0061・森の中の盗賊
再び馬車に揺られながらミク達は進んでいく。ハッキリ言って遅く、ダラダラと進んで行くだけだ。途中の休憩中に魔物を倒してきてはレティーに血を吸わせているミク。前に狩った魔物の肉は既に本体が食べた後である。
「体を動かすのは悪い事じゃないし、馬車に乗ってても尻が痛いだけだしねえ。私も体を動かすかな? 流石に体が硬くなっちまうよ。盗賊が居たところでブッ殺せばいいだけだしね」
「それはそうですけれども、そんな事をしていては、いつまで経っても王都には帰れませんが……」
「とはいえ、やってやれなくはないだろう? ミクだって居るし、むしろ楽になってる筈さ。私も戦闘狂って訳じゃないけどね、それでも盗賊どもは潰しておかないと駄目だ。大きくなっても困るし、呼応されると面倒になる」
「本来なら、その領地の貴族が何とかするべき事ですが……」
「越権行為だって言いたいのかい? そもそも領地の貴族がしっかりしてりゃあ、いいだけさ。横から出てきてって言ってきたら、お前が放ってるからあたし達が襲われたとでも言ってやればいいんだよ。どのみち該当の貴族の落ち度なんだ」
「まあ、元来は盗賊退治と言いますか、治安の維持も貴族の仕事ですからな。盗賊団が出来ているのに何もしていないでは、怠慢の謗りは免れませぬ」
「そういう事さ。そもそもしっかりしてりゃあ何の問題も無いっていうのに、問題を放置してるヤツが悪いんだよ。こっちは尻拭いをしてやってるだけ。……で、そういう事なんだけど良いかい?」
「私は問題ない。馬車の中にずーっといるのも暇だから、適度に動けるなら助かるよ。暇なのは流石にね」
「そうなんだよねえ。行きはゴールダームの事情があったから真っ直ぐ進んだけど、帰りは気にしなくてもいい。何より子爵に手紙を持たせたからね。あれが王に事の次第を報告してるだろう。なら、私はゆっくり帰っても問題ないよ」
そんな話を休憩中にしたのだが、早速のように盗賊の話を村で聞き込んでいくヴェス。
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この星の馬車は一日で大体30~40キロほど進む。遅いと思うか速いと思うかは別にして、馬車は頻繁に休憩をしたり水を飲ませたりしなければいけない。
牽いているのが生きている馬なので当然だが、他の魔物系でも休憩と水に食事は必要だ。だからこそ庶民は徒歩で移動し、乗り物などには乗らない。それでもアイテムバッグがある分、ヴェス達は少ない荷物で移動をしている。
乗合馬車というのもあるそうだが、そこまで主要な道を繋いでなどいない。王都とその近辺、領都とその近辺にはあるが、どこの国もそれぐらいである。もちろんゴールダームは除く。
だいたい何度かの休憩後に村や町があるという配置にしてあり、国としても商人などの移動経路という考えで村や町を作る認可を与えている。なのでその主要な道から外れる場所は、全て里や集落と名乗らなければならない。
これは何処の国でも共通している事で、少なくとも主要な道に沿っていると、住んでいる人数に関係なく村となる。なので村と聞けば主要な道から外れていない事を示している訳だ。
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「この村から次の町までの間に盗賊のアジトがあるみたいだ。何でも商人の馬車が襲われて、慌てて馬車を走らせて逃げてきたっていうのが何度もあったらしい。傭兵なんかも襲われたと言っていたそうだよ」
「その割にはゴールダームへの移動では襲われたりしませんでしたね? 何か理由があったのか、それとも閣下の馬車だと知っていたか……」
「そっちの線の方が濃厚ではないか? 盗賊どもだ、閣下の御家であるカロンヴォルフ家の家紋は知っているだろう。絶対に手を出してはいけない家紋として」
「そうなると、ここから進んでも敵はこちらに手を出してこないという事になりませんか? それでは盗賊団を壊滅させる事は出来ませんが……」
「向こうから手を出させなくてもいいけど、盗賊のアジトは見つけたいねえ。さて、どうしたものか……」
「悩むぐらいなら出発したら? 私は気配を察知出来るから、近くに行けば盗賊が多い場所ぐらい分かるよ」
「そうかい? ならそれで行こう」
そう言って食事を終えた一行は、村から出発して再び馬車と馬に揺られる。周囲の護衛も馬に乗っているからか、なかなかの量の飼い葉や水などを買っていたが、本当に移動するだけでお金が掛かるものだと、ミクはビックリしていた。
ミク1人だけならピーバードの姿になって飛んでいくのだが、普通の者はこんな退屈な旅を続けるのかと、ミクはその事に戦慄している。怪物の弱点は暇なのかもしれない。
ダラダラと揺られながらも気配と生命力を調べていたミクは、とある地点にて複数の生命反応を感知した。しかも人間種のものである。ほぼ間違いなく盗賊団のものだろう。
ミクは舟を漕いでいるヴェスを起こして、盗賊であろう事を告げる。
「ヴェス。ヴェス! 右の方に20人以上の反応がある。全て人間種の反応だから、盗賊である可能性は高い。襲うの? それとも寝る?」
「いやいや、寝ないよ。暇だからウトウトしてただけさ。獲物が居るのに寝るバカは居ないねえ。………お前達! 右の、あの森の方角だ」
ヴェスの声を聞き、慌てて森の方角を見る護衛の騎士達。ここからでは何も見えないので半信半疑である。そんな騎士達を無視し、ミクは御者が止めた馬車の外に出る。ちなみに御者はアリストラだ。
「あっち。あの森の中をズーッと行った所に20人以上の反応がある。人間種の反応だから間違い無い。盗賊でなかったとしても、森の中に20人以上なんて怪しさ満点」
「それは、そうだろうが……。そもそも【気配察知】は気配だけが分かるもので、人間種か魔物かの判断など出来ぬだろう」
「私は気配の他に生命力も感知している。生命力というのは、魔物と人間種で全く違う。その為、それぞれで判別可能」
「おっそろしいねえ……というのは置いといてだ。アリストラ、すまないけど御者として残るんだ。それとお前も馬の護衛として残りな。後は盗賊どもの所へ行くよ」
「「「「ハッ!」」」」
ヴェスと男性騎士3人に女性騎士1人で行くようだ。ミクは元々メンバーに入っているので問題なし。馬車を道の端に止め、馬を集めて一塊にしたら、森の中へと進んで行く。
ヴェスはアリストラにアイテムバッグを渡していたので、休憩も兼ねるというところだろう。ミクが一番前になって進み、森の中へと分け入っていく。
当たり前だが、草や木々で怪物の邪魔など出来るはずも無く、ズンズンと分け入っていくミク。それと比べて悪戦苦闘している騎士達、そして呆れるヴェスという構図で進んで行く一行。
ある程度進むと声が聞こえてきたので立ち止まるミク達。その声は森の中だというのに隠そうともしない大きな声だった。
「魔物がいねえなあ。ここで殺してもすぐ食べられる訳じゃねえけど、このままじゃマズいぞ。頭ぁ何を考えてんだ? 商人なんて通ってるんだから、さっさと襲わねえと飢え死にしちまうぜ!」
「仕方ねえだろうが。あんまり商人襲いまくってると、そのうち領軍なんかが出張ってきて潰されっちまうぞ。程々にしとかねえと、飢え死にの前に殺されんのがオチだ」
「んな事はねえだろ。ここの領主は肝っ玉が小せえ根性無しだろ? 玉無しとも言われてるようなヤツじゃねえか。そんな奴が軍を上げてオレ達を討伐するもんかよ」
どうやらここの領主は舐められているらしい。




