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0618・アルダギオン子爵




 領都の領主邸、その応接室のような所で子爵を待つミク達。ストレーナとメイドも居るが、セリオが居ないのでどうしたものかと困っている。とはいえ【念送】は通じているので、特に心配はしていない。なんだか厩舎っぽいところに居るそうだ。


 そのままソファーっぽい物に座って待っていると、ゴブリンが先導するゴブリンが現れた。やはり似たような顔にしか見えないものの、若干皺とかで見分けが付くような顔をしている。しかし違いが乏しい。全員ゴブリンらしく頭部に毛が無いからだろうか?。



 「待たせたな。ストレーナが襲われたそうだが、いったい何があったのだ? それと、そこの客人は?」


 「はい、お父様。何があったのかは、これからお話し致します」



 ストレーナの話はこうだった。ワルドー伯爵の土地は子爵領より広く、それなりに作物が採れるのだそうだ。その作物を買っているのが子爵領なのだが、最近売り渋りが多く、その交渉にストレーナが行っていたらしい。


 しかしその売り渋りこそがストレーナを誘き寄せる手段であり、軟禁されかかったものの何とか伯爵邸から脱出、急いで逃げた。しかし馬車で逃げたものの追っ手が何度か掛かり、その戦いで騎士が何人も亡くなる。


 それでも逃げて何とかもう少しという時に、タッソーが攻撃を受けて馬車は横転。そこで一斉に襲われた。その際に助けたのがミクだったようだ。



 「ワルドー伯爵は私を人質にとって攻め入るつもりだったようです。私を盾に使う事でまともには戦えまいと……」


 「何と非道な事を考えるのだ。ワルドー伯爵め、そこまでして我が領地の鉱山が欲しいか」


 「それよりもお父様。私が無事に脱出できた事、ワルドー伯爵も分かっている筈です。もしかしたら既に兵を集めて攻めて来ているかもしれません。すぐに対応をしなければ!」


 「分かっている。今まで穏便にしてきたと言っても、我が領の騎士を舐めているのだろう。今こそアルダギオンの力を見せ付ける時だ。心配せずとも叩き返してくれよう。して、そこのお客人には感謝しておる。ついては……来たか」



 応接室の扉がノックされ、入ってきたのはメイド服を来たゴブリンだった。雄と雌の区別すら付かないが、これは気にしたら負けなのかもしれない。服で判断は出来るだろうから、そちらで判断しよう。そう思うミク。



 「娘の命を救ってくれたお礼だ。受け取ってくれたまえ」



 お盆の上に銀色の硬貨が5枚乗っているので頂く。特に気にせず受け取ったが、周りからも反応は無かった。ミクとしては金額はどうでも良かったので、金額については気にしていない。この星やゴブルン王国の貨幣価値を知らないのだから、文句を言う事も出来ないのだ。


 ミクは受け取った後、セリオが何処に居るかと問うと厩舎だと言われたので、お盆を持ったメイドに案内してもらい応接室を出る。そのまま子爵邸を出て厩舎に向かうと、セリオは何故か厩舎の1つに入れられていた。


 何をやっているのかと思うも、本人的には楽しそうである。木で出られないようにしてあるので外そうかどうか迷っていると、歳をとって皺だらけのゴブリンが走ってきた。



 「貴様、ここは子爵様の厩舎だぞ! 誰に黙って入っとるんじゃ! さっさと出て行け!!」


 「何を勘違いしてるのか知らないけど、セリオを回収したら出て行くっての。いつも通り小さくなってよ、これけるの面倒臭いから」


 『はーい』



 セリオが小さくなって出てきたのでミクは掬い上げ、両手で持つと更に皺ゴブリンが怒鳴ってきた。



 「何を勝手に連れて行こうとしとるか泥棒が!! 今すぐそいつを置いて出て行け!!」


 「何を言ってんの、この爺は? セリオは私の仲間だっての。今回タッソーとかいうのが殺されたから、代わりにセリオがストレーナの馬車を牽いてやってただけだ。泥棒はそっちだよ」


 「何だと、貴様! もはや我慢ならん。ワシが今すぐ成敗してくれるわ!!」



 皺ゴブリンは腰に佩いていた小さな剣を抜こうとしたが、その瞬間にはミクが槍を突き付けていた。ハッキリ言って遅すぎるし相手にもならない。いったい何故こんなザコが喧嘩を売ってきたのか理解できないミク。



 「ったく。娘の命を救ってやったというのに、私の仲間を奪おうとは……これがアルダギオンとかいう貴族のやり口?」


 「違います! あの馬番の者が勘違いしただけで、アルダギオン子爵家は左様な事をする家ではありません!!」


 「ふーん。それが本当なら良いんだけどねえ。ま、私はこれで出てくよ。ここに居たら腹立たしいからさ」



 そう言ってミクはセリオをアイテムバッグの上に乗せて出ていく。そもそもこの厩舎に居なかった事ぐらい、働いているなら分かる筈だが、何故セリオを子爵家のものと考えたのか。不思議な皺ゴブリンである。


 子爵邸を出た後、ミクは領都の中を歩き宿を探す。町の人に聞くと、すぐに宿の場所は分かったので中へと入る。普通の宿という感じだが、ここは高級宿に分類されるそうだ。理由は他の宿より天井が高いからである。


 1泊小銀貨1枚と言われたが、ミクが持っているのがどの大きさなのか分からない。仕方なく報酬の銀貨を1枚出すと、2回り小さい銀貨が1枚に、何も刻印されていない更に小さい銀貨が4枚お釣りとして渡された。


 おそらくだが最初の星と貨幣価値は変わらないと思われる。ただし刻印は中と大にしか無いのだろう。小の貨幣は質が悪くなった物を潰す感じで使っているらしい。全ての貨幣に穴が開いているので、紐を通したり出来る様になっている。


 そういう風に持っておくみたいだが、ミクはアイテムバッグに入れておけば済む。とりあえず何となく貨幣価値が分かったので、店番の者に聞いて酒場へと足を運ぶ。情報収集はともかくとして、酒場の雰囲気を見ておきたい。


 聞いていた酒場へとやってくると、薄着のゴブリンがくるくる踊っていたりする酒場だった。「成る程、こっちのタイプか」と思ったミクは、カウンターに行き注文をする。色々と頼み、全部で小銀貨1枚を払うと早速食べ始める。


 酒場なので酒を頼んだものの、なんだか酸味を強く感じる酒だ。エールだとは思うのだが、あまりにもお粗末な飲み物な気がする。それでも頼んだ物は残さず食べて飲むのが怪物の流儀だ。勿体ないという思いが強いからだが。


 踊り子の踊りが終わると「わーわー」客達が言い、踊り子が木箱を持ってくると沢山のお金が入れられていく。その中で銀貨を持ち出した者が居たのでザワつく。いったい何だと思って見ていると、酒場のマスターが教えてくれる。こいつも見た目は唯のゴブリンだ。



 「あの小さな木箱の中に一番高い金額を入れたヤツがお持ちかえり出来るんだよ。ウチの酒場は基本そうなってる。まあ、健全な酒場も稀にあるらしいがね」


 「需要があるから供給がある。あれで儲けられるんだから、別にどうこう言う必要は無いんじゃない? 女の子達も儲からないと困るでしょ」


 「まあな。とはいえお前さんの種族が分からんが、女はとにかく嫌そうな顔をするんだよ。当たり前だが、売りたくて売ってる者なんて誰も居ねえのにな。同性の方が酷えもんさ」


 「それは男女変わらないんじゃない? ここは領都だからそこまで景気が悪いとは思えないけど、それでもああやって払うお金があるんだから良い事だよ」


 「まあな。狩人の奴等は命懸けだ。魔物を狩ってくれるのは良いが、死ぬと常連が減るんでな。勘弁してほしいトコだぜ」


 「それは言っても始まらないよ。ごちそうさま。さて、宿に戻るかな」



 そう言ってミクは酒場を後にした。多少の情報収集は出来たが、何といっても狩人とやらの情報が得られたのがありがたい。おそらく探索者と同じような職業だろう。ミクにとっては所属しやすいところだ。


 腕っ節さえあればお金を稼げるのだから、怪物にとってこれほど楽なものは無いのだ。宿に戻って部屋に行き、ベッドに狐の毛皮を敷いてレティーとセリオを寝かせる。


 ミクは分体2をムカデの姿で出し、窓からこの町のスラムへと向かわせるのだった。


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