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0637・次の町へ




 夕食が終わり宿の部屋に戻ってきたが、特にこちらに対して悪意を向けてくる者は居なかった。ミクは周りに意識を向けていたものの、一行に対しての悪意も無かったので、この町では狙ってくる者は居なさそうである。


 もちろん手を抜いたりなどしないのだが、それでも悪意の有無で分かるミクは気楽に構えていた。騎士ゴブリンなどは常に警戒しているが、ミクは敢えて何も言っていない。警戒度を下げられても困るからだ。


 狐の毛皮を敷いてセリオとレティーを寝かせ、ミクも寝転がって目を瞑る。今日は一行を見張らなければいけないので、瞑想も本を読む事も止めておく。もちろん片手間で監視などは出来るのだが、一応本腰を入れて護衛をしておくのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 次の日の朝。ミクはロフェルを起こして準備をさせ、部屋で待っているとドアがノックされた。返事をすると騎士ゴブリンで、どうやら朝食に行くので起きているか調べる為だったようだ。


 ミク達は部屋を出て騎士ゴブリンについていき、そのまま食堂へと移動する。もちろん子爵もストレーナも一緒にだ。食堂での朝食が終わると、宿に預けてあった馬車に乗り出発する。


 ミクもセリオに装具を装着させ、ワルドー伯爵令息と【豪腕】を乗せて出発する。相変わらずロフェルは周りをキョロキョロしているが、未だに襲ってくる様子は無いので、そんなに緊張していても疲れるだけだと言い聞かせる。



 「ロフェルさ、そうやって緊張してキョロキョロしてたら疲れるだけだし、襲ってくる側の思う壺だから止めた方がいいよ。そもそも襲撃側の方が有利なんだし、そうやって気を張り続けてると本当に襲撃されたときに動けなくなる」


 「それは……。言いたい事は分かるけど、いつ襲ってくるか分からないっていうのがね。私もここまでとは思わなかったから、まさかこんなに緊張を強いられるとは知らなかったの」


 「そもそも良く見える平地なんだから、こんな地形の場所で襲ってくる奴等なんて滅多に居ないよ。それこそ馬車とかで偽装して襲ってくるならまだしも、盗賊のように襲ってくる事は殆ど無い」


 「そう、だとは思うけど……全く無いとは言えないでしょ?」


 「そうだけどね、そんな無駄な事はしないと思うよ。襲ってくるなら隠れる場所がある所か、それとも隠れられない程の大人数で襲ってくるかのどちらかだ。こんな平地で、しかもショボい人数で襲う事は無い。成功率が低すぎる」


 「成功率……」


 「襲う側になって考えてみれば、見晴らしの良い場所で襲うなんて成功確率が低すぎるんだよ。だから見晴らしの良い平地はまずあり得ない。成功確率を上げるなら奇襲できる場所だ。それに王都までにまだ距離があるんだし、その中で襲うのに都合の良い場所で襲ってくるよ」


 「まあ、それはそうでしょうけど………ミクが言っていた食い詰め者が襲ってくるっていうのは?」


 「そいつらが襲ってくるのは町中だよ。食い詰め者がわざわざ町や村から出て、離れてから襲ってくる事はまず無い。そんな事を考えられるような奴等じゃないし、命令しても聞きゃしないだろうね」


 「まあ、スラムとかそういう所の連中だろうしね。あそこの者達が貴族の命令を聞くって事は無いと思う。実際に貴族とかに怨み骨髄の者は本当に多いから」


 「ワルドー伯爵領は重税だから余計にじゃないかな? それでもスラムの連中が体制側の言う事を聞くなんてまず無いけどね。あそこの連中は体制側から捨てられたようなものだから、体制側をそもそも信用していない」


 「という事は、お金だけもらって逃走もあり得る?」


 「十分にあり得る。そして監視者が居なくなったら、あっさりと戻ってくるよ。むしろ体制側を騙してやったぜって喜んでるんじゃないかな? そういう意味では、さっきの町のスラムの連中も依頼されてたかもしれないけど、ワザと動かなかったのかもね」


 「お金を貰っておきながら町を出て逃げた? で、ほとぼりが冷めたら戻ってくる?」


 「そんなところじゃない? 人を殺すんだから相当吹っ掛けただろうし、それを持って逃亡しても十分儲かると思うよ。そのうえスラムには独自の情報網とか色々あるだろうしね。依頼した奴等が居なくなったかは分かると思う」


 「となると、そこまで狙われないのかな?」


 「そこは分からないね。そういう奴等も居るっていうか多いってだけだし、中には真面目に依頼を受ける奴等も居るかもしれないし、そういうのを専門にしている組織もあるかも。そういう奴等なら逆にキッチリ仕事を熟すでしょうね」


 「成る程ね。幾つか私でも聞いた事がある組織がある。<死の眼>とか<首刈り>とか<獄剣>とかも聞いた事があるけど……ただ、何処の町にある組織なのかは知らない」


 「流石にそういう組織は裏のものだから、表の住人には知られないようにしてるでしょ。あくまでも可能性というだけで、そいつらに依頼してるかどうかは分からないしね。最初に戻るけど、今から緊張してても仕方ないよ」



 ミクが色々と話したからか、緊張が緩和されたロフェル。それにしても緊張したり辺りをキョロキョロし過ぎで、むしろ挙動不審になっていたのはどうなのだろう。自分が不審人物になっていた自覚は、おそらくだが無さそうだ。


 そのまま馬車は進み、昼に近付いた頃に村に到着。中に入って体を伸ばし、食堂らしき建物に入って食事にする。休憩は何度かしたが、それでも騎士ゴブリンの表情からは疲れが滲み出ている。


 鎧を着ていたりと装備が重いから仕方ないのだが、それでも騎士のトレードマークでもあるのだから諦めるしかないだろう。剣も行軍で持っているなら重い物なのだし、鎧などもっと重い。戦争の時とは違い兜をしていないが、そこまで含めるともっと重かっただろう。


 騎士の矜持というかプライドもあるのだろうが、本当に大変な事である。ミクはそもそも鎧など着ておらず、ロフェルは元々キルテッドアーマーくらいしか着けていない。


 キルテッドアーマーとは布鎧の事であり、金属鎧の下に着込む鎧下と変わらない物である。防御力は無いよりマシという程度でしかないが、それでも魔法使いの装備としては標準なのだそうだ。



 「魔法使いなんて基本逃げるものだしね。遠くから魔法で攻撃するのが普通だし、接近戦なんてしないもの。それにソフトレザーでさえ重いなぁって思うのに、ハードレザーなんてあり得ないわよ」


 「ハードレザーぐらいになればある程度の防御力はあるけど、ソフトレザーだと強力なモンスターの皮じゃないと防御力は見込めないね」


 「ミクも鎧なんて着てないけど、そもそも魔法使いじゃないわよね?」


 「私はこの装備で勝てるからだよ。正直に言って足を遅くする意味も無いし、これ以上の無駄な装備を重ねる意味も無いの。ハッキリ言って、私には金属鎧とか要らないしね。足が遅くなるだけ無駄かな?」


 「それは……っていうか大丈夫?」


 「大丈夫も何も、私が敵の攻撃を防ぐのに使うのは盾だし、それはアイテムポーチの中に入ってる。戦闘が始まったら取り出すから、普段は持ち歩いてないだけだよ」


 「ああ、鎧で防ぐんじゃなくて盾で防ぐんだ。だから重い鎧は要らないって事ね。でもそれってアイテムポーチ? がないと出来ないんじゃない?」


 「アイテムバッグでも出来ると思うけど、いちいち取り出すのが面倒かもね。私はポーチから武器とか盾とか取り出すから、そういう面倒は一切無いけど」



 周りに居る子爵まで呆れているのだが、ミクとロフェルは気にせず会話をしている。アイテムバッグなどという物は狙われる元なのだが、ミクは一切気にしていなかった。


 何かあったら喰えば済むとしか思っておらず、悪意を感知し続けているからだ。


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