0629・狩りと愚か者
2日後。領都に戻ったミクは、輜重の馬車を返して身柄をアルダギオン子爵に渡す。ついでに変更した契約分の大銀貨3枚を貰い、子爵家を後にした。次に狩人ギルドへ行き、輜重の馬車を運んだ仕事での報酬である中銀貨3枚を貰う。
ついでにランク3になったらしく木札を渡されたが、特に何かが変わった感じもなかった。ただ3と書かれているだけである。分かりやすいと言えば分かりやすいが、まあ低ランクなどこんなものなのだろう。
昼に近かったので狩人ギルドを後にしたら、ミクは食堂に行って中銅貨3枚を払い、大麦粥を注文して席に座り待つ。ロフェルとは既に別れており、向こうはゴブリン用の宿に泊まるので別々だ。
ミクは高身長の者でも泊まれる高い宿に泊まっているので仕方ないが、定期的に犯罪組織を潰して金品を巻き上げれば余裕で暮らしていける。その程度の金銭は溜めこんでいるのが犯罪組織だ。
既に宿には1月分の金額を先払いしており、大銀貨1枚と中銀貨1枚を支払っている。その支払いの時に各貨幣の価値も分かった。
小銅貨:基本
中銅貨:小銅貨5枚
大銅貨:小銅貨25枚
小銀貨:小銅貨100枚
中銀貨:小銅貨500枚
大銀貨:小銅貨2500枚
小金貨:小銅貨10000枚
大金貨:小銅貨50000枚
このような形になっており、1泊小銀貨1枚というのは結構な高級宿に分類されるらしい。貴族の泊まる宿はもっと高いらしいが、平民が泊まるには分不相応なくらいなのだそうだ。別にお金はあるので気にしてはいないミク。
1泊を小銅貨に直すと100枚。それが30日なら3000枚となる。つまり大銀貨1枚と中銀貨1枚で丁度3000枚分になるという訳だ。これがこの星なのかゴブルン王国だけなのかは分からない。が、今のところは他の国に行く気も無いので気にしなくていいだろう。
その日はゆっくりと休んで次の日から狩人の仕事を始める事にし、適当に休んだ後で酒場に行って食事をする。大銅貨4枚を渡して食事にし、歌を聞きながら楽しむ。いつも通りに最後は木箱を持っているが、そこはスルーする。
そんな食事も終わると宿に帰り、さっさと狐の毛皮を敷いて寝るのだった。
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翌朝。起きたミクは【浄滅】を使って綺麗にし、準備を整えたら食堂へ行く。
【浄滅】を見られると面倒になる恐れもあるので、使えるのは宿の部屋の中ぐらいである。そのうえ部屋の中に収めないといけないので、無駄に高度な使い方になる。この星は【詠唱魔法】なので魔法陣は出来るだけ隠す必要があるのだ。
今のところはストレーナ達の前で見せてしまったくらいで、それ以外の前では見せていない。ストレーナ達は理解していない可能性もあるので、このまま放置して無かった事、或いは勘違いと思わせる気である。
食堂に移動したミクは小銅貨を15枚支払い大麦粥を注文し、適当に椅子に座って待つ。粥じゃ足りない場合はドラゴンの干し肉を出せば済むので、セリオもレティーもあまり気にしていない。
味で決めるのはセリオぐらいのもので、味覚が出来ても栄養を優先するレティーは大麦粥が嫌いではない。セリオも嫌いではないのだが、味が物足りないようだ。まあ、入っている物も少ないので気持ちは分からなくもない。
朝食を終えると狩人ギルドに行き、依頼表を見て狩ってくるモンスターを探す。領都周辺の地図と何処にどんなモンスターが分布しているかは貼り出してあるので、それと依頼表を見れば分かるようになっている。
ミクは熊のモンスターであるビッグベアを狩りに行く事にし、分布を地図で確認したら出発する。既にミクに喧嘩を売ってくる者は居らず、ベテランでさえ遠巻きにして怯えているだけであった。
ならば最初から喧嘩を売ってこなければいいのだが、ああいう手合いは失敗するまで理解しない。かつての2つの星でもそうだったのだから、ああいう連中は何処にだって居るのだろう。不思議な事ではある。
ミクは門番に登録証を見せて領都の外に出ると、真っ直ぐ北の方へと進んで行く。セリオも走りたがったので下ろし、一緒に走って北の森へと移動。輜重の遅さで鬱憤が溜まっていたのか、多少は気分がスッキリしたようだ。
森の中には複数の気配や魔力に精神、それに生命力も感知できている。どうやらゴブリンも居るみたいなので、狩人がここまで来ていたらしい。ミクに比べれば遅い連中だが、朝早く出発したのなら着いていてもおかしくはない。
そんな事を思いつつ森の中に踏み込んで行き、感知している情報を頼りにビッグベアを探す。そしてそれはすぐに発見できたので強襲し、一撃で首を穿った。後は呼吸が出来ずに苦しんで死ぬだけだ。
「グゲッ! ……ガッ! ゲボッ!」
苦しいのだろう、地面を転げ回りながら何とか呼吸をしようと足掻くビッグベア。しかし首を穿たれている時点で呼吸が可能な道理も無く、徐々に動きが悪くなってきた。ミクはそのまま死ぬまで確認していようと思ったのだが、何者かがこちらに近付いてくる。
「そこの近付いて来ている奴等、それ以上こちらに近付けば敵と認識する。死ぬ覚悟を持って近付いて来い」
ミクがそう言うと、ゴブリンの反応が一斉に止まった。しかしながら後退する事も無く、そこから動く気配を見せない。となると獲物の横取りとしか思えないのだが……。そうミクが考えていると、4つの反応が分散し始めた。
「成る程、そこの4人はこっちを囲んで殺す気か。ならば貴様らも死ぬ覚悟があると見做す」
途端に反応は固まり、動かなくなる。どうやらこちらが適当に言ったのだと勘違いしていたらしいが、先ほどの言葉で位置がバレていると理解したようだ。ミクは死んだビッグベアの首を大型ナイフで切り裂き、レティーに血抜きをさせる。
そのタイミングを狙って飛び出してきたゴブリン4人。手に剣や槍を持っているが、ミクはかわして頭に拳骨を落として悶絶させていく。4人は大した実力も無く、あっさりと悶絶しながら呻くだけとなった。
ミクはそいつらの頭に触れつつブツブツと呟き、またもや【善なる呪い】を付与していく。こうなったら最後、善人として生きて、善人として死ぬしかなくなる。そういう呪いなうえ、抗う事は不可能だ。
ミクは血抜きの終わったビッグベアをアイテムバッグに入れ、さっさとその場を離れる。既にハッキリと紋様が体に浮いているゴブリン4人は、最早どう足掻いても悪事を働く事は出来ない。
あの形であればギルドも怒るまい。そういう考えもあってやったのだが、一度は事情を聞かれるだろうなと思いつつミクは森を出る。その後は走って戻り、昼よりも早く領都に戻ってきた。1頭だけだとこんなものだろう。
門番に登録証を見せて中に入り、狩人ギルドでビッグベアを売り払う。依頼表に書かれていた通り1頭大銀貨1枚で売れたので、あのゴブリン4人が奪い取ろうとしたのも分からないではない。
この領都で一番高く売れる魔物がビッグベアなのだが、それ以外にも高く売れるモンスターはちょこちょこ居る。しかしそれらは少し遠いのだ。とはいえミクには障害にならない為、明日からは遠出をしようと思うのだった。
狩人ギルドの外にある解体所で木札を貰い、ギルドの中に入って受付嬢に渡す。受付嬢から大銀貨1枚を貰うと、ランクが3から4に上がった。ビッグベア1頭で?。
「本来ビッグベアを狩りに行くのはランク6以上で、しかも4人以上と言われています。ランク3がソロで討伐するモンスターではありません」
「ふーん……」
受付嬢が若干呆れた感じでミクに新しい木札を渡す。ちなみに木札は表面を削って新しく書かれているので、別に新品に交換されている訳ではない。ランク4と書かれた木札を受け取ると、ミクは受付嬢に少し聞く事にした。




