0615・次なる星は?
ミクの分体は根源の神の力で新たな星へと降り立った。そこは森の中であり、むわっとした木々の匂いが押し寄せてくる。そんな場所に降り立ったミクは、早速【空間魔法】を使用する事にした。
それは【空視】と呼ばれる魔法で、見たい場所を見る魔法だ。自分から離れれば離れるほど魔力を消費し制御が難しくなる魔法であり、10キロや20キロ先まで認識出来るのはミクぐらいであろう。
人間種ではまともに使用出来ない距離であり、もし同じ事をすれば脳が壊れる事は確実だ。そんな魔法を使ってミクが確認しているのは、森がどこまで続いているかである。
とある方向に10キロほど行くと道があった為、ミクはそちらへと走って行く事にした。素早くかつ音も殆ど立てずに移動し、道へと出る時には普通に歩いて出る。誰が見ているか分からないので、見られても問題無いように装う。
そうやって道に出たものの、どっちに行こうか悩んだミクは、適当に方角を決めて歩きだした。【空視】で確認しても良かったのだが、何も知らない状態である以上はどっちに行っても変わらない。そう考えたのだ。
どのみち食べなければ死ぬ人間種でもなければ、食べ物も飲み物も入ったままである。まあ、ペットボトルの飲み物やおにぎりやお菓子など、あの星の物は全て消去されてしまったので無いが。
(この星に存在しない化学製品などを持ち込む事は罷りならんって言われたからね。買い溜めた本に関しては本体空間に置いて出さないならセーフって言われたけどさ)
漫画やラノベなどが無くならなくて本当に良かったと安堵していると、ミクの聴覚に悲鳴が聞こえてきた。これはもしかしてテンプレなのかと思いつつ、どうしようか悩みながらも走って行く。
どうするかは現場についてから決めようなどと考えているが、その移動の足は速い。テンプレ展開の可能性に、ちょっとテンションが上がるミクであった。
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馬車が道を外れて横倒しになっており、襲っている者と襲われている者が見える。しかしミクにはどちらもゴブリンにしか見えない。この星の言葉はブチ込まれたものの、ゴブリン語だとは聞いていなかったのだ。
この星にも共通言語のようなものがあるらしいので、それをブチ込まれたのだが……。ミクの内心は微妙な感じにテンションが下がっていた。見た目はどちらもゴブリンなのだから、テンションが上がらないのも当然であろう。
今までは殺したり適当に喰っていた連中である。それが言葉を使っており、悲鳴を上げているのだ。それでも周りの連中を何とかするかと、ミクは声を掛ける事にした。
「おーい! 悲鳴が聞こえたから来たけど、助けは要るー?」
「あ、た、助けて! 助けて下さい!!」
ドレスを着たゴブリンが助けを求めるのを見て、微妙な気分になるのを堪えつつ武器を出して構える。騎士っぽく鎧を着たゴブリンが3人と、薄汚れた服のゴブリンが12人居る。
「チッ! お前ら5人でさっさと始末してこい。こっちもすぐに片付ける」
「「「「「ハッ!」」」」」
どう考えても軍隊の返事であり、薄汚れているが統率された動きである以上、こいつらは唯の盗賊じゃない。それが分かったミクは素早く動き、右手に持ったウォーハンマーを振り下ろす。
ドゴンッ!! という音と共に盗賊ゴブリンの体が潰れ、その一撃であっさりと死亡した。その音に呆然とするゴブリン一同。それに対してミクは大きな声を上げる。
「さっさと動け騎士ども! 今がチャンスだろうが!!」
「「「!!!」」」
そのミクの言葉を受けて素早く動き出す騎士3名。慌てた盗賊は態勢を乱しており、その隙を突かれて殺されていく。ミクは盗賊ゴブリンの革防具などものともせず、ウォーハンマーで殺害。
そうしていると、残りは盗賊ゴブリンのリーダーだけとなった。
「そんなバカな! 精鋭を連れて来たのだぞ! 先ほどまで我らの有利に事を進めていたというのに……。貴様の所為で、よくも!!」
「そんな事は知らないね。それよりこいつはどうするの? 必要な情報を聞き出すなら拷問一択なんだけど、それとも殺す?」
「えっと……できれば情報を、お願いします。お父様に御報告しなければなりませんので」
「そう。なら捕まえて拷問だね」
「ふざけるな! 貴様ら如きに捕まってたまるか!!」
盗賊ゴブリンのリーダーは首を切ろうとしたが、それより速くミクは動き、腕を掴んで自殺できないようにした。その後は両手両足を圧し折り、1つずつ聞いていく。
「お前が彼女達を襲ったのは何故だ? 話さんと更に酷い目に遭うぞ?」
「ぐぁぁぁぁぁっ!!! だ、誰が言うかぁっ!!!」
「ならば追加だ。何処まで耐えられるか楽しみだな」
周りでドレスゴブリンやメイドゴブリンに騎士ゴブリンの顔が引き攣っているが、ミクは全く気にしていない。それどころか更に苛烈に拷問を加えていく。最後には殺してくれと言っていたが、ミクはそれもせずに聞きだした。
全てを聞いた後はその場に放置し、ミクはドレスゴブリンに確認する。
「流石にさっきのは事実だと思うんだけど、どう? まだまだ拷問は出来るけど、これ以上したところで意味は無さそうだよ」
「え、ええ……その、私もそう思います。というより、ここまでする必要はあったのでしょうか?」
「やらなきゃ駄目に決まってるじゃん。襲われたんだよ? 襲ってきた相手に手心を加えるなんて絶対にしちゃいけない。そんな事をするから相手がつけ上がるんだから、逆らわないように叩き潰すのが基本だよ」
「そ、そうなんですね。分かりました。それより助けていただき感謝します。私の名はストレーナ・アルダギオンと申します」
「私はミク。まあ、色々と旅をしてる感じかな? 見聞を深めるというか、面白そうな事を探してるというか……」
「御嬢様! 馬車が横倒しなうえ、タッソーが殺されてしまっています。これでは牽く事もできません」
「馬車はともかくタッソーが殺されているのはマズいですね。私達がワルドー伯爵の手の者に襲われている以上、まだ他にも襲ってくる者は居るでしょう。唯でさえ、まだワルドー伯爵の領地内なのです」
「しかし御嬢様、アルダギオン子爵領はすぐそこです。後は村を1つ越えれば御領地に入れますので、ここは走ってでも急ぐべきかと」
「馬車を元に戻すから点検してくれる?」
そう言ってミクは横倒しになっている馬車を持ち上げて戻し、車輪や車軸を点検していく。その姿に呆然とするドレスゴブリンとメイドゴブリン達に更に声を掛けるミク。
「馬車の中を点検しろ! 急ぐんでしょうが!!」
「「は、はい!!」」
慌てて馬車の中に入り、中を点検するストレーナ。メイドも中に入って調べているが、どうやら横転したものの走るのに問題は無いようだ。運が良かったらしい。更に道の左右が下り坂などではなく、平坦だったのも幸いした。
ミクはタッソーとかいうトカゲにつけてあった革製の装具を外し、セリオに大きくなってもらい装具を装着した。これでセリオが引っ張れるだろう。
「その馬車には何人乗れる?」
「えっと、詰めれば6人ほど……」
「じゃあ騎士も全員入れ。セリオならお前達全員と馬車ぐらい簡単に牽ける。今は急いでるんでしょ? だったら余計な口を挟むな」
「分かりました。騎士達も早く乗りなさい。急いでこの場を離れます」
「「「ハッ!」」」
こうしてミクは面倒なお荷物を送る為、隣の領地を目指す事になった。




