0658・鑑定の石板で遊ぶ
あまりにも泣くストレーナを宥めつつ、ミクとロフェルはソファーに座る。そして今までどうしていたかを端的に話していく。深く話さないのはストレーナに聞かせる意味もあまり無いからだ。
「簡単に言うと、とある者が強引にロフェルの遺体の時間を巻き戻し、私が傷を埋める形で治した。とはいえ死んだ者を蘇生させるのは理に反する事であり、本来許される事じゃない。だからこそ、再誕させる必要があった」
「再誕ねえ……。何だか大きくなってる気がするし、そのうえゴブリンじゃ無くなってるみたいだけど?」
「ドラゴンの肉と骨に、とある生き物の血肉を加えた結果、竜霊族とかいう新種族になったよ。まあ、再誕すればさえ良いんだから、種族なんてどうでもいいんだけどね」
「いやいや、良くない良くない。新種族ってなに? ドラゴンの肉と骨ってなんなのよ!? 色々おかしいから!」
「新種族は新種族だね。もしかしたら新種族じゃないのかもしれないけど、私は聞いた事が無いんだよ。ああ、調べたのはこれね。<鑑定の石板>っていって、手を乗せて魔力を流せば調べられるよ」
ミクが出した<鑑定の石板>に興味津々のストレーナとエリザヴェート。早速エリザヴェートが手を置いて魔力を流したのだが、その結果は面白いものであった。
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<エリザヴェート・ワルドー>
種族:ゴブリン族
年齢:14
性別:女
スキル:前世記憶・小器用
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「【前世記憶】はともかく【小器用】ってなによ。凄く器用って訳じゃなくて、ちょっと器用ってだけでしょ? 何で私のスキルがこんなチャチなものなの? 何かすっごく腹立たしいんだけど」
「器用系のスキルって滅多に聞かないので相当運が良いと思いますよ? だって器用さってありとあらゆる部分に関係してきますし。むしろ少しでも器用になるなら、そのスキルが欲しい方は多いでしょう」
「えっ!? そうなの? ……そっかー、まあレアスキルなら納得はするかな。それでもちょっと器用になる程度だけど……。まあ、書類を書いたり御菓子を作ったりする程度だから、器用な方がいいか」
「では、次は私ですね」
そう言って今度はストレーナが<鑑定の石板>の上に手を置く。魔力を流して出た結果は、何とも言えないものだった。
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<ストレーナ・アルダギオン>
種族:ゴブリン族
年齢:15
性別:女
スキル:八方美人
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「………【八方美人】って。これまた微妙なのか、それとも上手くいく為のスキルなのか悩むところね。何か逆ハー狙って失敗みたいな臭いがする」
「えっと、これって美人………って訳じゃなさそうね?」
「<八方美人>って言うのは、誰にでも良い顔をする主体性の無いヤツの事を指す言葉なんだけど……。周り全てに良い顔をして上手くいくから、このスキルなのかな?」
「………私、別に誰彼構わず良い顔なんてした事は無いのですけど」
「そういうスキルなんだし諦めたら? ただし悪い意味のスキルなんて無かった筈だから、何かしら有利になるスキルなんだと思うよ?」
「むー……ロフェルはどうなんですか。ちゃんと見せてください!」
「別に良いけど、さっき言ったと思うんだけどね」
今度はロフェルの番らしいが、先ほど口頭で伝えたのを忘れたのか、それとも自分の目で見たいだけだろうか? どちらにしてもロフェルは<鑑定の石板>に手を置いて魔力を流す。
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<ロフェル>
種族:竜霊族
年齢:0
性別:女
スキル:武魔一体・天覚・竜鱗
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「………本当にドラゴン系種族に変わってる。特に見た目には出てないけど、【竜鱗】とかどう考えてもドラゴン系以外あり得ないでしょ。後ゼロ歳にツッコミはしないから」
「まあ、ゼロ歳なのは再誕したかららしいから、私に言われても困るんだよね。どうする事も出来ないし」
「まあ、それはそうでしょうね。新しく生まれるから再誕なんでしょうし。それよりもミク殿はどうなんですか? 私達ばっかりにさせてますけど、これを持つミク殿の鑑定も見せてください」
「いやー……それはいいんじゃないかな?」
「私もそれは見なくてもいいと思うな。謎は謎のままでいいと思う」
「何を訳の分からない事を言っているのですか。ミク殿以外は皆見せたのですから、いいじゃないですか!」
「まあ、見たいなら別にいいんだけどね」
そう言ってミクは<鑑定の石板>に手を置く。魔力を流して出た鑑定結果は、ミクの予想した通りのものであった。
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<ミク>
種族:???
年齢:???
性別:???
スキル:無し
権能:善の神の一部・悪の神の一部・呪いの神の一部
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「「「………」」」
「やっぱり呪いの神の権能がプラスされてるだけか。前回と大した違いは無いね。この分だとセリオとレティーは全く変わらないかな?」
『それでも、とりあえずやってみようよ。せっかくだし』
「そうですね。では私から」
そう言ってレティーが<鑑定の石板>に体を乗せて魔力を流す。出た鑑定結果は予想と少しだけ違った。
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<レティー>
種族:マルチスライム
年齢:3
性別:???
スキル:解体・魔導
特殊:知識吸収・記憶吸収
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「あれ? 【魔導】なんていうスキルが増えてますね? ……魔法が使いやすくなるスキル、の可能性が高そうです。あまり自分で魔法を使ったりしないので、ちょっとあやふやですが」
『わぁ、もしかしたら僕も何か増えてるかも。ちょっと楽しみ』
そう言ってセリオは右前足を<鑑定の石板>に乗せて魔力を流す。その結果は、やはり微妙に違ったものだった。
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<セリオ>
種族:ドラゴンライノ
年齢:9
性別:男
スキル:竜鱗・吶喊
特殊:伸縮自在
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『おおー。この前突撃して軍を蹂躙したからかな? 【吶喊】なんていうスキルが増えてる!』
「……軍に突撃して蹂躙したんだ。まあ、あんた達なら出来るんでしょうけどね。後、地味にスライムの【記憶吸収】っていうのが怖いんだけど? それ、多分だけど他人の知識とか吸収するヤツよね?」
「そうですよ。私は他者の脳を食う事で、その者の持つ記憶を手に入れる事が出来ます。大抵は無駄なので捨てますけど、有用なものは主に報告ですね。で、主がその情報を元にしてゴミどもを殲滅します」
「ようするに組織の奴を殺す、レティーが記憶を吸収して情報を報告、その情報を元に私が仲間のヤツを殺す、またレティーが脳を食う。これを組織が壊滅するまでやる。それが基本的な潰し方だね」
「「「………」」」
脳から情報を引きずり出すなんて事が可能だとは思わなかったのだろう。レティーに対しては情報の秘匿がほぼ不可能なのだからしょうがない。唯一の秘匿方法は、早めに自殺して脳を潰してしまう事だ。これが出来れば情報は秘匿できる。
「それをやれっていうのは、あまりに酷じゃないかしら? 知った段階で殺されて脳を潰されないと秘匿できないなんて、メチャクチャに過ぎる」
「そんな事を言われてもねえ。こっちからすれば、最初から悪い事をしなきゃいいんだよ。政治的な事で仕方ないなら分からなくもないよ、でも悪行をしてる組織とかって単なる犯罪者集団じゃん」
「まあ、それは確かにそうですね。そういう組織じゃないとされないようですし、私達には降りかかる事もないのですから忘れましょう。それが一番良いです」
どうやら触れないのが一番だと悟ったようである。怪物を止める事など誰も出来ないのだから、悪い事はせずにスルーするのが一番良い方法であろう。




