0633・魔法使いの戦い方
レティーを見ているロフェルが微妙な顔をしているので、聞いてみるミク。いったい何に対してそういう顔をしているのだろうか?。
「いえ、変な顔っていうか……。スライムなのに溶かそうとせず、血だけを飲んでるのが不思議なのよ。普通スライムって死体とかあると群がってきて食べようとするし、数が多いと厄介なの。場所によっては魔法で焼き払う訳にもいかないし」
「えっ? スライムってそんなに好戦的だっけ? 私の記憶ではあまり好戦的で無かったような気がするんだけど……。こっちの方はもしかして違うのかな?」
「いえ、そこまで好戦的って訳じゃないわ。でも、倒した獲物をいきなり溶かされたっていうのは新人あるあるよ。突然死体の下から出てきたかと思ったら、勝手に食べ始めて価値が減ったりするの。綺麗に倒してもスライムにやられる事もあるし」
「へー。そんな事になった事が無いから分からないなぁ。近付く反応とかも分かるし、ちょっとスライムには気をつけておくかな? とはいえ横取りねえ……してくる可能性もゼロじゃないとは思うけど、どうなんだろ?」
「私は血を飲んでいるだけですし、後は主が注文する食事を食べているだけです。ですので死体を横取りしなければ生きていけない訳ではありませんので、よく分かりませんね」
「そうだ、このスライム喋れるんだった。スライム同士で話したりとかはしないの? こっちに来るなとか、来たら危険だとか」
「そもそも私はスライム種として、異例中の異例なほど知能が高いのです。他の者はそもそも何を考えているのかすら分かりません。ハッキリ言って意志の疎通すら不可能です。そんな相手に話せと言われても無理ですよ」
「いうなれば大人が赤ん坊と意志の疎通が図れるかっていう話ね。それが無理なのは分かるでしょ? レティーと他のスライムにはそれぐらい差があるって事よ」
「そんなに違うの? それは無理ねえ……大人と赤ん坊じゃどうにもならないわ。それで何とかしろってうのは流石に無茶すぎるとしか思えないし。でも、そこまで違うって事自体、初めて知ったわね」
「まあ、仕方ないんじゃない。そもそも意思の疎通が可能なスライム自体がレティー以外に居ないんだし、レティーはもう普通のスライムのように生きてないしね」
「確かに。それなら聞いても仕方がないわね。……ありがとう。御蔭で血抜きは素早く終わったし、助かったわ。後は収納すれば終わり」
ロフェルは小さな鞄にホワイトファングを収納した。どうやらアレもアイテムバッグなようだが、ミクのポーチタイプよりも小さいかもしれない。なので、あまり入らないんじゃないかと問うミク。
「それはそうよ。貴女のアイテムバッグは大きいからそれだけ沢山入るんでしょうけど、普通はこれでも凄いのよ? 今の時代じゃ絶対に作れないんだから、相応の値段で売り買いされてるわ。これだって小金貨5枚もしたんだから」
「それは高いねえ。それでも数に限りがある物だから仕方ないのかな? とはいえ、持ってるだけで狙われるのは変わらないだろうけどさ」
「そうだけど、犯人はミクが呪いに掛けてやればいいじゃない。私なんて反撃だけで精一杯よ。仮にそれをしたところで、逃げて別の所で悪さをするだけ。ミクなら確実に悪い事が出来なくさせられるのにね」
「まあそうだけど、そもそも手足を潰せば逃げられないじゃん。特に足を潰すか傷付ければ良いんだよ。傷付くだけでも色々と支障は出るし、そうなったら犯罪者を逃がさなくて済むでしょ」
「それはそうだけど、私得意なのは魔法であって近接戦闘って得意じゃないのよね。一応武器は持ってるけど……。主にお金の使い道は魔石だから、どうしてもナイフぐらいなのよ。もし持つなら何が良いの?」
「それは槍でしょ。剣よりも斧よりも使いやすいし、携帯性って意味でも杖のようにして歩けば良いだけだしね。それも短めの槍にするといいよ。そっちの方が小回り効くし使い勝手が良くなる。私の槍も短めの短槍だしね」
「あれで?」
「そう、あれで。私ぐらいの身長だと、あれでも短槍に分類されるんだよ。それに相手は穂先を向けられるだけで迂闊には攻めて来なくなる。それはモンスターも変わらないよ」
「へー、その間に魔法を放つと。確かにそういう方法なら使えるかも。今までは不意打ちを仕掛けるか、だめなら逃げてたからね。とはいえ逃げる際の魔法は磨かれたから悪い訳じゃないけど」
そう言いながらも新たなホワイトファングを探すミクとロフェル。結局、2人は2頭ずつ倒して麓へと戻ってきた。やはりこちらは遠くて人気が無いのだろう。他の狩人が来る様子も無い。
ミクは麓の見晴らしがいい所で食事にし、ロフェルに小麦を練らせる。その間にドラゴンの干し肉や野菜などを入れてスープを作り、それとロフェルが作った伸ばした生地を焼いていく。
4枚焼きあがったら深皿2つと椀2つのスープを入れ、焼けたチャパティを皿に乗せたら食べていく。なかなかに景色の良い中で食事が出来ていて気分の良いミク。それが当たり前のロフェルは特に気にならないようである。
昼食を終えたミク達は後片付けをし、その後はロフェルをセリオの背に乗せて帰る。相変わらず凄い速さであり、あっと言う間とは言えないが、それでも驚くほどの速さでアルダの町に戻ってきた。
門番に少々警戒されたが、登録証を見せて中に入ると真っ直ぐ狩人ギルドへ。未だセリオの背に乗ってフラついているロフェル。帰りの方が速かったのか、どうやら腰が抜けたらしい。回復するまでは無理そうである。
解体所に行ってお互いの獲物を出し、木札を貰った辺りでロフェルも回復したようだ。セリオの背から降り、地面に自分の足で立つとホッとしたのか溜息が出ている。
ミクはその溜息をスルーし、小さくなったセリオをアイテムバッグの上に乗せたら狩人ギルドの建物に入る。中に入って真っ直ぐ受付に行き、木札を出すとジト目で見られた。
「昨日と同じ事を言いますが、ホワイトファングはランク4の方が1人で討伐するようなモンスターではありません。しかも2頭も狩っているじゃありませんか」
「今日は2人で行ったから、私1人じゃなかったよ」
「えっ? ……そちらの方と一緒ですか?」
「こっちはランク8の方だから、大丈夫なのかしら? それでも危険だと思うけど……」
「ミクは1人で余裕を持ってホワイトファングを倒してたわよ。むしろ私の方が危なかったんじゃないかな? そもそもランク4の強さじゃないし、ランク10でも私は驚かないけどね」
「そこまでですか……。これは今回もランクを上げなければいけないようですね?」
「昨日もそう言って上げてたけど、ギルドマスターに相談しなくて良いの? 勝手な事をしたら怒られるんじゃない?」
「私はサブマスターなのでご心配無く。なので私にもランクを上げる権限はあるのですよ。そのランクは6までですけどね。それでも不当に低いランクの者などが居ないように、サブマスターは現場で目を光らせる必要があるのです」
「それで昨日も私のランクを上げた訳だ。あんまりランクを上げられても、面倒な事に巻き込まれそうで嫌なんだけどね」
「でしたらランクを6以上に上げない事をお薦めします。ランク6以上に上げる為には試験を受ける必要があるので、そこからはギルドも強制できません。それにランク6はそれなりに多いので目立たないとは思います」
「それなら、まあ……」
どうやらランクを6以上に上げない者も居るらしい。その中に強者が居るかもしれないなー、と思うミク。それでも自分の敵じゃないから問題ないだろうと考えたようである。




