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0621・ワルドー伯爵との戦争




 「あの方達はいったいどうしたのでしょう? 凄く怯えていましたけど……」



 狩人ギルドの建物を出て歩いていると、ストレーナがそんな事を呟いていた。なのでミクはストレーナとメイドには影響が無いように威圧を行い、舐めていた3人組の1人には更に強力な威圧を行ったと説明する。



 「まあ、そんな事をされていたのですか? 威圧スキルをお持ちなのですね」


 「まあ、そんなところ」


 (威圧スキルってどういう事? 気にしてなかったけど、またこの星でもスキルというものがあるんだね。てっきりこの星にはスキルなんて無いと思っていたよ。厄介なスキルとか無ければいいけど)


 「そういえばワルドー伯爵の領地に厄介なスキル持ちとか居る? そういう情報が先にあると助かるんだけど」


 「………確か、【魔大剣】と【詠唱短縮】というスキルを持つ者が居ると聞いたような気がします。ワルドー伯爵がやたらに自慢していましたので覚えているのですが……」


 「【魔大剣】と【詠唱短縮】ねえ……」


 (【詠唱短縮】って事は、この星の魔法は【詠唱魔法】って事かぁ。圧倒的に速度は遅いけど強力な可能性もあるし、あまり舐めない方が良いね。とはいえ危険なら喰えば済むし、私が危機に陥るなんて事はあり得ないんだけど)


 「どちらにしても、ワルドー伯爵は全力でこちらを攻めて来ると思います。おそらくその数は500を下回らないかと……」


 「えっ? 500? 妙に少ないんだね、その程度の人数しか動員できないなんてさ。それともゴブルン王国ではそんなものなのかな?」


 「いえ、我が国でも対外戦争では万を超す数が集められますが、1貴族の領地であればこんなものですよ? 我が方からも出せて500だとお父様が申しておりました。ただしワルドー伯爵の領地の者とは装備の質が違います」


 「鉄鉱山があるからだね?」


 「はい。我が領地では採掘された鉄からゴブルー鉄を作り出していますので、他の領地のように唯の鉄装備とは違うのです。代わりにその装備を行き渡らせるのは大変だとお父様は申しておられましたが……」



 アルダギオン子爵領の領都であるアルダの外に出ると、既に準備が整っていた騎士や兵士達が出発の時を今か今かと待ちわびていた。そしてアルダギオン子爵の隣にはもう1人ゴブリンが居るのだが、そのゴブリンはアルダギオン子爵に似ているように見える者であった。



 「お父様、兄上。ミク殿をお連れ致しました。ミク殿、こちらが兄であるサスリオスです」


 「私はミク。今回輜重の馬車を牽く事になった狩人。ま、私が牽く訳じゃないけど、宜しく」


 「ふむ、お前がか。父上が申される通り、役に立てば良いのだがな。期待はしておこう」


 「さて、揃ったな。ストレーナはミクに牽く輜重を教えてやってくれ。今回の戦争は全面的にサスリオスに任せる。兵士長、サスリオスは初陣だ。大丈夫だとは思うが、補佐してやってくれ」


 「任せて下さい。坊ちゃんの晴れ舞台ってんだから、張り切らせて貰いますよ」


 「いやいや、初陣だからこそ坊にはしっかりと様々な経験をしてもらわにゃ駄目じゃろうが」



 少し皺のある古参っぽい人物が横から苦言を呈しているが、ミクにはゴブリンがワチャワチャ言い合っているようにしか聞こえない。面倒なのでストレーナに案内してもらい、セリオに牽いてもらう輜重の所に案内してもらった。



 「こちらの様ですが牽けますか? 中にはかなりの食料が載っていますので、無理なようなら……」



 そうストレーナが話している前で、ミクが楽々と牽いて動かす。片手であっさりと動かしているのだから化け物と言ってよかった。輜重の兵士も唖然とした顔で見ており、表情は驚愕のまま固まっている。



 「この程度の重さでしかないなら私でも余裕だね。ま、とりあえずはセリオに牽いてもらうけど、おそらく良い運動にすらならないだろう。こんな程度じゃ適度な負荷とも言えない」


 『そう? だったら後でレティーと押し合いでもしようっと。そもそもレティーの方が普通の魔物より強いし、押し合いだって強いからね。流石に本気なら僕の方が強いけど』


 「それはそうでしょう。私は体の大きさは変えられませんが、セリオは大きさを変えられるんです。あの大きさになられたら、私は踏み潰されてしまいますよ」



 そんな声が聞こえるからだろう、輜重の兵士がキョロキョロし出すが、ミクは気にせずアイテムバッグを置いてセリオを地面に下ろす。下りたセリオは輜重を牽くのに丁度いい大きさになり、ミクが装具を付けていく。


 大きさが変わった事にも驚愕したが、その大きくなったものが見た事もない者で更に驚く周りの連中。ミクは装具を着け終わり、後は出発を待つだけとなった。何故かストレーナは一緒にいるが、どういう事なのか聞く事に。



 「ストレーナは領主邸に戻らないの? 今から演説っぽい事をやって出発するんでしょ?」


 「演説っぽい事ではなくて、演説です。後、私はお見送りですから、皆さんを見送った後で戻ります。戦争ですから何が起こるか分かりません、なのでくれぐれも気をつけて下さい」


 「大丈夫、大丈夫。そもそも戦争に参加するのって初めてじゃないし、しかも後方だからね。ゆっくりさせてもらうよ。敵が来たら適度に戦うくらいか。何たって輜重を牽く以外は契約に無いからね」


 「契約って……」


 「うん? 当たり前の事だよ。自分の身は守るけどさ、それ以上の事をする気は無いよ。私からすればお手並み拝見って感じかな? 敵の偽装騎士を叩き潰したの忘れた?」


 「あ……。確かにそうでしたね。アレなら敵の兜ごと叩き潰せます。確かに余裕で敵を倒せる以上はそうなりますか。アレは本当に衝撃的な光景でしたし……」


 「そこまで? 私としては見慣れた光景でしかないし、大した事でもないけどね?」


 「そう、ですか……。おっと、兄上の演説が終わったようです。ミク殿、兄上の事は悪く思わないで下さい。今回が初陣で、かなりの緊張をしておられるようですので、言葉が悪く出たり尊大な姿を見せようとしているようなのです」


 「それは言われなくても分かってる。あの物言い聞いた時に「お子ちゃま」だなと思ったし」


 「お分かりだったのですね。っと、前が出発し始めました。御武運を!」


 「ありがと。行ってくるよ」



 セリオが前に歩きだしたので、ミクも歩調を合わせて歩き出す。前の方が遅いからか早く進むことは出来ず、セリオに頼んだ意味があったのかと悩むミク。セリオも歩いているが『遅ーい』と言っているので、むしろ遅さでストレスが溜まるかもしれない。


 そんな事を考えながらも移動をしていき、国境地帯へと進んで行くアルダギオン子爵軍。相手の伯爵軍がどれほどの軍かは知らないが、ミクの出る幕は無いだろうと暢気のんきに構えていた。


 ミクにとってはどうでもよく、アルダギオン子爵軍が壊滅しても構わない。依頼として請けたのは輜重の馬車を運んで往復する事だけである。つまり戦地まで運んで領都まで持って帰るというだけ。


 だからこそミクはそれ以上をする気は無かった。何故なら契約外だからであり、どうせ手や口を出しても面倒な事にしかならないと分かりきっているのである。だからこそ、お手並み拝見と言ったのだ。


 つまり最初から戦争に関わる気はなく、適当に依頼を熟す事しか考えていなかったという事である。しかしスキル持ちが居るとなると少々話は変わってくるもので、せめてスキル持ちのスキル程度は見たいと考えていた。


 なので戦場には分体2をムカデか鳥で派遣する事を検討している。それもこれも戦場に着いてからとなるので、今は移動に専念するのであった。


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