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0628・ロフェルとの会話




 アルダギオン軍は領都へと戻って行くが、ミクは相変わらず最後尾で歩いている。セリオも変わらず『遅いなー』と思いつつも輜重の馬車を牽き、ダラダラとした感じで進む。既に戦争自体は終わっているので、後は警戒しながら移動するだけだ。



 「警戒は怠らない訳ですね?」


 「当たり前だよ。何といっても相手の大将を捕まえてるんだし、相手は力尽くで取り戻そうとしてくるでしょ。そうしないと確実にマズい事になる。呪いを付加してるから嘘は吐けないしね。そこから全てバレるよ」


 「伯爵家の継嗣けいしですから色々な事を知っているでしょうし、確かにワルドー伯爵家にとってマズい事も沢山知ってそうです。という事は、死に物狂いで取り戻そうとするでしょうね」


 「そういう事。破滅する恐れがある以上は、形振なりふり構わないんじゃないかな? そもそも悪行が知れ渡って困るなら、最初から悪行なんてしなきゃいいんだけどね。悪徳なヤツにはそれが分からないんだろう」


 「悪徳……」



 たとえ悪徳だろうと平民が貴族に対して出来る事など殆ど無い。だからこそ貴族に対して怨みや憎しみを持つのだし、それが爆発すれば大規模な騒乱になる。今回のワルドー伯爵の負けで平民が蜂起する可能性もあるのだ。



 「そうなると多くの人が被害に遭ってしまいます。そんな事があっては……」


 「それは必要な犠牲でもあるけどね? そうやって貴族側に反撃するから、貴族も平民に重税を掛けたりしなくなる訳でさ。相手が反撃してこないと高を括ってるから、やりたい放題するんだよ。相手が反撃してくるとなれば、簡単に手出しはしてこない」


 「そう言われても、それでは犠牲になる人が出ますよね?」


 「そうだよ? でもそれは仕方がない。ロフェル、貴女さ、ワルドー伯爵家の重税をどうにか出来る? 出来るなら文句を言うのは分かるけど、出来ないなら黙ってなよ。平民は重税に喘いでいるのに何も出来ないんじゃ、文句を言う資格も無い。平民はそれをしなきゃ生きていけないんだからさ」


 「それは……」


 「犠牲を出したくないっていうのは分かるけど、その犠牲が出ても圧迫しないと、貴族ってのはいつまでも好き勝手するんだよ。それを犠牲が出るからって我慢したところで、彼らの生活は苦しいまま何も解決しない。そうでしょ?」


 「………」



 ここまで説明されて、ようやくロフェルも理解したらしい。確かに多くの者が犠牲になるかもしれないが、そこまでしないと平民の生活が改善しないのだ。苦しい生活のまま死んでいくぐらいなら、せめてもと思い蜂起に参加する。


 特に底辺の弱い者ほど参加し、貴族に対しての攻撃は激しいものになるだろう。そういう意味では、そもそもワルドー伯爵の統治に問題があるのだから自業自得である。マヌケもいいところだが、本人はきっと理解すまい。



 「ま、今回のことでほころびも生まれるだろうし、アルダギオン子爵家が王都に報告すれば変わるんじゃない? ワルドー伯爵の息子と【豪腕】。両方を捕まえて連れて行くんだからさ」


 「そう、ね。それだけの者達が捕まって証言すれば、ワルドー伯爵の領地が如何に重税を掛けられて苦しいか分かる筈。そうすれば、少しは生活が良くなるかも……」


 (本当にそうなるかは知らないけどね、興味ないし。王の言い分を無視して重税を掛け続ける事も出来るうえ、そもそも王がそこを突っ込まない可能性も十分にある。原則として、領地の税率を決めるのは貴族の裁量に含まれる筈だし)



 領地における税率というのは大抵の場合において、そこの領主が独自に決めるものであり、中央でさえも口が出せるものではない。という場合もある。国によって千差万別であるが、ミクはゴブルン王国の税制に関する知識が無いので口には出さない事にした。


 そんな話をしながら移動を続け、野営の時間になったら騎士の監視の中で食料の取り出しと記録を行う。その後、鍋にドラゴンの干し肉と支給の干し肉と干し野菜と硬いパンを千切って入れて煮込み、焼きたてのパンと共に食べて行く。



 「あの、私の分まですみません」


 「ああ、別にいいよ。そこまでだし、私のアイテムバッグにはまだまだ入ってる。1人増えたところで大した問題じゃない。それよりロフェルは向こうに戻れないだろうけど、これからどうするの?」


 「お金は常に持ち歩いていますので、アルダギオン子爵の領都に行って活動しようと思っています。ランクは8ですから新参でもやっていけますし、狩人が河岸を変えるのはよくある事ですから」


 「なら大丈夫そうだね。私はとりあえずランク3に上げて、モンスターを売れるようにならないといけないかな?」


 「あれだけの実力で分身とやらを使えて、更に【呪魔法】まで使えるのにランク2なんですか!? 明らかにおかしいですよ」


 「ここ最近登録したばかりだから、ランクが低いのは当たり前だよ。登録していきなり高ランクなんて、そっちの方がおかしいんだからさ。普通だよ普通。それよりモンスターを狩って売れるようになれば、ようやく生活も安定するよ」


 「モンスターは多いですが、あまり狩り過ぎても分布が変わって大変な事になりますし……なかなか大変ですよ? ギルドと相談しながら狩らないといけませんしね。モンスターが幾らでも湧いてくるなら楽なんですが……」


 「それはそれで酷い事になりそうだけどね。だったら高く売れるモンスターが狙い目かな?」


 「そうですね。そうなります」


 (つまりダンジョンのようなモノは無いって事か。ここまで連続してダンジョンがあったから、この星もあるんだとばかり思ってたよ。ダンジョンが無いならお金稼ぎはし辛いね。ま、代わりに犯罪組織なんかを潰せばいいか。分体2にやらせれば私の仕業だとはバレないでしょ)



 ミクは今後の予定などを考えつつ、食事を食べて後片付けを行う。アイテムバッグから狐の毛皮を2枚取り出すと、1枚はロフェルに貸す。恐縮していたものの受け取って寝転がると、少しして寝息を立て始めた。やはり狐の毛皮の効果は高いらしい。


 ミクはいつも通りアイテムバッグを枕にし、寝転がって周囲を監視する。ワルドー伯爵の息子と【豪腕】は2日ほど食事と水を抜くつもりだ。一応手足を縛って放り込んであるが、抜け出させない為にも体力を奪う。


 食事を抜く体力低下は相当に厳しいものがあるので、それをされれば反抗する気持ちも少しは萎えるだろう。そんな計算をミクはしていたが、その通りになるかは不明だ。


 食事をとれなくても反抗を続ける者だって居るだろうし、早々に反抗を止めて大人しくなる者も居るだろう。どっちにしたところで、ミクから逃れる事など出来ないのだが。



 (周りの連中がスパイであっても、夜闇に紛れて救出の手の者が来ても、私を相手にどうにかするのは無理だ。それこそ、この星の神どもが動かない限りはね)



 流石に神の権能を使われると取り逃がす可能性は高い。特に空間系の権能を使われると阻むのは難しいのだ。ミク自身が【空間魔法】を使えるようになっただけに、その難しさが分かってしまった。


 権能であるという事は自在に扱えるという事でもある。魔法という形に固定されたものではないのだ。その自由度にはどう足掻いても勝てない。それでも神力を喰う事は出来るので、防ぐ事だけを考えれば出来なくもないだろう。


 空間系と言っても神力は神力である為、それを喰えば発動は防げるのだ。ただし、それで精一杯になる可能性もある。神と正面きって戦った事が無いだけに、どうなるかはミクにも分からないのであった。


エピソード3の人物紹介を更新しました

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