0652・食い荒らされる軍
ミクは令嬢の部屋を出ると真っ直ぐに聞いていた部屋へと行き、扉の下の隙間から中へと侵入する。中にはワルドー伯爵と妻が眠っていたので、まずはワルドー伯爵に麻痺毒を注入して麻痺させた。
夫婦で1つのベッドに寝ていたとはいえ、ベッド自体が大きいので離れている。よって妻の方にバレる心配は無い。ミクは麻痺しているワルドー伯爵の目をくり貫き、耳を引き千切り、触手を刃にして鼻を削ぐ。
その後は肉で包んで本体空間に転送し、そこで四肢を切り落として傷口を燃やす。最後に【瘴気の苗床】を刻めば完成だ。その間に分体は妻の方に【善なる呪い】を刻み、悪徳なる行動を一切出来ないようにした。
寝ているままなので起きる事も無く、本体空間から【瘴気の苗床】になったワルドー伯爵を取り出す。麻痺しているので呻きも出来ないが、激痛に苛まれ続けているのは傍目にもよく分かる。
妻の方を起こされて騒がれても面倒なので床に転がし、部屋の中を物色。【空間魔法】の【掌握】を使い、空間そのものを完全に把握する。すると隠し金庫のような物を発見。その中にバッグがあった。
ミクは空間を把握しつつ、隠し金庫のある壁をスライドさせて金庫を露出。金庫には鍵が掛かっていたが、触手を使ってあっさり開ける。中にあったのはバッグの他に奴隷契約書なども含まれていた為、全て回収して扉を閉めた。
後は壁を元に戻して外へと出ると、他の部屋にも移動して貨幣を回収。全て終わったら適当な部屋の暖炉に書類を放り込んで燃やし、その後は令嬢の部屋へと戻る。多少は時間が掛かったが、そこまで苦労もしていない。
令嬢の部屋に入ったミクは女性体になり、準備が出来ていてベッドに座っていた令嬢に声を掛ける。
「隠し金庫の中にアイテムバッグが入っててさ、それとお金が要るだろうと思って回収するのに時間が掛かったよ。ワルドーは【瘴気の苗床】に、その妻は【善なる呪い】を刻んでおいた。これで悪さは不可能だ」
「【善なる呪い】?」
「【善なる呪い】とは善行しか出来なくなる呪いの事だよ。悪い事をしようとした途端、激痛にのた打ち回る事になる。既にここの嫡男にも刻んである呪いだね。お前は前世の記憶があるからか、こんな家に生まれても善だけど、この家の者は腐ってるから」
「ああ、うん。それはよく分かる。どうしてあそこまで悪い事が出来るのか私にはサッパリだったし、その報いを受けたなら自業自得でしょ。後、お前じゃなくて、私の名前はエリザヴェートね」
「似合わないねぇ。漫画とアニメとラノベとゲームの国である日本人なのに、エリザヴェートとは……。ギャグで言ってるの?」
「言わないでよ、そういう風に名付けられたんだからさー。私だって受け入れるのに随分時間が掛かったわよ。あまりにも耳慣れないっていうか聞き慣れないから、自分の名前だって把握するの大変だったのよ? ついでに生まれたらゴブリンだし」
「ごめん、ごめん。まあ、とりあえずだけど、これからは家名は名乗らない方が良いよ。そこからバレて殺されるなんて事も冗談じゃなくあるから。出来得る限り気をつけた方がいい」
「それは分かってるわ。むしろワルドーなんて名前が既に悪い事してますって感じじゃない。最初に知った時、どうか悪い事をしていませんようにって願ったわよ。あっさり裏切られたけどね! 悪い事をしてる家でワルドーって、いったい何のギャグよ」
「言いたい事は分からなくもないけど、とにかくズラかるよ。これから他の貴族家も潰しに行かなきゃならないからね」
「どういう事?」
「それは本体空間で聞かせてあげるよ。それより全て入れ終わった? ……よし、それじゃ送る」
ミクはアイテムバッグに全て詰め終わったエリザヴェートを肉塊で包み転送。その後は窓から屋敷を脱出して、鳥になって飛ぶ。分体2の事は逐一報告が上がっているので、分担してゴミ処理を始めた。
ちなみにエリザヴェートは本体を見て気絶。現在は気を失ったままなので、そのまま放っておかれている。
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Side:分体2
あの森からこっちに飛んでくれば丁度南の方面で………居たな。生命反応はざっと500という所か。アルダギオン子爵が王都に着いたという知らせを受けてから兵を集めたのか、そのタイミングでゴヴェスティ公爵から指示があったのか。
そこまでは知らんが、お前達は喰われる運命にある。恨むなら愚かな主を恨め。では開始するか。
まずは軍の真ん中に下りて……っと。そして巨大ミミズに転じて全てを喰う。
「な、なんだ!? なにかに引き寄せられる!?」
「「「うわぁー!!」」」 「「「ギャァァァァ!!!」」」
フィグレイオ獣王国のダンジョンボスだったミミズだが、あれは吸い込んだり吐き出したり出来るからな。軍を蹂躙するには都合の良い形態だ。更には触手も使って早めに殺していこう。どうせ俺の感知から逃れる事は出来んからな。
死体の下に隠れてやり過ごす等という事も出来んのだ、何故なら全てを喰らうのだから死体など残さん。装備品などは後で適当に処理するだろう。それこそ適当に売るか軍に買い取らせればいい。もしくは狩人ギルドに放り投げるかだな。適当に置いてくればバレんだろう。
よし、喰い終わった。貴族の所へ行って殺すより、先に軍を壊滅させた方がアルダギオン領の者も安全だな。分体1は早速ワルドーを苗床にしに行ったが、あれは仕方ない。行かないなら俺が行っただろう。
とりあえず次は西方面だな。そこの軍を食い荒らしたら今度は北だ。ゴミどもに容赦などする必要は無い。須らく喰らう、それが俺達という存在なのだ。
…
……
………
ふぅ。これで喰い終わったか。何というか風情の無い喰い方ではあったが、処理せねばならんので仕方ない。分体1は南の貴族であるセドルス子爵を苗床にし終わったようだ。現在西に飛んでいるみたいだな。
ならば俺はこのまま北のエトヴィ子爵の所と、その北のゴヴェスティ公爵の所へ行くか。まずは鳥になって、と。
早く行かないと分体1がゴヴェスティ公爵の所に行きかねんしな。さっさと終わらせねばならん。流石にワルドーもゴヴェスティも取られるのは癪に触る。
あ、そうだ、このままゴヴェスティのところまで飛んで行くか。そっちから先に終わらせればいい。
分体1がワルドーを苗床にしてスッキリしたが、だからと言ってゴヴェスティまで分体1にやらせる必要は無い。俺も分体1も本体は同じなんだし怒りも同じだ。ならば俺の方でも苗床にしないと納得できないしな。
まあ、何より一番怒りが強いのは本体なんだよ。あの本体空間から出て、本体そのもので始末したいらしいからなぁ。とはいえ、そんな事になったら阿鼻叫喚の地獄絵図の完成であり、星そのものが崩壊しかねん。
流石にそれをすると神に怒られるうえ、未だに本体空間を脱出する方法が分からない。あそこは根源の神々が作っただけあって、理解不能な空間だからな。本体も色々と実験してみたいようだが、絶対に監視されているので無理だし諦めるしかない。
おっと、随分な数が居る町だな。おそらくあそこがゴヴェスティ公爵の領都だろう。悪人を喰ってレティーに脳を食わせれば分かるだろうし、さっさと喰って調べよう。
スラムへと適当に降り立ち、そこに居た浮浪者を喰う。一瞬の出来事なので誰にも見えていないし、見えない。そんな一瞬の早業の後、レティーから報告が来た。どうやらここがゴヴェスティ公爵の領都で間違いないようだ。
その情報を聞いた俺は即座に一番大きな屋敷へと飛ぶ。待ってろよ、すぐに苗床にしてやるからな!。




