0655・本体空間での話し合い
Side:ロフェル
体が動かないっていうか、何かに磔にされているような気がするんだけど、自分の体を見てみれば何かに埋まってる? そしてミクの声がするけれど、何処に居るのかサッパリ分からない。いったいどういう事なんだろう?。
「少しは落ち着いたか? ロフェル。お前は自分の身に起きた出来事を覚えているか?」
「自分の身に起きた事? 今現在、訳の分からない状況で、どうしていいかサッパリなんだけど?」
「うむ。全く覚えていないようだな。仕方ない、思い出したくもないだろうが教えてやる。お前はゴブルン王国の王城で、第3王子に剣で刺し殺されたのだ」
「剣で、刺し殺された………」
「そうだ。王都にアルダギオン子爵親子と行った後、王城に呼ばれたのは覚えているか? 私は謁見の間に行く事になったが、お前は王城の中をストレーナと一緒に見学しに行った筈だ」
「………そういえば中央庭園って所に行って、その後……」
そうだ。ストレーナに妾になれって言う第3王子が現れて、それで私がストレーナを庇おうとしたら、第3王子が……!。
「思い出したわ。第3王子が叔父上とワルドーとか言いながら剣で私の胸を……!」
「落ち着け、既に第3王子は【瘴気の苗床】にした。今も地獄の苦しみを味わい続けているだろう。それは後で話すとして、まずは私の事を教えねばならん」
「私の事って、つまりミクの事?」
「そうだ。今からお前の体を少し動かす。その目で確認すれば私の事もある程度分かろう。それから詳細を話すとしようか」
ミクがそう言うと、私の体が急に動いて……動いて……って!。
「何じゃこりゃあ!? ちょっと待って、何か気色悪い肉が蠢いてるんだけど!? 何あれ、なんなの!?」
「それが私だ。私は神に創られし肉の塊なのだよ。その理由は、下界に生きるゴミどもを食い荒らせというものだ。いい加減、神どもも我慢の限界なのだよ。ワルドー伯爵や第3王子を考えれば分かろう?」
「え、ええ、まあ……。つまりミクは元々肉の塊で、あの体は偽物?」
「偽物というか分体と言ってな、所謂この触手の先だと思えばいい」
そう言ってミクは触手の先を〝あの姿〟にした。つまり元々のミクは肉の塊で、あの体は末端だったらしい。そしてありとあらゆる物を喰らう肉の塊こそが本来の姿なのだそうだ。
「ゴミを喰らうって言ってたけど、何故ワルドー伯爵とかは食べなかったの? おかしくない?」
「私はゴミを喰うのであって、地上に混乱を齎す事をする訳ではない。ロフェルだってそうだろう? 悪を懲らしめても、その後に大混乱をしては意味があるまい。それに、悪党を喰うのはいつでも出来るからな」
「まあ、確かに混乱して罪の無い人達が割を食うのは駄目だと思うけど……。そうか、伯爵がいきなり居なくなったら色々と困るって事ね」
「そういう事だ。そのうえ息子も同じく駄目で、私が【善なる呪い】を刻んだくらいだからな。ああ、一応で言っておくのだが、私は【呪魔法】を使う事は出来んぞ? あれは既に失伝しているからな」
「えっ!? じゃあ、いったい何をしているのよ!」
「私が使っているのは呪いを司る神の権能、その一部だな。私にとってはロフェルの暮らしていた星は3つめなのだよ。そして呪いの神は1つめの星で喰らった。私を作り出した神は、星の神を喰らって良いと言っていたからな。だから喰らったのだ」
「いや、神様が神様を喰っていいってどういう事よ?」
「そのままの意味だ。神には位というものがあってな、一番下は星の神なのだ。そして銀河の神、宇宙の神と続き、頂点は私を創った根源の神となる。そして頂点たる根源の神こそが、ゴミどもに愛想を尽かし見捨てたのだよ」
「………見捨てられたんだ」
「そうだ。ただし真面目に生きている者や、誠実に生きている者を喰っていいとは言われていない。あくまでも喰っていいのはゴミどもだけだ」
「ああ、そういう事かー。一番上の神様が、ゴミみたいな奴等は喰っていいと。で、下の神様もゴミの中に含まれるってわけね」
「そういう事だ。しかし喰わずに【瘴気の苗床】にした訳だがな。今回ロフェルが殺されてから、多くの悪人は【瘴気の苗床】だ。あれは限定的な不死を与える代わりに、瘴気を吸い込み続け、それを浄化する為に肉体と精神が切り刻まれ続ける。そういう呪いとなる」
「うぇっ!? そんなとんでもない呪いを使ったの!?」
「当然だ。奴等は腐りきっていたからな。腹も減らず、病気もせず、切り刻まれようが首を刎ねられようがくっ付く。その状態で延々と痛みと苦しみを味わい続けるのだ。何故なら瘴気達は浄化を望むのだからな」
「瘴気は浄化を望む?」
「うむ。瘴気とて唯アンデッドにする物という訳ではない。あれらは負の感情やその他が寄り集まって出来たモノなのだ。そして己らが安らかになれぬ事に怨みや憎しみを持つ。しかし【瘴気の苗床】を刻まれたものは、己の体を犠牲にして浄化する」
「うわぁ……」
「しかし瘴気にとっては自分達が浄化される救いの手のようなものだ。だからこそ瘴気が死なせぬのだよ。死んでしまえば自分達が浄化されなくなる。だから瘴気が無理矢理生かすのだ、自分達の為に」
「それは……」
「心配するな。あの星から瘴気が無くなれば、【瘴気の苗床】を刻まれた者も解放される。瘴気が無くなればな!」
「………」
瘴気が無くなるって、そんな事あるの? だって生きている者達の負の感情っていうので出来てるんでしょ。虐げられる者達が居なくならない限り、永遠に瘴気ってなくならないよね? そしてそんな事は絶対にあり得ないような……。
「あり得ないと思っているだろうが、分からんぞ? 万に一つくらいはあり得るかもしれん」
「それって、ほぼ無いって事よね? ……結局さ、第3王子って何がしたかったの? 何故か私が殺されたし」
「第3王子は嫡子だったらしいな。しかし庶子の第1王子や第2王子の方が優秀で焦っていた。そこにゴヴェスティ公爵とワルドー伯爵が頼んだというか口を出したという訳だ。ワルドーは自分が負けた腹いせにロフェルの殺害を、ゴヴェスティ公爵は最終的にアルダギオン領の鉄鉱山を手に入れる為だな」
「……それで私が?」
「そう、元々狙いはロフェルだったという事だ。ちなみに東西南北とゴヴェスティ公爵の軍は私が滅ぼした。その上で各当主は全員【瘴気の苗床】、それよりもマシな悪人は【善なる呪い】を刻んだ。喰うよりも生き地獄を味合わせてやろうと思ってな」
「あ、うん。成る程……」
「それにしても驚いたぞ。ゴヴェスティ公爵家は次男以外、全員クズだったのだからな。御蔭でその次男以外は全員【瘴気の苗床】だ」
「ゲッ……どんだけ腐ってるのよ、公爵家!」
「私もそう思う。そもそも第1の星で善と悪の神も喰っている私は、その権能で善意と悪意が分かるのだ。だからこそ隠していようが私には筒抜けなのだよ。そのうえで【瘴気の苗床】にするしかないと思うほど腐っているのは相当なものだぞ?」
「ああ……って、ちょっと待って。食べた神様の力を奪えるの?」
「最強の怪物として創られた私でも完全には無理だ。だから喰らった神の権能の一部ぐらいしか使えん。神の力、つまり神力とはそれほど扱うのが難しいのだ」
「いや、神様の力を使えるってだけで十分に凄いから。それだけで有象無象とは違いすぎるでしょうよ」
「まあ、そうかもしれんな」
そうかもって軽く言いすぎじゃない? だって神様を喰えば神様の力の一部が使えるって、圧倒的に凄い事でしょうに。




