0619・低ランクの仕事
分体2は夜の町へと繰り出したが、既に多くが寝静まっており起きている者は多くない。しかし何処でもそうだが、栄えている町があれば必ずスラムは存在する。もちろんスラムの全てが悪い訳では無い。ここでしか生きられない者も居るのだ。
とはいえミクにとってはどうでもいい話で、カルマが悪に傾いている者は容赦なく喰らう。当然持っている金銭も強奪していくのだが、スラムの住人なので大して持ってなどいない。それでも少しずつ集めながら、悪徳な者を根こそぎ喰っていく。
中には明らかに犯罪集団と思しき者達も居たので、その者達は全員喰らい貨幣だけを強奪。それを終えると再びスラムを動き回る。当たり前だが、スラムに居る者でまともな者などほぼ居ない。居たら驚きである。
そんな中、まともな者達は居たのだが、その者達は固まって生きていた。ミクが何かをするのも変なので、そこの者達は無視して他の者達を食い荒らす。終わったらさっさと本体空間へ戻り、後は貨幣を数えたら朝まで待つだけである。
ちなみにこの日の成果は、小銅貨114枚、中銅貨41枚、大銅貨65枚、小銀貨30枚、中銀貨13枚、大銀貨11枚だった。結構な金銭が集まったと思うが、子爵がくれた大銀貨5枚は多かったのだと分かる。
とはいえ娘の命の価値と考えたら、高過ぎるとは思えない。そういう値段である。
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次の日。朝起きて宿の店員に食事が出来る所を聞くと、2軒隣だというのでその店に行く。中に入ると普通の食堂だったので、中銅貨1枚の大麦粥を注文する。セリオとレティーも同じ物を頼み、中銅貨3枚を渡して席に座った。
適当に待っているとすぐに運ばれてきたので、早速食べ始める。多少の野菜と申し訳程度の肉。それでも大麦なので体に良いかと思いつつ、食事を終えたら狩人ギルドへ。朝食を食べている時にその話を聞いたのだ。
場所は町の人に聞いたら分かったので中に入ると、狩人とやらでごった返していた。ミクは気にせず受付まで行き登録を頼むと、小銀貨1枚を払って登録を完了させる。どこぞのラノベのように、登録する時に実力を見たりはしない。
そもそもアレもおかしな話なのである。何故なら登録したてのヤツの実力だけで上に上げるなど危険すぎるからだ。そいつが実力だけの犯罪者だったらどうするのだろうか? そんな事を考えると1からコツコツと努力させた方が良いだろう。駄目なら去るだろうし。
どうしても面倒なコツコツ部分を省略して俺Tueeeさせたいのであろう。読者もコツコツに付き合ってくれないと思ったのか、それとも書く方がいちいち面倒臭いと思ったのか。どのみち現実だと、コツコツと積み立てていく姿も評価の対象なのだ。
そんな事を考えつつ依頼の木札を見にいくと、鉄鉱山の魔物退治というのがあった。ただしランク3からとなっているので請けられない。1でも受けられる仕事はないかと思っていると、町中の掃除というのがあった。
暇だったミクはこれを請ける為に木札を受付へと持っていき、町中の掃除を請けた。どうも低ランク向けの仕事らしく背負い籠が支給されたので、それを手で持って外に出る。
散歩をしつつウロウロし、それぞれの路地を1つずつ丁寧に確認していくミク。ゴミが落ちていれば拾い、またゴミを探してうろつく。たまに籠を持っているのを見て笑われるが、ミク自身は全く気にしていない。
そんな中、目の前でゴミを捨てるヤツが現れた。そいつらがミクを嘲笑う前に、ミクはさっさと拾って先を進む。そいつらは笑う事が出来なくてイラッとしたのだろう、ミクに喧嘩を売ろうとしてきたので威圧を飛ばす。
多少の【身体強化】でしかなかったがビビッたらしく、走って逃げて行ったのでゴミ拾いを再開する。それにしても暇な3人組であった。わざわざゴミを拾っている者をバカにする暇があるなら狩りに行くべきであり、こんな所で遊んでいる場合ではなかろうに。
『でも、あんなの多いよねー。何で自分達より遥かに強い相手をバカにするのか理解できないよ。どうして他人の実力を把握しようとしないのかな?』
「出来たらあんな小さな奴等ではありませんよ。小さいからあんな事をするのです」
レティーの言う通りだなと思いつつ、ミクは町中のゴミを拾った。昼には戻ってこれたので報告すると、逃げて行った3人組が暴力を振るわれたとか訴えたらしい。
「そもそもコイツらは私がゴミ拾いをしている目の前でゴミを捨ててたんだけどね。そのうえ拾ってさっさと移動しようとしたら呼び止めたんで、ムカついて威圧したんだよ。こんな風に」
「ああ、分かった、分かった。だからその威圧を止めろ。相変わらず碌な事をせん奴等だな。今度下らん事をしたら降格だと言っておいた筈だろうが」
「ま、待ってくれよ、ギルマス! そんな新人のいう事を信じるなんておかしいだろう! オレ達はランク3なんだぞ!」
「ランクが幾つだろうと関係ねえ! てめえらは今まで何度迷惑掛けてきやがったと思ってやがる! さっさと登録証を出しやがれ!! てめえらのランクは今日から1だ!!」
「な、ふざけんじゃねえ!! 何でオレたぶぇっ!?」
ドガッ! と殴られた音がし、3人組の1人が飛ぶ。そこまで飛んだ訳でもないが、その事に怯えたのか残りの2人は自分から登録証を差し出す。受け取ったギルドマスターは受付に渡し、倒れているヤツを踏みつけて登録証を出すように命じる。
それでもゴネようとしたので腹を踏みつけると、余程苦しかったのか素直に出した。3人全員のランクは1に落とされ、外で狩りをする事も出来なくなったようだ。
「ランク1だと狩りが出来ないの?」
「全くできない訳じゃねえが、狩ってきてもギルドは買い取らねえのさ。ランク1からモンスターを狩りに行けると、死ぬヤツがあまりにも多くてな。それでランク3以降じゃねえと狩ってきても買い取らねえ仕組みになってる」
「へー……」
ミクは依頼達成の報酬である大銅貨1枚を受け取り、狩人ギルドを出て食堂へと移動する。朝と同じく中銅貨3枚を支払い大麦粥を食べたら、狩人ギルドへと戻って次の仕事を請ける。
次は昨日行った酒場の掃除だった。その木札を受付へと持っていき、依頼を請けたら昨日の酒場へ。箒と雑巾を渡されたので、まずは上の方から順番に埃を落としていく。箒で叩きながら落とし、下へと埃を落とす。
次に床へと落とした埃を外に掃き出し、最後は井戸水で濡らした雑巾で上から順番に拭いていく。実は【清潔】の魔法を使っているので随分と綺麗になっているのだが、誰も見ていないのでワザと使っていた。
掃除が終わり、井戸のある庭で夕食の仕込みをしていたマスターに報告。見てもらうと十分過ぎるとの事で、仕事は完了となった。
「いやー、ここまで店を綺麗にしてくれたヤツは初めてだぜ。あんがとよ!!」
挨拶して店を出たが、ゴブリンの表情が何となく分かってきたミク。狩人ギルドのギルマスもそうだが、とにかくゴブリンなのは変わらないので見分けが付き難い。
温和な顔とか厳めしい顔とか色々あるが、元々がゴブリンであるとここまで分かり辛いのかとも思うミク。人間の顔とは比べ物にならないほど特徴に乏しいのだ。
それでも少しずつ見分けがつくようになってきただけマシなのであろう。ここまでかと思うほどに髪や眉が無いと判別が難しいのだ。ゴブリン顔だし。
狩人ギルドに戻ったミクは報酬の大銅貨1枚を貰い、酒場へと移動。小銀貨1枚分の料理と酒を注文し、ゆっくりと2匹と食事を楽しむ。今日は女性歌手が歌っているらしいが、歌終わりにやっている事は同じだった。
この星もなかなか大変なようである。




