0657・新種族と特殊なスキル
ミクが槍を作り、ロフェルは<根源魔法>の練習をしていた。他にも【身体強化】の練習もしており、予想以上に上手く行っている。何故なのだろうかと考え、試しに<鑑定の石板>を使うと、その内容に驚くミクとロフェル。
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<ロフェル>
種族:竜霊族
年齢:0
性別:女
スキル:武魔一体・天覚・竜鱗
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「……ナニコレ? 鑑定という調べられる道具だというのは聞いた。でも、私の年齢ゼロ歳になってるんだけど? どう考えてもおかしくない?」
「再誕したのだから、ある意味で今日が誕生日だろう。再誕という事は再び〝生まれる〟という事だ。ならば今日が生まれた日でも何ら不思議ではない。というか、だからこそ蘇生したという形にはならんのだ。つまりゴブリン族のロフェルは死に、新たに竜霊族のロフェルとして生まれた訳だな。なお、竜霊族というのは私も聞いた事が無いが……」
「それってもしかして私しか存在しないって事? ……何か色々あり過ぎて疲れてくるわね。とりあえず、魔法とか体が動かしやすいのは【武魔一体】というスキルかしら? それとも【天覚】の方?」
「おそらくは感覚的なものの強化だから【天覚】の方だろう。【武魔一体】はあれだな、武力と魔力を同時並行で使いやすくするスキルじゃないか? ……そういえば【詠唱短縮】が無いのに短縮されていた、という事は【武魔一体】の方に【詠唱短縮】も組み込まれているのか」
「何なのその反則。幾らなんでもメチャクチャになり過ぎてるでしょ! 後、【竜鱗】ってなに? 私には竜の鱗なんて生えてないんだけど!?」
「それはセリオも持っているスキルだ。使用すると魔力で竜の鱗っぽいものを肌の上に作れて防御力が格段に上がる。なかなかに優秀だぞ?」
「………あっ、出来た。っていうかコレ、硬! ビックリするぐらい硬いんだけど!? これゴブルー鉄の鎧とかが比較にならないほど硬い! ……って事はなに? 私防具ってもう要らない?」
「咄嗟の時に使えなければ無意味だからな? そういう意味では防具はちゃんと要るぞ? まあ、今着ているジャケットで十分な防御力はあると思うがな。駄目ならソフトレザーの鎧を作ってやる。ドラゴンレザーなのだからソフトレザーで十分だろう」
「十分過ぎるわよ! っていうかどれだけお金出しても買えないでしょ、そんな国宝みたいなの!」
「アイテムバッグの中に山ほど入っているが? 大安売りで売り出せるほど有るぞ?」
「………色々な意味で疲れる。私ちょっと武器の振り方とか練習するわ」
「そうしろ。分体1は夜のワルドー伯爵領、分体2は夜のゴヴェスティ公爵領に居るからな」
「男と女の分体よね? なんでそんな所に居るの? もう終わった筈でしょ」
「それぞれの領都に居るゴミどもは喰っていなかったのでな、そいつらを食い荒らしている。主にスラムの連中だが、当然暗殺組織なども含めてのゴミ処理だ。とりあえず十分に喰って、ロフェルがある程度戦えるようになったら外に出す」
「了解」
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あれから一週間。東西南北の領地の悪人、その大半を食い荒らしたミクは、ようやく自身がこの星で最初に降り立った森へと戻った。どうやらここから領都アルダに行くらしいが、その隣にはロフェルが立っている。
「やっと正式に戻ってくる事が出来たけど、トイレの時だけは戻って来てたからねぇ……。何とも言い難い」
「仕方ないでしょ。本体空間で排泄されても困るしさ。本体だって、いちいちそんなの処理したくないし」
「私だって誰かに処理させるなんてゴメンよ。……それはともかくとして、裏組織とかをブッ潰して得たお金はどうするの? 思ってる以上に莫大だったじゃない? 更にミクが持ってるお金を聞いて呆れたわよ。一狩人が持つ金額じゃないし」
「小銅貨822枚、中銅貨418枚、大銅貨1011枚、小銀貨611枚、中銀貨311枚、大銀貨519枚、小金貨24枚、大金貨7枚。これが新たに手に入れた金額だからねー」
「裏組織って驚くほど大量にお金持ってるわよねえ。そりゃミクが潰すついでに取ってくる筈よ。そもそも神様の命なうえに潰せばお金が入るんだしね。そりゃ楽に稼げるわ」
「まあ、それはそうなんだけど、ここまで大量にあると社会に還元しなきゃならないんだよねー。………そうだ! ストレーナに渡そう。好きに使えば良いとか言ったら、お菓子の開発にでも使うでしょ」
「もしかしてワルドー伯爵の娘? ミクが行った第2の星とかいう所の記憶を持った子。そんな子が居る事自体ビックリだけど、色々な知識を持ってるのよねえ。それを使ってくれてれば伯爵領はもっとマシになってたかな?」
「それは無いでしょ。ワルドー伯爵が独占して終わりにしかなってないと思う。そういうヤツだからこそ、領地の民が苦しんでた訳だし」
「だよねー」
2人は暢気に【身体強化】を使って走っているが、他の者達からすれば恐ろしい速さだ。しかし2人は気にしておらず、そのままアルダの門前まで走った。
当然のように門番は警戒するが、町の結構手前から歩きに変えた2人は門番の前まで行き登録証を見せる。それを確認した門番は許可を出すが、町中に入った後まで警戒して後姿を見続けるのであった。
2人はそんな門番を無視し、真っ直ぐに宿へと行った後で部屋をとる。2人部屋は小銀貨1枚と大銅貨2枚だったので支払い、部屋を確保したら子爵邸へ。
「それにしても、大きな種族向けの宿って高いわねえ」
「仕方ないでしょ。他の国に行ったら大きな宿が適正価格に変わるよ。ここはゴブリンの王国だからね、わざわざ大きな種族用の宿を作るしかない。だから割高になる」
「それは分かるんだけど、実際に払う側になると……何か納得いかない」
「まあ、仕方ないよ。そこは諦めるしかない」
そうやって話しつつ子爵邸の門前まで来たら、門番がミクを見て真っ青な顔をして震えていた。それを見たロフェルは「ミクに脅された事でもあるのかな?」と思ったが、声には出さないでおく。
「ストレーナにミクが来たって伝えてくれる? 色々と話さなきゃいけない事があるからさ」
「た、ただいま行って参りますっ! しょ、少々お待ち下さい!!」
猛ダッシュで子爵邸へと行き、中に声を掛けている。それを見たロフェルは間違いなく何かやらかしたなと思いジト目で見るも、ミクは横を向いて口笛を吹く。呆れて溜息を吐いた後、スルーする事に決めたロフェルはそれ以上何もしなかった。
戻ってきた門番はメイドを連れていたので案内をするままついて行き、そのままストレーナの居る部屋まで移動。メイドが扉をノックすると、何故かエリザヴェートが入室の許可を出す。
ミクとロフェルが首を傾げるものの、メイドは扉を開けて入室していく。ミクとロフェルも続くが、丁度ストレーナは何かを食べているところだったようだ。
「………ゴクン。お久しぶりですが、急に我が家に来られるとは何かありましたか?」
「特に大きな事はないね。強いて言えばロフェルが再誕したくらいかな?」
「「は?」」
「お久しぶりね、ストレーナ。私もまさか死んだ後、こうやって復活するとは思わなかったわよ。第3王子の剣で貫かれた時、もう死んだと思ったからね」
「………ま、まさか、ロフェル?」
「だからそう言ってるじゃん。再誕したってさ。一度死んで新たに生まれ変わったから、今こうなんだよ」
「ロフェル! 本当にロフェルなの!? 良かった!!」
ストレーナが号泣しながら「良かった」と言っているが、ミクもロフェルも泣き過ぎだろうと、2人揃ってちょっと引いていた。ついでにエリザヴェートも。




