表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
628/1113

0623・ワルドー伯爵との戦争 その3




 野営地での夜。当然ながらミクは寝てなどいない。というより眠るという事が出来ない存在である。なので周囲の監視をしているが、同時に分体2が様々な場所に行って話を聞いたり確認をしている。


 分体2はいつも通りに透明化を行い、見えないようにして陣地内をうろつきつつ情報収集をしていく。特に悪意のある連中ならば、その悪意から記憶を辿れるのだが、普通のヤツの記憶は辿れないのだ。そちらはおそらくだが<精神の神>の範疇はんちゅうなのだろう。


 なのでミクは悪意のある者を探すのだが、悪意も薄いとあまり分からず、どうにも情報収集が上手くいかない。呪いを使って強制的に聞き出す事は可能だが、それをすると呪いを操れるのがバレてしまうので困った事になる。


 更には根源の神に何を言われるか分からないので、使うにしても悪人のみにしたいところなのだ。便利な力があっても使いどころは限られる。ミクの中で神の権能というものは、そういう位置付けをされていた。



 (それにしても大した話も無いし、だいたいの連中がすぐに寝たね。もちろん灯りなんて無いし、あってもモンスターが寄ってくるから点けないみたいだ。まあ、焚き火だって生き物を引き寄せるって言うしね)



 そんな事を考えつつ探っていると、どうやらサスリオスの居るテントまで来てしまったらしい。どうも中で相談をしているようなので、せっかくだからと聞いていく事にした。盗み聞きではあるが、こういう場合は盗まれる方が悪いのだ。



 「ふむ、明後日には敵軍との睨み合いの場に到着するのか。しかし睨み合いといっても、どこで行うかは決まっているのだろう?」


 「ハッ! 我が方の村を敵に襲わせない為にも強行軍に近い速度で進んでおります。ですが、到着した後は騎士も兵士も疲労困憊の可能性が高く……。出来得る限り魔法兵で牽制させますが、相手が攻めて来た場合どこまで守れるかは分かりませぬ」


 「こちらが遅かった事が響いているのか。しかしこれでも兵士長以下、出来得る限り迅速に集めて準備してくれたのは知っている。そしてこれが難しい戦争だという事も」


 「はい。ですので御当主様は坊ちゃんにお任せする事にしたのだと思います。この経験は大きく生きてくる筈です。厳しい経験をしたからこそ、それより楽なものは簡単と言えるようになるのですから」


 「それもまた大変だが、次期当主としては必要な経験か。さて、そうとなれば早く寝た方が良いな」


 「ハッ。明日もまた移動でございます。見張りの者が警戒しておりますので今日はこれにて。後はゆっくりお休みくだされ」



 そう言って一礼した後、兵士長はテントを出て行った。それを見送った後サスリオスも寝始めたので、ミクはさっさとテントを出る。兵士長を追い駆けたが、兵士長は見張りなどに声をかけた後で地面に寝始めたので、これで情報収集相手が居なくなった事になる。


 仕方がないので鳥に姿を変え、ワルドー伯爵軍の様子を見に行く事に。どこまで飛べばいいかは分からないが、最悪は本体空間に戻ればいいだけなので適当に飛ぶ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 適当に飛んでいると多くの生命力を感知する場所があったので、ここかと思い降下し、地面に下りたらムカデになって走る。テントがあったので中に入ると、既に寝ていたので情報は取れず。


 しかしながら結構な悪意は感じる為、悪の神の権能を使って悪意の根元を覗く事にした。



 □■□■□■□■□■□■□■□



 「分かっているな。素早く向こうの連中の村を攻めて潰したら、すぐに戻るんだぞ。今回の策の要点は村を潰して怒らせ、こちらに引き込む事だ」


 「分かってるし、親父の話は何度も聞いた。敵をこっちの領地までおびき出して、伏兵に横っ腹を叩かせるんだろ? 何回も言われなくても分かってるっつーの!」


 「お前が失敗したらせっかくのお膳立てが水の泡だから言うておるのだ! 他の領地の者も手を貸すと言うておるし、それぞれの領地で一番とも言える狩人を送ってきた」


 「あんな奴等が本当に役に立つのかよ。力だけのバカに魔法自慢の娼婦みたいな女、それにコソコソする事しかできないヒョロガキ。あれが役に立つならオレは戦場で無敵だぜ」


 「いつもいつも見た目で相手を侮るなと言っておるだろう! さっさと行って叩き潰してこい。貴様が次期当主としての手柄を寄越せと言ったのだろう、だから任せてやっているのだろうが!」


 「親父こそ、向こうの娘を囲いたいだけじゃねえか。初恋の女を子爵に取られたからって、その娘を囲ってなぶろうなんて碌なもんじゃねえぜ。いつまでこじらせてんだ」


 「五月蝿いわ! さっさと行け!!!」


 「ヘーヘー、分かりましたよ」



 □■□■□■□■□■□■□■□



 (悪意だから覗けたけど、碌なもんじゃないね。それにコイツはコイツでワルドー伯爵と似たような事を既にしてるし、親子揃って碌な奴じゃない。しかし、引き込んでの横撃かー。どうやって伝えたもんかね?)



 伝え方に困りつつも、ミクは他の場所も見て回りながら狩人を探す。すると普通のゴブリンよりも2回り以上大きい体をしている者と、随分と薄い服しか着ていない者と、かなり痩せたゴブリンが居た。


 どうやら彼らは一塊になっているようだが、伯爵家の次期当主近くに居た2人とは違って後方に陣取っている。どうやら意図的に後ろに居るようだが、それが命令なのか、それとも逃げる為なのかは分からない。


 大柄のゴブリンは酒を飲んで寝ており、薄い服しか着ていない雌も寝ている。ヒョロガキは寝返りをうっているが寝られないらしく起きていた。チラチラと雌の方を見ているので、興奮して寝られないのだろう。


 この者達も含めて監視する事に決めた分体2は、輜重の馬車の屋根に上がり、そこからムカデの姿で監視を続行するのであった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 こちらは2日後の分体1であるミク。時間が掛かったものの、国境付近に到着した。しかし村が1つ荒らされており、アルダギオン軍の怒りは最高潮に達している。女は1人も居らず、男と老人と子供は惨殺されていたのだ。


 中には死体を損壊して遊んだ形跡まであり、アルダギオン軍は兵士も騎士もブチギレている。だからこそ危うい。ミクはそう思っているが、だからといって相手の作戦を教える訳にもいかないので困っていた。



 (あそこまでの惨殺を見たらキレるのも当然だよね。私もキレそうになったよ、食べ物を粗末にしやがって……!)



 ゴブリン達とは別の意味でキレそうになっているミクではあるが、食い物を粗末にしたりもてあそぶ事はミクにとって許せない事である。<喰らうもの>であるが故に、そこには非常に厳しいのだ。特に人間種という食い物には五月蝿い。


 今までの星のゴブリンと違い、この星のゴブリンは人間種と変わらず、喰うと血肉が増える事を発見したのだ。だからこそ死体を損壊した事に激しい怒りを感じているミク。やはり他の者とは色々とズレている。


 それはともかくとして、アルダギオン軍のこれからを話しているらしいが、何故か纏まっていないようだ。他の騎士や兵士も「早く決めろよ」と思っているのかイライラしているようで、軍内の雰囲気は悪い。


 そんな中、ミクは兵士長に呼ばれたので前へと移動する。何故かサスリオスではなく兵士長なところに引っ掛かったが、それでも正式な呼び出しみたいなのでついていく。


 前方に立てられたテントの中に入り、入り口近くに座る。中に居る者達の大半が目に怒りを持っていたが、1人そうではない者が居る。いや、怒ってはいるのだが、それを抑えようとしていると言った方が正しい。


 あの皺ゴブリンは古参だったか? と思いつつ、ミクは何故呼ばれたかを聞くのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ