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0620・ミクへの依頼




 Side:ストレーナ



 「お父様、お呼びと聞き参りましたが、何の御用でしょうか?」


 「うむ。少し聞きたい事があってな。まあ、座りなさい」


 「はい、失礼致します」



 お父様は執務机でなにやらお仕事中のようです。戦争に関しては兄上と兵士長が取り纏めているでしょうから、お父様のなさる事は確認と裁可だけの筈。ならば私が呼ばれる事など無い筈なのですが……。



 「実はな……馬番の者が、我が家の厩舎から何者かが家畜を連れ去ったという話をしたらしい。どうやらタッソーではないようなのだが何か知っているかね? 角が生えているとか何とか言っていたらしいが……」


 「角がですか? それはおそらくセリオ殿の事ではないかと思います。タッソーが殺されてしまい馬車が転倒したのですが、その馬車を起こし代わりにセリオ殿に馬車を牽いてもらって戻って来たのです」


 「ふむ。そのセリオというのはストレーナが捕まえてきたものでは無いのだね?」


 「ええ。ミク殿が連れていた仲間だと言っていました。そもそもセリオ殿とは会話をする事が出来ますので、話せばすぐに分かります。何故馬番の者はそんな嘘を吐いたのでしょうか?」


 「さて、分からん。やたらに怒り狂っていたと聞くが、そもそも我が家の厩舎に角の生えた家畜など存在しないのだがな。何故そんな訳の分からない事を言い出したのか……。とりあえずウチの家畜でないのならいい」


 「そもそもセリオ殿は意思疎通が出来ますから家畜ではないような気がします。確か、ミク殿はセリオ殿の種族を……そう、ドラゴンライノと言っていました」


 「は? ドラ、ゴン……?」


 「はい。レティー殿はマルチスライムだと申しておりましたし、不思議な方々でしたね」


 「あー、うむ。………頼めば輜重を牽いてくれると思うか?」


 「申し訳ございません。それは聞いてみなければ分からないと思います」


 「まあ、だろうな。……どうも馬番の者が突っ掛かり泥棒扱いしたようでな、これが子爵家のやり口かと怒っていたそうだ」


 「それは……申し訳ありませんが、当然かと。というより、私の命の恩人なのですが、何を考えているのでしょうか? ボケているのか、それとも何処かの手が入っているのか。調べた方が良いような気がします」


 「やはりストレーナもそう思うか。私も此度の馬番の言い分はあまりにおかしいと思う。今までそんな事は無かったのに急にだ。ボケていても何処かの手の者でも解雇一択だがね」



 お父様がそう言うと同時に外からドタドタと走ってくる音がしました。いったい何事でしょうか?。



 「御当主様、大変です!! 厩舎が何者かに燃やされており、馬番の者がりません!!」


 「「!?」」



 思わずお父様と顔を見合わせてしまいました。調べなければいけないと思った矢先にコレです。どうやらワルドー伯爵の手の者だったようですね。しかし我が家の厩舎を燃やしても意味が無いような……。


 お父様は素早く指示を出した後、私の方を見てきました。なので私の意見をお伝えしておきます。



 「我が家の厩舎には今、何も居なかったような気がするのですが……」


 「そうだな。兵士達の所で他のタッソーは訓練中だし、我が家の厩舎には何も居ない。おそらくは逃げる為の時間稼ぎだ。あのお客人から取り上げたかったという事は、よほどその〝セリオ〟というのが素晴らしかったのだろう」


 「素晴らしいと申しますか、馬車内に私とメイドに兵士3名。これだけ乗っているのにも関わらず、非常に速い速度で移動をしていました。なのでこれほど素早く帰って来れたのです。もしかしたら馬番の者は襲われるのを知っていたのかもしれません」


 「掛かる時間を逆算して、そのセリオの能力を理解した訳か。となるとアルダギオン家の名前で取り上げて、密かに何処かへ運ぼうとしていたのかもしれない。我が家に手を出すのはワルドーとは限っていないしな」


 「そこまでしてでも鉄鉱山というものが欲しいのでしょうね。それでも投資を含めて多くのお金が出て行くので、外から見えるほど儲かる訳ではないのですが……」


 「無い物ねだりというヤツだろう。持ってないから欲しくなる、まるで子供だな。とはいえ、そう言えるのは我が家が持っているからだろうが……。とにかく、我が家を潰そうというのであれば抗うのは当然の事。黙って潰される貴族などらぬ」


 「はい。それではメイドを連れて、私はミク殿に頼んで参ります。メイドに任せていては上手く行かないかもしれませんので」


 「うむ。すまないが頼む。輜重が少なければ、その分だけ動員出来る兵が少なくなる。それでは勝てる戦いも勝てないからな」



 さて。まずはミク殿を探さなければいけませんが、おそらく大きめの宿に居るでしょう。そこを当たっていけば見つかる筈。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 あれから2日、ランクは2になった。今日も仕事をしに狩人ギルドへと行くと、何故かストレーナが朝早くに居た。どうやら頼んできた事を正式に行う事が決まったらしい。



 「ちょうど良かったです、ミク殿。思っていたよりも事態が逼迫ひっぱくしておりまして、これからすぐに出発しなければいけないのです。お願いできますか?」


 「構わないけど、いったい何があったの?」


 「こちらが思っているよりもワルドー伯爵の動きは早かったらしく、今日出立しないと領境の村を焼かれかねないとの事です」


 「了解、了解。ならさっさと指名依頼を出してよ」


 「はい。こちらを」


 「かしこまりました」



 狩人ギルドにも指名依頼というのはあって、依頼者側がこの者にやってもらうと直接指名できる依頼の仕方だ。基本的に有名な者に頼んだりするやり方だが、ランクの高い低いは関係が無い。



 「ちょっと待った! そいつはまだランク2だろ! 何でオレ達を差し置いてこんなヤツが選ばれるんだよ!!」



 横から口を挟んで来たのはランク1に降格させられた3人組だ。ただし、周りの連中もミクをジロッと睨んでいる。もちろんミクはいつも通りにスルーだ。バカに付き合うほど暇ではない。



 「そもそも私はお父様、つまりアルダギオン子爵の代理でここに居ます。そしてこれは指名依頼であり、誰に指名するかは依頼者の自由です。何故文句を言われなければならないので?」


 「子爵様……。あ、い、いえ! そんな……文句などはありません。で、ですが、何故そんな余所者にさせるのですか。地元の我々が居ますが……」



 周りの者も子爵家という言葉に及び腰になったが、しかし納得できないのか頷いている。



 「あのですね。誰が依頼しようが指名依頼は自由なのです。我が子爵家はミク殿にお願いする。それは当主であるアルダギオン子爵の決定です。貴方達が言っているのは、それにくちばしを突き込む事なのですが?」


 「い、いえ、そんなつもりは……」


 「そのうえこの依頼は輜重の馬車を牽いてもらう依頼なのです。貴方がたはそれが出来るというのですか? 今回のワルドー伯爵との戦争の要なのですよ?」


 「輜重の馬車!? わはははははは!! そんな事をなぁ!! おい新人、頑張れよ!!」


 「「「「「「「「「「ギャハハハハハハ!!!!」」」」」」」」」」



 周りの者が笑っているが、何が面白いのかサッパリ分からない。だからこそミクは聞く事にした。威圧付きで。



 「お前達。何が面白い? 輜重の馬車を運ぶのも戦争に勝つ為には重要な事だぞ。それの何が面白いんだ? うん?」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 ミクを中心にして凄まじい威圧が撒き散らされ、ストレーナとメイド以外の全員が真っ青になってガタガタ震えている。アンモニア臭がしてきたので、どうやら大人数が失禁したらしい。



 「すまないが早く手続きをしてくれ。そうしてくれないと、ついついゴミを処分してしまいそうだ」


 「は、はい! すぐに!!」



 慌てて受付嬢が書いていき手続きを進めるが、その間もミクは威圧を収めていない。当たり前だが狩人も同じで舐められたら負けなのだ。だからこそ、こうする。



 「何だ、この程度の威圧で動けないのか。実に下らんな。所詮ザコどもの集まりか」


 「て、てめえ……オレた……!!!」



 ミクに絡んできた阿呆が頑張ったが、今度は本質を少し解放して食らわせてやる。するとあっと言う間に気を失い、倒れた後に泡を吹き始めた。その末路を見て、ようやくミクの実力を理解したらしい周りの連中。


 その後は誰1人、ミクがギルドの建物を出るまで口を開かなかった。


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