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0613・2つの星と病原菌と神




 フェイリーフが惑星ガイアに来て数ヶ月経った。今は夏であり、また暑い季節がやって来ている。ミクがこの星に来たのも丁度この暑い季節であった。とはいえミクは惑星ガイアにはらず、ゴールダームに居る。


 探索者ギルドに来ており、そこでラーディオンと話していた。何を話しているかといえば、バラ撒いた病原菌がどのような結果をもたらしたかについてだ。



 「まあ、エゲつない結果にはなっとるな。ワシも妻も娘も問題ないが、悪徳な貴族や商人にスラムの連中も死にまくっとるぞ。まったくもって容赦がねえ。ゴールダームでも死人が大量だが、他の国でも酷いらしい。とはいえ死んだのは悪徳なヤツばっかりみたいだがな」


 「そういうヤツしか死なない病気なんだから良いじゃない。とりあえずこっちでも悪人が減ったならいいよ。神どもが解決の為にバラ撒くのを命じたんだしね。悪徳なヤツが多いんだから仕方ない」


 「まあな。言いたい事はよく分かる。各地の闇ギルドも病気の所為で壊滅してるそうだし、ある意味で平和になってると思うぞ。何をもって平和とするかは別だが、特にカムラは被害が大きいらしい」


 「あそこは裏で色々やる奴が多すぎるんじゃないかな? それも含めて減ったなら良いと思うよ。グランセンドがどうなったかは分かる?」


 「詳しい情報は流れて来ねえが、眉唾な話としては4神将のうちの2人が死んだってぇ噂はあるな。ちなみにゴールダームに来た槍っ娘じゃねえみたいだ。残りの2人じゃねえか? 1人はお前さんが殺したんだし」


 「剣のヤツは私が殺したけど……残りの2人が病で死んだなら、こっちの星も戦争とか言ってられなくなりそうだね。向こうの星も恐ろしい早さで人間が減ってるしさ。案外2つの星で協力してやっていけって事なのかも」


 「ワシらとガイアの連中でって事か? まあ、向こうには凄い技術が山ほどあるが、こっちから出せるもんなんてねえがな? 神様の考える事はよく分からん」


 「私だって分からないよ。神に創られたとはいえ、必要な事しか教えられないしさ。他は自分で予想するしかないんだよ」


 「成る程なぁ、お前さんも大変だ。ある意味で神様に振り回されてるって言えるのか。ま、それはともかく、どこの国も死にまくっとるんで、戦争だとか言ってられん状況だ。死体を片付けるので、てんやわんやといったところだしな」


 「分かった。こっちの状況が聞ければ十分だよ。じゃ、そろそろ向こうに戻る」


 「おお。また何かあったら聞きに来い。出来れば今回と同じく酒を持ってきてくれると助かる」



 ラーディオンの執務室を出たミクは帰りの道を歩いていく。ゴールダームの人口も随分と減ったみたいだが、どうせこの国には外から人間種が流入する。そう思って歩いていてると、突然首を切られた。


 その瞬間、ミクの首を切り落とした者を喰らい、首をくっ付けて何事も無く歩くミク。灰色の人型を喰らったが、先ほどの者はいったい何だったのだろうか? ミクは自らの肉に流入した神力を不思議に思いつつ思考する。


 すると横の路地から白髪の老人が現れた。



 「……何も無し、か。そなたを襲った者は<呪いを司る神>であったのだが、彼の者が呪いを用いても、お前をどうにかする事は叶わぬとは。真にもって化け物だな」


 「貴様らは何がしたいのだ? 私を滅ぼす事は不可能だと言っただろうが。私はお前達如きに負けるほど弱く創られてはいない。何度言えば理解する? それほどに愚かなのか?」


 「………彼の者が怒って襲ったのは、そなたがこの星を混乱に陥れたからだ」


 「あの病原菌であれば、根源の神よりバラ撒けと命があったから撒いている。命でなければ撒いたりなどしない。私としては喰う方が良いのだからな。喰わねば私の本体の血肉が増えぬ。ならば喰う方が良いに決まっているだろう」


 「またか。頂点の神々はいったい何をお考えなのだ」


 「そんな事は知らん。私とて必要な事以外は何も教えられていないのだからな。聞きたければ自分達で聞け。ではな、神の権能は貰い受けていく」


 「………」



 ミクは星間魔法陣から惑星ガイアへと移動した。あの星の創造神は随分とミクに対して憎しみを持っていたようだが、根源の神の命だと聞き、諦めていたようでもある。自分達が何をしても無駄なのだから、その気持ちも分かるミク。


 とはいえミクに八つ当たりをされても困るのだ。そんな事をされてもミクは命じられただけであり、その命じた張本人? 張本神? に言ってくれと言うだけである。


 ミクは自らが喰った<呪いを司る神>とやらの神力を調べつつ、悪と善の神の権能も少々強化されたのを理解した。どうやら悪意と善意の増減と、悪人や善人に書き換えるだけでなく、悪意と善意に関わる知識も奪えるようになったらしい。


 正しくは悪意と善意の大元や、それに付随する知識と記憶を奪うというものだ。これからはレティーに脳を喰わせなくても分かるようになったと言える。自分で出来る事が増えたのは良い事だろう。


 呪いの力に関しては、どうやら相手に呪いを与える事ぐらいしか出来ないようだ。ただしその呪いの内容が多岐に渡るので、相当使い勝手は良いと思われる。これも善と悪の神の神力と混ざり強化されたのだろう。


 惑星ガイアに戻ったミクは、そのまま足早に千代田ダンジョンを出て歩いて移動。途中でタクシーをつかまえて葉月家の本邸へと向かう。ガイアでも人は減っており、日本もそれなりには人口が減っている。


 とはいえ日本人でもないのに日本名を名乗ったり、日本に入り込んでいた不法滞在の外国人などがバタバタ死んでいるからだ。他にも日本人と結婚して帰化した者などであり、特に悪人は確定で死んでいる。


 ハルカが言うには、「日本人と結婚して、いったい何をしていたんだろうねえ?」との事だ。問題のない外国人は生き残っているらしいので、やはり厳密には悪徳の者を殺しているのだろう。あくまで間引きだと思ったのはミクであり、神は何も言っていない。


 葉月家の本邸に戻ると、フェイリーフがスライムを増やしていた。特に求められているのは<クリーナースライム>で、やはり厩舎の掃除や、下水処理場の掃除に活躍しているのが理由となる。


 鶏や豚に牛。人間が食べる肉を育てている人も多く、そんな人達からは渇望されているそうだ。何たって排泄物は毎日出るが、その掃除には誰もが苦労させられている。それを溶かして処理してくれるだけでなく、維持費用などは殆ど掛からない。


 そもそも<クリーナースライム>にとってのエサは糞であり、後は水分が必要なだけである。この辺りは酪農家に実験の協力を依頼し、実際に実験の結果も出ているし動画も公開した。その結果の引く手数多である。


 特に追加費用などが掛からず、ペットとして飼えるうえに寿命が無い。大切にすれば親子何代にも渡って飼い続ける事が可能なのだ。更に鳥インフルエンザなどの家畜の病原菌すら溶かして食べてしまうのがスライムであり、いつも清潔に保ってくれる。


 ここまでしてくれるスライムを畜産業の者が望まない筈が無い。とはいえスライムを増やすのもそれなりに時間が掛かるし、廃棄するのも考えなければいけない事である。スライムは分裂するが、増えすぎては困るのだ。



 「とはいえ、増えたところで何かに食われて死んじゃうだろうけどね。スライムが幾ら<可能性の宝庫>でも、ミクの血肉を与えられない限り強くなんてなれないし」


 「それは確かにそうだね。ならこちらの星でも淘汰されるから、放っておいても大丈夫かな? 一応管理した方が良いだろうけど」


 「そうね。法律で縛られてるらしいし、一応その方が良いと思うわ。こちらの言葉も覚えたけれど、まさか【身体強化】にあんな裏技があったなんて知らなかったわよ」


 「ああ、脳の活性化と強化? 色々とやってたら気付く者が居てもおかしくないけどね。何で向こうの星では気付かなかったんだろう? 不思議だとは思うけど」


 「そこまでハッキリと分かる者が居なかったのでしょうね。脳の記憶力とか曖昧だし、そもそも脳の事すら全然分かってなかったもの」


 「ああ、知識が無いからか。それはしょうがないね」



 知識の有無は大きいだろう。そう考えれば、脳の強化に思い至らなくても仕方ない。そう思うミクであった。


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