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0634・王都への護送依頼




 ランク5の木札を貰ったミクはギルドを後にし、ロフェルと一緒に酒場へと移動。カウンター席に座り、大銅貨4枚を支払って夕食を注文。ロフェルも隣に座って適当に注文し、お金を支払っている。


 2人で今日の狩りの成功を祝いつつ飲んでいると、ロフェルが突然おかしな事を言い出した。



 「ミクって圧倒的に強いし、もしかしたら王都に行った方が良いのかもね。それかウェステル領に行く方が良いのかな? どっちにしても十分にやっていけると思う」


 「王都ってゴブルン王国の王都? それにウェステル領って何かあるの? 急に言い出したけど、私は今のところ動く気は無いよ」


 「そうなのね。王都は近くに<帰らずの森>と呼ばれる魔境があるし、ウェステル領の西には<澱みの山>って呼ばれる魔境があるのよ。どちらも強力なモンスターが出る危険地帯でね。だからこそ、腕自慢が沢山集まるの」


 「ふーん。でも王都の近くに危険な森があるっていうのも、それはそれでどうなの? と思わなくはないね。もしモンスターが溢れたらどうする気なんだろ?」


 「だからそんな事が無いように、多くの狩人が入ってモンスターを狩っているのよ。特に魔境化した場所は魔力が多く集まり、それだけにモンスターが凶暴化しやすいからね。王都もウェステル領も、そういう意味では安泰じゃないかしら?」


 「とはいえ、私がわざわざそんな場所へ行く理由が無いんだよねえ。ここでも十分儲かるし、別に無理する必要も無い。なのに移動するの? って思ったら微妙なトコかな。何でそんな事を急に言い出したの?」


 「ほら、ワルドー伯爵の息子と【豪腕】を護送するじゃない? もし依頼があったら請けて、一緒に王都に行かないかと思ってね。戦場から帰る時には襲撃が無かったけど、今回は絶対にあると見ていいでしょ?」


 「ああ。それは確かにね。私も奇妙というか拍子抜けしてたのよ。わざわざ村を焼いた連中が、負けた時の事を考慮してないなんてさ。明らかに不自然だとは思うんだけど、もしかしたらそこまで頭の良いヤツじゃなかったのかも。重税掛けるようなヤツだし」


 「それが関係あるかは知らないけれど、ワルドー伯爵にとったら破滅しかねない筈なのに、あれから動きが全く無いみたいなの。どう考えても怪しいし、流石に戦争に負けた事ぐらい知っている筈」


 「そのうえで何かを狙ってるというか、起死回生の一手があるとすれば……。どう考えても捕まったワルドー伯爵子息と【豪腕】の奪回、もしくは殺害ね。口を封じてしまえばいい。そうすれば少なくとも戦争をしたという事しか残らない」


 「それでも攻めて村を襲ったという事実は残るけれど、それがワルドー伯爵の所為だと証明できない? ……なんだか本当にそれを狙ってきそうね。だとすると王都への護送って、かなりの危険が伴うかも」


 「だね。大量にお金を払って、他の貴族にも協力を要請してるかも。もしくはそれぞれの貴族の領地の犯罪者とか食い詰め者に依頼している可能性もある。そこまで考えると、生かして連れて行くのは骨が折れるかもね」


 「ミクは一緒に来ないの? そうすれば危険度はグッと減るんだけど……」


 「そもそも護送依頼が来るかどうかも分からないからさ、今言ってても始まらないと思うよ? 依頼が来たら考えなくもないけど、依頼自体がそもそも出てないからねえ」


 「確かにそれはそう。いったい何時になったら護送するのかしら、出来れば無事に王都に運んで糾弾してほしい。ワルドー伯爵領では今も重税に苦しんでる村が多いの」


 「とはいえ王都まで行くのにも、色々と整えなきゃいけない事があるんじゃない? それを考えたら、簡単には出発できないと思うけどね。それに王都で襲ってくる可能性も……」


 「………」



 ロフェルは頭の中で色々と考えているらしい。やはり出身の村が無くなったといっても、故郷は故郷なのだろう。善人でもあるし、少しでもワルドー伯爵領で生きる者達を助けたい思いが強いようである。


 ミクはそんなロフェルを見て、危ういなと思う。こういう善人思考こそ早死にの元なのだが、ミクが言ったところで変わらないだろうから放っておくしかない。言葉で変わるなら善人をやってはいないのだ。


 夕食後、ミクはロフェルと分かれて宿へと戻る。そのまま部屋へと戻り狐の毛皮を敷くと、2匹を寝かせて自身も寝転び目を瞑る。今日も瞑想をしつつ、朝まで暇を潰すのであった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 適当に狩りをしながら過ごす事3日。ストレーナに昨日言われていたが、ミクは再び指名依頼を請けていた。それは王都への護送依頼である。正しい内容は、ワルドー伯爵令息と【豪腕】と呼ばれる狩人の護送をするので、その護衛依頼となる。


 ミクに依頼されるのは捕まえている2人の護衛と馬車を牽く事だ。相変わらずの依頼であるが、セリオはあっさりと許可したのでミクも受け入れた。どうもストレーナも一緒に王都へと行くらしい。


 大丈夫なのかと思うも、子爵の奥方は王都で社交をしているらしく、その応援などもあるので行かなければいけないそうだ。どのみちワルドー伯爵に捕まりかけた事も証言せねばならないので、行かないという選択肢が無い。


 ミクは宿を出発して食堂に行き、中銅貨3枚を支払って朝食を頼む。少し待っていると運ばれてきたので食べ、その後は真っ直ぐ狩人ギルドへ。中に入ると多くの者が緊張し始めたがスルーし、ミクはストレーナを待つ。


 少しするとストレーナが入ってきたので挨拶し、指名依頼を出されたミクはそれを請ける。護衛と馬車の牽引。その両方を確認してサインをすると依頼の受諾は完了。ミクはストレーナと共に外へと出た。


 王都へ移動するのは依頼のあった連中2名と、子爵とストレーナらしい。他にも護衛が10名ほど付くが、そいつらは徒歩なので動きが遅い。とはいえ時間が掛かっても安全に進まなければいけないのだ。重要な証人が殺されては困る。


 そういえば鉱山奴隷になる4人組の売却も終わっており、1人につき中銀貨1枚だった。ミクはそれが高いのか安いのか微妙だったので困ったのだが、素直に売り飛ばしておいた。


 子爵邸へと行き、セリオに革の装具を付けて準備完了。アルダギオン子爵とストレーナが乗った馬車を追いかける形でセリオが馬車を牽く。そのままアルダの町の門を抜け、王都までの旅に出発する。


 そう言えば聞こえはいいだろうが、何も無く王都に着くとは考えていない。



 「今から緊張して周囲を警戒してても仕方ないんだけどね? むしろ見通しが良い所では相手も襲ってきたりしないでしょ」


 「それはそうなんだけど、あのワルドー伯爵が何もしないなんてあり得ないし……どうにも緊張してしまうのよ」



 同じような仕事を請けているロフェルが、周囲をキョロキョロしながら歩いている。彼女も証言者の1人なので、指名依頼の形で王都に連れて行くらしい。彼女に罪は無い事は子爵も明言しているので、ロフェルも肩の荷が下りた形である。


 一応、村が焼き討ちにされる際には一緒に居たのだ、それだけでロフェルには罪の意識がある。とはいえ彼女に何か出来たかと言えば、何も出来ないだろう。彼女1人が止めさせようとしたところで、殺されていただけだ。


 だからこそアルダギオン子爵もロフェルに罪は無いと言ったのだ。良い悪いは別にして、多くの兵士や騎士を止めるなど一介の狩人には無理な事である。そもそも軍とは上位の命令に絶対である以上、命令拒否は叛乱に等しい。


 だからこそ、そこまでしたロフェルに罪は無いのである。


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