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0616・夜の襲撃




 馬車を牽くセリオは速い。何といってもセリオにとっては馬車もゴブリンも軽いのだ。ドラゴンを体当たりで吹き飛ばせるセリオにとって5トンや10トンを牽く事ですら容易い。なので大した重さですら無いのだ。


 そんなセリオが引っ張る馬車は長閑な中を進んで行き、領境に一番近い村へと到着した。しかしそこで止まらず通り過ぎ、少しでも早く自らの領地への帰還を目指す。命を狙われている以上、ゆっくりなどしていられない。



 「それは良いけど食べ物とかあるの? 飲み物は? 無くても1日や2日は無事とはいえ、もし襲ってくる者が居たら、まともには戦えないよ?」


 「大丈夫です。父上からアイテムバッグをお借りしていますので、その中に多少の食べ物は入っております」


 「なら大丈夫だね。先を急ごうか」


 「それよりミク殿は大丈夫ですか? 先ほどから走っておられますが……」


 「私はこの程度で疲れるほど柔な鍛え方はしてないよ。そっちが大丈夫なら出来る限り距離を稼ごう。少しでも離れておいた方がいい」



 そう言ってミクは先を急がせる。馬車の中ですし詰めは令嬢にとって厳しいだろうが、今はそんな事を言っている場合ではない。それが分かっているので耐えているのだろう。ならばこのまま進むべきだ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 夕日が出てきたので馬車を道から少し外れた所に止めると、中から騎士達が出てくる。なるべく邪魔にならないように立っていたらしく、足が棒になりそうなほど疲れたようだ。今は外に出て足を曲げ伸ばししている。


 ミクは止めた馬車の向こう側、道からなるべく見えないようにして料理道具を取り出すと、早速料理を始める事にした。第1の星で手に入れた物も時間停止のアイテムバッグに入ったままであり、それなら普通に料理して食べられる状態のままだ。


 なのでミクは小麦の全粒粉に塩と水を混ぜて練っていき、適当に団子にしたら鍋の中に放り込んでいく。既に鍋には水とドラゴンの干し肉が入っており、周囲にはとてつもなく良い香りを撒き散らしている。


 そんな中、ジーッとそれを見ているパンを食べているゴブリン達。食料と言ってもパンだけで、それ以外には旅に必要な道具とかお金しか入っていなかったそうだ。それを聞いて仕方なくゴブリン達の分も作るミク。


 というより、食材を渡すから自分達で作れと言い渡していく。大きめの鍋などを渡すと、そのまま停止している。不思議に思って聞くと、魔法使いではないので魔法で火など出せないとの事。


 呆れてしまうが、仕方なく火はミクが作ってやった。その火を使ってメイドが干し肉を煮込んでいき、騎士達が慣れない手つきで全粒粉を捏ねている。ミクの作っている方は既に出来上がっていたので、深皿に入れてセリオとレティーに出す。



 「その角の生えた者とスライムは何でしょう?」


 「角の生えている方の名はセリオで、種族はドラゴンライノ。スライムの方の名前はレティーで、種族はマルチスライムね」


 『始めましてだね。僕はセリオ』


 「私はレティーです。宜しく」


 「「「「「!!!」」」」」



 ビックリしてまたもや固まったが、セリオもレティーも会話が出来ると聞くと驚きつつも理解したらしい。いちいち驚かなくちゃいけない事かな? と思いつつも顔には出さないミク。



 「凄いですね、まさか会話が出来るモンスターが居るとは思いませんでした。非常に珍しい種族なのでしょう」


 「まあね。それより野営はどうする? 誰かが起きてなきゃいけないし、騎士達で順繰りにするにしても最後が一番苦しいよ? 私がしても問題ないけど……」


 「流石にそこまでを頼る訳にもいきませぬ。残った我らが何とかします」


 「しかし3人じゃ次の日に差し支えるんじゃない? 次の日に碌に動けませんじゃどうにもならないよ」


 「ならば最後の1人は明日馬車内で寝かせましょう。それに馬車に乗っている間は座っていてもらいます。座るくらいなら出来ますので」


 「じゃあ、何で今日はしなかったの?」


 「我らは騎士だ。いつでも動けるようにしておかねばならん」


 「だったら足が疲れきるような真似はするべきじゃないでしょ。肝心な時に動けなかったらどうするの?」


 「「「………」」」


 「おっしゃる事は最もですね。とにかく領都にられるお父様の元に戻るまでは、逃げる事を最優先にします。いいですね?」


 「かしこまりました」 「「「ハッ!」」」



 セリフは綺麗に決まっているのだが、美味しそうに食べながらだと説得力が無いね。そう思いながらも、決まったのなら放っておく事にするミク。


 食事後はアイテムバッグの中から狐の毛皮を出し、その上にレティーとセリオを寝かせる。ミクはアイテムバッグを枕にして寝転がり、目を瞑っては周囲の監視を始めた。尚、本体は適当に漫画を読んでいる。


 ミクの便利なところは、記憶を消去すればまた初めての時のように楽しめる事だ。なので山ほどの漫画とラノベは本体にとって重要な暇潰しなのである。また一度読んだ後に感想を書いており、その分だけ様々な角度で読んでいる自分を知る事が出来る。


 そんな読み方もあったのかと、後で自分の感想を読んで驚く事もあるのだ。色々な楽しみがあって何よりであろう。ミクにとって最大の敵は暇であるのだから。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 夜中になり、騎士1人が起きているものの、うつらうつらとして寝そうになっている。ストレーナとメイドは馬車の中で寝ており、ミク達はその側だ。騎士も3人目であり、一番夜の遅い時間である。


 そんな中、夜闇に紛れて動く気配が10。ミク達の方に向けて近付いてくる。焚き火などはしておらず、明かりなどは付けていない。しかしながらその集団は馬車を見付けたらしく、遠くに留まっているようだ。おそらく相談しているのだろう。


 その相談が終わったのか、気配が動き出したのでミクは起き上がる。うつらうつらとしていた騎士が慌てて起き上がったミクに反応するも、ボーッとしていて役に立ちそうもない。ミクはそっと離れ、襲撃者に近付いていく。


 ある程度まで近付くと投げナイフを投げて1人を殺害。その瞬間、暗闇と小さな音の戦いは始まった。


 黒ずくめのゴブリンが近付いてきてナイフを突き出してくるも、ミクは回避しながら首を大型ナイフで突き刺す。左から襲ってくるもののかわし、ククリナイフで首を切り裂く。


 襲撃者が倒れる音がするが、それ以外には殆ど音がしないままの戦いが続く。ミクは攻撃を避けると一撃を返し、確実に襲撃者を仕留めている。その為、襲撃者も迂闊に近付かなくなった。


 距離をとってミクと相対し、迂闊に動かず隙を探す。しかしそれに付き合ってやる必要が無いミクは、一気に突っ込んで首を突き刺し、頚動脈を切り裂く。


 そうして殺していき最後の1人となると、盗賊ゴブリンのリーダーのように自殺しようとした為、慌てて止める。再び両手両足を折った事で、初めて絶叫を上げた。慌てて騎士達が動く様子が見えるが無視し、ミクはリーダーだけを連れて寝床へと戻る。



 「大きな声が聞こえたから慌てて起きたが、そいつが襲撃してきたのか?」


 「いや、全部で10名だったし、そいつらの死体は向こう。夜中に処理すると明かりに寄ってくるかもしれない、だから置いてきた。コイツの手足は折ってあるから近くに捨てておく。拷問は朝になってからね」


 「そうだな。今やれば御嬢様が起きてしまう。そういうのは朝でいい」


 「コイツの服を切って口枷にしておく。五月蝿くされても困るからさ」



 既に両手両足を綺麗に折ってあるので動く事は出来ない。ミクは黒ずくめの服を切り裂き適当に口枷にすると、それを付けて後は寝転ぶ。再び監視をしつつ、適当に朝まで過ごすのであった。


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