん中をウロウロしてる連中だぜ? そもそも商売すらしてねえだろ」


 「なら、何処かの国から依頼されてる? 食料を渡す代わりにゴブルン王国を襲えってさ。可能性としては無い訳じゃないと思う。とはいえ可能性だけなら幾らでも言えるんだけど」


 「そうねえ。とはいえ敵の理由が分からないと、延々と向こうに弓矢を射かけられるままになっちゃうし……困ったものねえ。まあ、分かっても解決しない可能性もあるけども」


 「ごちそうさま。そうだね、とはいえ相手が分からないと難しいと思うよ。敵の事が分からないっていうのが一番不毛だからね」


 「不毛かぁ……分からなくもないけど、もはやここまで攻められてたら解決しない気もする。怨みも憎しみもあるだろうしさ」


 「そうだな。ワシらの子供の頃どころじゃねえ、爺さん婆さんより遥か昔から攻めて来てるからな。そのうえ奴等を追いかけた所で拠点なんて持たねえから意味ねえんだ。あいつら逃げりゃあ済む連中だからな」


 「それは腹立たしいだろうね。それでも何か新しい武器が辺境伯様の軍は使えるとか聞いたけど? 不死玉を使うヤツ」


 「そんな情報まで出回ってんのか?」


 「私達はアルダギオン子爵領から来たけど、噂自体は出回ってるよ? 王都でもちょろっと耳にしたし」


 「そうか。既に色々な所でその噂は出回ってんのかもしれねえなあ。お前さんらはその武器目当てで来たのか?」


 「逆、逆。その武器に不死玉が要るなら儲かりそうだから来たんだよ。狩人が金稼ぎ以外を考えてどうするのさ」


 「狩人なら良い武器を持ちたいのも当然だと思うが?」


 「生憎と自分が持ってない、どんなのか見た事もない武器を欲しがる事は無いね。それが使えるかどうかすら分からないのに、良い物だと決め付けるのは危ない事だよ。使うのにお金が掛かる物なら破産しかねないでしょ」


 「不死玉を使、うんだし、その可能性は高そう、だよね。ごちそうさま。そろそろ宿、に戻ろうか」


 「喋る事は可能だけど、相変わらず足下が覚束おぼつかないね。酒飲むとすぐコレだ」



 面倒になったのかミクは右脇に腕を回して支える。背中から右腕を回すような形でロフェルの右脇に差し込み、そのまま歩かせる形で宿へと戻って行く。先ほどの会話は酒場のマスターに聞かせる為のものだ。


 何故なら領都の酒場のマスターは、高い確率でそこを治める貴族の目と耳なのである。アルダギオン子爵の東西南北の貴族や、ゴヴェスティ公爵の領都でもそうだった。悪人だから喰ったが、そのどれもが体制側と通じていたのだ。


 それを知っているミクとしては、ここの領主である辺境伯に聞かれる前提で話している。特に見た目などで話題になりやすいので先手を打った形だ。これで向こうがどう出るかだが、ミクはその辺り気にしていないようである。


 宿の部屋に戻ってきてから、ミクはロフェルと【念送】で会話する。



 『これで酒場のマスターから話は通るだろうけど、こっちに目をつけてくるかまでは分からないね。まあ、手を出して来れば喰うんだけど、その可能性は高くないかな?』


 『辺境伯を任されるくらいだから、可能性は高くないと思う。そもそも辺境伯って、国境の貴族だし、裏切らない忠義と強さがないと、任じられないって聞くしね。独自の権利も結構認められてるって、聞いた事があるくらい、凄い貴族だよ』



 ベッドの上で寝転がりつつミクとロフェルは会話しているが、既にロフェルが怪しい。目を開けても居られない程であり、すぐに眠ってしまいそうになっていた。なので面倒になったミクはそのまま寝かせる。


 狐の毛皮を取り出したミクは、その上にセリオとレティーを寝かせたら分体2を窓から外に行かせた。後はスラムを叩き潰すだけだが、辺境伯の領都もそれなりにスラムが大きいようだ。


 魔境が近いから少ないかもと思っていたミクは、やはり多くの者が流入する場所はそれだけスラムが大きいのだと理解した。魔境での死亡者が多い分、スラムの人数は少ないのではと予想していたのだが……。



 (おそらくは孤児が多いんだろうね。そしてその孤児が浮浪者となってスラムに行きつく。嫌な構図ではあるけど、何処にでもある構図とも言えるか。親が死んでるパターンだとガイアでも生きていくのは大変だ)



 魔境がある以上は獲物が多いのだろうが、その反面死亡確率も高い。魔境があるから狩人が集まるが、その分だけ孤児が生まれやすい環境でもある。


 辺境伯が何もしていない訳ではないのだろうが、それでも増えていくのが現実なのだろう。


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