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0639・王都手前の町まで




 騎士ゴブリンが呼びに来たので返事をし、そのまま部屋を出て食堂に行く。朝の状態では誰も分かっていないのかスラムの話題など無いし、そもそも食堂でする話題でもない。だからこそ一行は聞く事も無く出発した。


 再び暇な道程みちのりを進んで行き、村で昼休憩を行う。ここもそこまで裕福な村では無いみたいだが、それでも王都に行く為に立ち寄る村なのでまだマシである。僻地へきちにある村はもっとド田舎なのだそうだ。


 こういう村同士の見下しなりがあって、村同士の関係も面倒なものらしい。何処のどんな種族でも変わらないなと思いつつ、適当に聞き流して村を後にする。何故か話し掛けてきた村の女の子がり、その子とロフェルが話していたのだ。


 村を出発した一行は夕方前に3つ目の町に到着し、宿をとって少しゆっくりとする。流石に3日目となると結構な疲れが溜まっているらしく、騎士ゴブリンの足取りも重い。そろそろ1日は休む必要があると思うが、子爵はどう考えているのだろうか?。



 「確かに疲れを考えると1日休息をとった方が良いでしょうが、今は普通と違いますし休息無しで行くのではないでしょうか? 何といっても狙われていますので」


 「でもあれだけ疲れてたらまともには戦えないんじゃない? 流石に足手纏いのうえに遅いとなったらね。余計に時間が掛かるだけだよ」


 「おそらくですが、ワルドー伯爵令息と【豪腕】を乗せている馬車に騎士達を乗せる事になるでしょう。どうもセリオも余裕そうですし、それはお父様も分かっているでしょうから」


 「まあ、それしかないか。いちいち止まっていられないというのも分かるし、となると騎士達を休ませるしかない。かといって、そっちの箱馬車には乗せられないしね。というか幌馬車が空き過ぎだから、最初からそのつもりだったかな?」


 「多分そうだと思います。強行軍になるのは分かりきっていた事ですし、休みなく進んで行くには幌馬車の方に乗せるのが一番でしょう。……っと、ノックされましたね」



 騎士ゴブリンがノックしてきたので返事をし、食堂へと移動する。適当に食事をし、悪意が無いのを確認したら部屋へと戻る。全ての町で待っているとは思わないが、ワルドー伯爵も献金やら何やらでお金があまり無いのだろうか?。


 この日は襲われる事も無く終わり。次の日には騎士ゴブリンを幌馬車に詰め込んで出発した。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 あれから5日。2度ほど深夜に襲撃があったが叩き潰し、金品を強奪した。中にはロフェルが言っていた<死の眼>とかいう組織があったが、これの構成員も全て食い荒らして壊滅させている。


 小銅貨398枚、中銅貨310枚、大銅貨299枚、小銀貨271枚、中銀貨146枚、大銀貨101枚、小金貨7枚、大金貨1枚。これだけの収入があったので、当分は遊んで暮らせるだろう。もちろんそんな事には使わないが。


 やはり名の通った暗殺組織などは金を持っているな、そう改めてミクは思っている。何故なら大金貨をもっていたのは<死の眼>という組織だったのだ。ちなみに暗殺組織といっても、チンピラ組織に毛の生えた程度のものであった。


 確実にどんな手を使ってでも殺害するだけで、その手口は非常に荒っぽいものでしかなかったのだ。ミクとしては忍者とまでは行かなくとも、もっとスマートな暗殺を期待していただけに、完全に予想が外れた形である。



 (期待していたのとは違い過ぎたせいで、見る価値すら無いとは……。暗殺組織を名乗らないでほしいね。もっとスマートに音も無く殺すんでしょうが、普通は。ドタドタと無駄に音を鳴らす時点で、唯のチンピラだっての)



 そんな期待とは違った事による憤懣ふんまんやる方ない思いを胸に秘めつつ、ミク達は王都に向かって進んでいる。3つの組織を潰した事により、おそらくだがワルドー伯爵は怯えているか逃げ出したかもしれない。


 自分が雇った連中が全て壊滅しているのだ。流石にこちらの実力も理解しただろうし、失敗したのも報告されているだろう。まさか依頼だけして、その後は無視しているという事はあるまい。



 「どうかしたのですか? 何か考えているようですが……」


 「いや、次が王都だとしたら、何の襲撃も無いって変だと思ってね。幾らなんでもワルドー伯爵の立場として、このまま私達をすんなり王都に行かせるのはマズいでしょ? その割には何も無いし」


 「そうですね。ここまで特に何も無かったですし、流石に王都で何かあるとは思いづらいのですが……。とはいえ王都で待ち受けている可能性も無い訳ではないですし、そうなると困りましたね」


 「王都はゴールだし、そこで待ち受けている方が楽と言えば楽よね? となると王都で待ち構えるか、それともその手前の村?」


 「王都の四方には町しかありません。なので、王都の前の町で待ち構えているでしょう。私達がどちらの町を使うかまでは予想できていないと思いますが、しかし白昼堂々襲ってくるのでしょうか?」


 「それこそ道の上で襲ってくるかもしれないでしょ? どうせ王都まで乗ったままでは居られないんだし、騎士達もそろそろ幌馬車を降りないとね。格好がつかないよ?」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 体力の無くなっていた日から5日、一度たりとも騎士達は歩いていなかった。ずっと幌馬車に乗り気楽に進んでいたのだ。しかし流石にそろそろ降りて通常の騎士の務めを果たさなければいけない。


 普通ならば真っ先に文句を言う筈の子爵は、騎士の歩みに合わせなければ移動時間が短縮される。その事が分かったからか何も言っていない。とはいえ、そろそろ騎士として警護をしていないといけない場所である。


 王都が近くなり他の者の目も増えてきた。流石に見える所に護衛が居ないのはマズい。昼休憩の町に着いたら出るようにストレーナが言うと、慌てて準備を始める騎士達。どうも鎧すら脱いでいたらしい。


 ロフェルが幌馬車をジト目で見、セリオの背に乗っているストレーナは呆れていた。ミクからすればセリオの背に乗っているストレーナも同じである。貴族家の娘なら箱馬車に乗っていないと駄目だろう。


 そういう意味を篭めてジッと見ると、ストレーナは目を逸らした。流石に駄目だという自覚はあったらしい。ちょうど昼休憩を行う町が見えてきたので止まる箱馬車。


 その中からメイドが出てきて、そろそろ箱馬車に戻るようにとストレーナに説明。それと執事が騎士達に出てくるようにと話している。ストレーナはセリオの背から降り、箱馬車へと移っていった。


 騎士ゴブリン達も幌馬車から降り、箱馬車を囲むように配置に着く。そして町へと歩いて行き、手続きを行って中に入る。貴族が使う宿の駐車場を借りて馬車を置き、食堂に行って昼食を注文。食事にする。


 食事後、宿の駐車場に戻って馬車に乗ろうとする子爵をミクが止める。



 「どうしたのかね? 食事が終わって後は進むだけだろうに……」


 「……箱馬車と幌馬車の後ろの車軸が切られてる。ちょっと持ち上げるから交換してくれる? 新しい車軸はコレね」



 そう言ってミクが箱馬車を持ち上げると驚かれたが、車軸を外してみると確かに切られていた。しかしすぐには折れないようになっており、おそらく王都との間で折れて動けなくなると予想する。



 「ここの宿の者が買収されていたか……」


 「今は無視して車軸を換えたら先に進むべきだよ。他に異常は見られないしね」


 「何故ミク殿は分かったのですか?」


 「昼食の時間しかないから慌ただしくやったんだろうね。地面を見れば分かるけど、のこぎりを使った際の木屑が残ってる。ほら、その辺」


 「………確かに、これは木屑ですね。王都に近付いた途端にコレですか」



 皆は木屑を見ながら顔をしかめているが、その中にワルドー伯爵令息と【豪腕】が含まれていた。彼らもワルドー伯爵には思うところがあるのだろう。


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