0647・スラム壊滅
今日はもう休む事にした2人は、宿の部屋に戻ってゆっくりと休憩をする。午前中は狩りをしたから十分で、午後から何かをする気にはならなかった。なので適当に話をしたりセリオと遊びながら暇を潰し、そのまま夕方までダラダラ過ごす。
さて、そろそろ夕食に向かおうかと思ったところ、ストレーナが騎士と共に訪ねて来たので中に入れる。いったいどうしたのだろうか?。
「いきなり申し訳ありません。実はお父様が陛下に御報告したのですが、その際に【呪魔法】の話になり、陛下がその使い手との面通しを依頼されまして……」
「つまり王城に来いって事? 私は関わりたくないんだけどねえ。何でいちいち絡んでくるかな? ……まあストレーナに言っても仕方がないんだけどさ。それで?」
「明日、朝にお迎えに上がりますので、王城まで我が家の馬車で参ります」
「そう。分かった。面倒だけど、この1回だけならいいか。それが終わったらさっさと王都を出よう。居たところで仕方ないし」
「私も行っていいかしら? 一緒に居た方が安全だし、王城の中って一生に一度でも入れたらラッキーだし」
「なら私の護衛という形で入る事に致しましょう。それならば文句も言われない筈ですので」
「やった! 一生に一度の記念。本当にありがとう!」
やたらにテンションが高いが、そんなに喜ぶ事だろうか? ミクはそんな風にしか思わないが、この国の国民なら喜ぶのだろう。きっと。
用件を伝え終わったストレーナは帰り、2人は酒場に行って食事を行う。大銅貨4枚を支払って注文したミクは、相変わらず酒を注文しているロフェルに呆れつつも好きにさせる。どうせ撃沈するのだろうが、ミクが連れ帰れば済む話だ。
夕食後、予想通りに酔い潰れたロフェルを担ぎ、さっさと宿の部屋に戻ってベッドに寝かせる。飲んでいる際にもテンションが高かったので、余程に登城できるのが嬉しいようだ。
ミクは狐の毛皮を敷くとセリオとレティーを寝かせ、自身も横になると分体2を出して窓から外に行かせた。
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Side:分体2
さて、今日はスラムの掃除の後半戦だ。今日中に終わるだろうが、分体1が俺を早めに出したのは確認の為となる。スラムの住民が減っている事を知れば、逸早く逃走しても不思議じゃない。
だからこそ調べさせる為に早く俺を行かせたんだが、どうやら阿呆どもはまるで理解していないようだ。生命力が多く固まっている所は昨日から変わっていない。という事は、何がしかの組織の拠点なんだろう。
スラムが大きい分だけ組織が入り乱れていて、裏で激しい抗争でもしているのが普通だ。俺達のような喰う側からすればどうでもいい話だがね。まずは外にいる奴等から喰って行くか。まだ完全に暗い訳じゃないが、個人で居るだけの奴なら大丈夫だろ。
…
……
………
外の奴等の大半は終わったから、次は組織の連中だな。さっさと食い荒らして金を頂いたら次へと行こう。今日中に確実に終わらせる為にも、それなりに急がなくちゃいけないしな。
組織がアジトにしているであろう建物に侵入し、片っ端から毒で殺しつつ喰らう。どんどんと数が減っているが、それでも1部屋1部屋に分かれていて無駄に時間が掛かる。仕方ないとはいえ、全て丁寧に殺していく。
こういう時に手を抜くと、見つかっておかしな事になる。なのでキッチリと確実に始末していき、ボスの部屋で愛人ごと殺して喰らう。貨幣も強奪しながら進んで来たのでボスの部屋からも貰い、これでこの組織は終わりだ。
次の組織のアジトへと移動し、また同じ事をしていく。俺はひたすらに毒を与えては喰らい、貨幣を強奪しては喰らう。それ以外の金品は残っているので、上手く売れればお金に換えられるだろう。
ただしそんな伝手があるかは知らないし、持っている金品が盗品である可能性は高いがね。売ろうとした瞬間に捕まる恐れすらある。スラムの組織が持っている物など大抵はそんなものだし、だからこそ俺は一切手をつけないんだ。
…
……
………
よし、これで終わりだ。やれやれ、何だかんだと言って時間が掛かったな、まったく。とはいえ綺麗になったから、これで悪さをする組織も無い。スラムの住民の99%は居なくなったので、組織どころの話ではないがな。
さて、後は本体に任せて帰るか。
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こちらは本体。今日強奪した貨幣を数えていたが、それもそろそろ終わる。
小銅貨が53枚、大銅貨が188枚、小銀貨が41枚、中銀貨が3枚、大銀貨が216枚、小金貨が69枚、大金貨が8枚。これで全てだったが、思っていた以上に価値の高い貨幣が多かった。流石は王都のスラムであろう。
朝になったので分体を起こし、アイテムバッグに金銭を収納させてから【浄滅】を使う。部屋と体を綺麗にしたら2匹を起こし、水を飲ませたりなどした後でロフェルを起こす。
その後は適当に話しながら片付けたりし、終わったら食堂へと移動する。小銅貨15枚を渡して朝食を注文して席に座り、鼻歌が出ているロフェルに注意する。
「あんまり浮かれてると変な失敗するから気をつけなよ。田舎者みたいに思われる可能性が高いよ」
「……そうね、流石に田舎者と思われるのは良くないわ。ストレーナの話を聞いていると他人事だったけど、今日は自分が行くんだし他人事じゃないのよね。しっかりしないと」
「そうそう。気をつけないとロフェルだけ恥ずかしい思いをするかもしれないし、それはそれでロフェルだけ恥ずかしい思いをするだけだから、それで良いのかもしれないけどね」
「ちょっと、流石に私だけってのは酷くない? とはいえ浮かれてる私が悪いんだしね、少しは落ちつかないと……」
高が王城に行くのに、そこまで興奮する事か? ミクはどうしてもそう思ってしまうが、この国の国民にとっては凄い事なのだろう。いちいち関わっても仕方ないので、テンションの高いロフェルは放っておく事に。
朝食後。宿の部屋に戻って待っていると、宿の従業員が子爵令嬢が来た事を報せに来た。ミク達が外に出ると馬車が横付けされていたので、ミク達もその中へ入り出発する。どうも客と護衛の立場なので入っていなければいけないらしい。
そのままガラゴロと揺られる事少し、王城へと着いたらしく馬車が止まる。
ミク達はすぐに外へと出ると、最後に子爵が出てきて案内の者がやってきた。子爵が一番前で歩き、その後ろにストレーナ。そしてミクとロフェルになる。そうやって進んでいき、控えの間という所に案内された。
「実は陛下に呼ばれているのは私とミクだけだ。なのでストレーナは護衛のロフェルと共に、メイドに王城を案内してもらうといいだろう。ここには客に見せる用の場所も多い」
「分かりました。私も数回しか見た事がありませんので楽しみです」
どうやらロフェルの事を言えないほどに、ストレーナも楽しみにしていたらしい。一気に上機嫌になったストレーナに呆れていると、子爵とミクが呼ばれたので謁見の間へ。
特にマナーなど知らないミクは、気にする事も無く堂々としていた。一種の風格どころかオーラまで漂っているが、本人は普通にしているだけである。
王城はこれ見よがしな贅沢をする事で城に来た者を圧迫するものだが、ミクには何も通用しない。所詮はゴテゴテと飾りつけた程度の物でしかないからだ。本質はどうなのかを考えれば分かろうというものである。




