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0626・ワルドー伯爵との戦争 その6




 アルダギオン軍は分けられ、別働隊は古参の者が率いる事になった。これはミクの入れ知恵であり、あれだけの惨状を見て、それでも冷静で居られた事を評価した結果だ。その事にはサスリオスも異論は無かった。


 兵士長は本隊を率いなければいけないうえ、別働隊は伏兵にバレてはいけないので大回りをする事になる。強行軍になるし、相手にバレてもいけないという厄介な任務なのだ。その別働隊は、移動しながら別働隊が組織された理由を話している。主にミクが。



 「つまり、ここに居る100名は伏兵の背後をとって襲いかかり、本隊の前に伏兵を炙り出す役目。敵の数は最大で200名程と思われる。我々の勝利条件は伏兵の連中を強襲して本隊の前に出す事であり、敵を倒すことじゃない」


 「うむ。我々のなすべき事を間違えてはならん。我らはモンスター狩りで言えば勢子せこの役目、つまり敵を追い立てる役じゃ。一旦始まれば大きな声を出し、敵を本隊の前に追い立てる必要がある。それには一斉攻撃が肝要」


 「横並びで敵に攻撃し、さも大量に居ると見せかける。敵を後ろから強襲するんだから、慌てた敵は当然前へと逃げる。そこを待っていた本隊が叩き潰すという事。それでも敵の本隊は残ったままだから、そこで更に功を稼ぐ事もできる」



 更に功を稼げるという言い方をしたからか、別働隊に選ばれた者達も俄然やる気が出てきたようだ。ちなみにロフェルは本隊と共に居る。というよりサスリオスと一緒に進軍している形だ。


 一応疑いを持つ者も居ないでもない為、サスリオスの側が一番安全なのだ。身の潔白も証明できる。なぜなら証明するのは次期当主であるサスリオスなのだ。誰も文句など言えない。


 ミク自体はロフェルを全く疑っていない。何故なら分体2が調べた通り、彼女は善人であったからだ。であるならば、疑う理由が何処にも無い。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 そろそろロフェルの言っていた林の裏側になる。別働隊は林に入るとしゃがみ、出来るだけ足音を出さずに移動を始めた。向こうもゴブリンなので小さく、ミクは背が高いので膝で歩くような形をとっている。それでも手を使っているからか速い。


 どんどんと進んでいき、隊長である古参兵がストップさせる。理由は前方に敵軍の姿が見えたからだ。後ろから強襲するタイミングは、1人のゴブリン兵士が林の外ギリギリに居て、こちらに合図を出す手はずとなっている。


 そしてそちらの方を向きつつ待っていると、ゴブリンが合図である旗を振る。それは服を巻きつけただけの簡易的な物であったが、それで十分であった。



 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」」」」」」」」」



 大きな鯨波ときの声を挙げつつ伏兵を強襲する別働隊。多数が居るように見せかけつつ敵の背後を強襲する。実際に伏兵がどれぐらいだったのかは分からないが、別働隊は順調に敵を殺しながら追い立てていた。


 村を焼き打ちにされたのだから許せる筈も無く、自分の身に置き換えて激怒していた者達。その者達が怒りを解き放ち強襲しているのである。受けた方からすれば自分達の倍の人数が居たと錯覚しても不思議ではなかった。



 「「「ギャー!」」」 「「ガァ!?」」 「「「グボォ!」」」 「「ヴェァ!!」」


 「「「「「「「「「「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」」」」」」



 もはや怒りからのパワーが凄まじく、伏兵の者達は前に逃げるしかない。流石に後ろから襲ってくる悪鬼羅刹に立ち向かう者など居なかった。


 こうなると、この場での戦いは勝利を約束されたものであり、更にテンションを上げて突撃する別働隊。


 それも長くは続かず……。



 「「「「「うわぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」


 「来たぞ! 敵の伏兵どもだ。今こそ村人達の仇をとる。ブチ殺せ!!!」


 「「「「「「「「「「オオオオォォォォォォ!!!」」」」」」」」」」



 逃げている集団が立ち向かえる筈もなく、一兵たりとも残さないように蹂躙されたワルドー軍の伏兵。そしてその向こうの方に見えているワルドー軍の本隊。


 合流して素早く編成し直したアルダギオン軍は、士気も高いままに進軍していく。一方のワルドー軍は策が破られ数を大きく減らしている為、非常に不利な状況に陥っていた。


 防御を含めた守りの陣形だったが、伏兵が叩き潰された事を見たからか、慌てて通常の横陣に変更している。とはいえ元々の策と違う事をしているのだから、兵士達の動揺も大きい。明らかにアルダギオン有利であった。


 そして事ここに至れば、もはや小細工などしていられない。両軍は攻める事を指示し、一気に戦争の様相を呈する。といっても規模は小さいが。



 「「「「「「「「「「うぉぉぉぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」」」」」



 両者の怒号が響き渡り、少しでも自分達が強いと主張しつつぶつかる。ミクは既に後方に下がり、暢気のんきに透明な触手を空に伸ばして観戦中だ。小競り合いレベルの少なさとはいえ、れっきとした戦争でもある。


 なかなかに興味があるし、見ていて面白い物でもあった。当たり前だが少数が戦うのと違い、小細工や小回りが効かない。ワルドー伯爵側は【魔大剣】というのと、【豪腕】という狩人が奮戦しているようである。


 【魔大剣】のスキルは、どうも剣に魔法を乗せる事が出来るらしいが維持に難があるようだ。何度も繰り返して魔法を行使しており、魔法が使えなければ何の役にも立たないスキルなのが分かる。


 一方の【豪腕】も一時的に強力な腕力を誇るだけで、常にそれが使える訳ではないらしい。となると【詠唱短縮】や【二重詠唱】の方が優秀なスキルではなかろうかと思える。それと【気配消失】に関しては、そもそもミクには通用しないので意味が無い。


 分体2は完全に把握していた為、気配しか隠せないのだ。強力なスキルっぽい言い方だったが、弱点が多すぎるだろうと思う。ハッキリ言えば、一番役に立たないとしか言い様が無い。



 「【魔大剣】、討ち取ったりーーー!!!!」


 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」



 どうやら何者かに討ち取られたらしい。ミクならばともかく、多少良いスキルを持っている程度では戦争の不運には抗えない。自分の上に矢が落ちてきただけで死ぬのが戦争である。今回の戦争では弓兵が居ないが、普通は幾らか連れてくるものだ。


 代わりに魔法兵が居るので、そこで補っているのだろう。とはいえ魔法兵も森などでは使い難いので、色々と考えなければいけない。今のようなある程度の平地の上であれば使えるのだが、特に【火魔法】は威力があるが扱い難いのだ。


 延焼する危険も考えなければいけないし、森を焼いたとなればモンスターが乱入してくる恐れもある。かつてそうなり、双方が全滅したなどという戦争もあったそうだ。なのでゴブルン王国では【火魔法】の取り扱いは本来慎重にされる。


 【二重詠唱】は【爆発魔法】だったから良かったが、【火魔法】だと自身の身が危うくなっていた可能性が高い。何故なら【火魔法】を森などへ向かって撃つのは重罪に科せられるみたいなのだ。


 ミクも気をつけた方が良いなと思いつつ、輜重の兵と話しながら戦況を見守っていると、どうやら向こうの大将は逃走を始めたようだ。退却と言わないのは、我先に逃げたからである。


 内心で「あーあー」と思いつつも分体2に指示し、後はゆっくり終わるのを待つのであった。


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