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0610・フェイリーフ達と食事会




 挨拶は終わったので食事になったのだが、<竜の牙>もラーディオンもフェイリーフも驚いていた。それは当然でもあるのだが、選りすぐりの食材を使って料理人が作っているのだから不味い筈が無い。


 更に言えば、わざわざ手間隙てまひまを掛けて美味しい物を作り出しているのだ。そこまでしている食材が向こうの星には無い。未だ数を作る事が優先されていて、味など二の次になっているのだから、驚くのは当たり前とも言える。


 <鮮烈の色>やリュウレン。もっと言うならば、アレッサ達ですら驚いたのだ。彼等が驚くのも当然であり、向こうの星では王侯貴族すら食した事の無い物である。それを言うと、ラーディオンは満面の笑みに表情を変えた。



 「貴族どもが食った事の無い物を食ってるなんてなぁ。かかかかか、良い気分だぜ。散々ワシら平民の前でアレが美味いコレが美味いとかホザきやがったんだ。そんな連中より美味いもん食ってるとなったら、笑いの1つも出るってもんよ」


 「貴族どもはねえ……ピンキリなんだよ。本当にクズの見本みたいなのも居れば、まともな貴族っていうのも稀には居る。まあ、そういう稀でまともな貴族は情報が出回るんだけどね。依頼を請けるなら、その貴族だけにしておけってさ」


 「そうだな。それ以外の貴族からはまず請けねえよ。たまに知らねえ奴等が請けて酷い目に遭ってやがるけど、流石に調べないのが悪いんで何とも言えねえ。周りも請けるなって教えるんだけどなぁ……」


 「まあ、クズどもの話は止めようよ。折角の美味しい料理の前でする事じゃないしさ。それよりこっちってダンジョンあるんでしょ? オレ達が攻略してもいいのかな? せっかくだから、こっちでちょっと過ごしたいよね」


 「ダンジョン、こっち違う。軽く見る、危険」


 「確かにバッズの言う通りだな。こっちのダンジョンの事はあんまり分かってねえし、自由にウロウロすんのも褒められたもんじゃねえか。ギルマスだって戻らなきゃなんねえし」


 「そうだな。ワシらで役に立てる事があるなら色々とするんだが、今のところはこっちで勝手な事をする訳にもいかん。元の星とこっちの星では勝手が違う。とはいえ、それに関しては仕方がないしな」


 「しかし、ゴールダームに他の星に行く魔法陣があるって知られると、またぞろ揉め事が起きそうな気がするけどね。その辺りはどうする気なんだろ?」


 「第6エリアを突破しなきゃ使えんのだから、文句を言っても意味があるまい。それだけでも相当の難易度だ。仮に攻めてこようとしても、その情報で諦めるだろう。どれだけ難しいか知らない奴等なら攻めてくる可能性はあるが……」


 「そういう馬鹿はどこにでも居るんだから、警戒しておくぐらいで丁度良いんじゃない? ま、仮に知られたとしても、本人が第6エリアを突破しなきゃ駄目だからね。こっちに来るのは難しいよ」


 「阻むの、最高難易度のダンジョン。権威、権力、関係ない」


 「バッズの言う通りだな。本当にこっちの星に来れるのは、一部の実力者かそれについていったヤツだけだ。ゴールダームのダンジョンはついていくだけでも大変だからな。貴族どもにバレたとしても、ゴチャゴチャ言ってくる事は無いだろ」


 「それ以前に、こっちの星には悪徳なヤツを殺す病気が蔓延してるから気をつけた方がいいよ? 私が神に命じられてバラ撒いたからね」


 「「「「「「は?」」」」」」



 唐突に喋ったミクの一言に驚いた面々は、その後の話を聞いて顔が真っ青になった。悪徳な者を必ず殺す病気。普通に生きているなら良いが、そうでなければ死してしまう病気を神が作り出し、それを撒いたのは化け物である。



 「いや、お前さんが撒いたって言う以上は、撒いたんだろうけどよ。その事実を聞かされてワシらは何と答えればいいんだ? 今も喋りながら、頭の中が混乱してるんだが……」


 「混乱なんてする必要はないよ。何故なら向こうに戻った際に病原菌をバラ撒いておいたし。つまりそれで死んでないって事は、<竜の牙>やラーディオンにフェイリーフは悪徳じゃないって事だよ」


 「それはありがたいんだが、撒いたのかよ……」


 「神の命だから諦めてほしいね。私が勝手に撒いたんじゃなく、バラ撒いておけって命じられたんだからさ。私が喰うのもいいけど、時間が掛かるからって事らしいよ。元の病原菌が改造するのに適してたみたい」


 「何かそう聞くと片手間で作ったみたいに聞こえるねえ……。とはいえ神様の御力なんだし、きっと片手間で作ったんだろうけどさ」


 「古い時代から病気というのは恐れられてたんだからさ、それが今度は悪徳を殺す病に変わっただけだよ。むしろ善人とか普通の人は生きられるんだから、感謝するべき病気だとは思うけどね。ラーディオンの言うクソ貴族はバタバタ死ぬよ」


 「ハッハッハッハッハッ! そりゃいい! 散々ワシらに迷惑掛けてくれたんだ、地獄に落ちろ」


 「貴族っつうだけで、こっちは手出しなんて無理だからなぁ。何かやったら家族にまで迷惑が掛かるのに、向こうは好き勝手をしやがるんだ。やってらんなかったけど、ようやく連中が居なくなるのかー」


 「感無量って感じよね。やっと愚かな貴族が居なくなるのかと思うと、これから先ずいぶんと楽になるわ。国の事はどうなのか分からないけどさ」


 「国を動かしている連中もポコポコ死にそうだが、それに関しちゃ仕方ねえだろ。周囲の国が騒ぐかもしれねえが、結果としたら他の国にも広がる筈だしな。案外エルフィンのエルフは全滅するかもしれねえ」


 「あいつらマジで他種族を見下しまくってたからねえ。あれも悪徳だろうし、そう考えるとエルフィンは完全に滅ぶと思う。まあ、滅んでも自業自得だけど……」


 「私? 申し訳ないけど、私は興味無しよ。だって生まれも育ちもゴールダームだし、そこで250年も生きてきたもの。そのうえ面倒な事になるのが嫌だったから、エルフィン樹王国には一度も行った事が無いしね」


 「まあ、ワシらも地元にエルフィンの王族の血筋が居たなんて知らなかったしな。それぐらい隠れて生きてたなら興味も無しか。そもそもゴールダームに居るエルフはまともだからなぁ。ブラウンエルフもそうだが」


 「それはね。囚われてるのは世間知らずか、それとも元々からの差別主義者かよ。そういう風に子供の頃から洗脳されてるから、どうにもならないのよね。私も呆れたし、うんざりしたもの」


 「エルフィンにもまとまなエルフは居るけど、外でそんな事を言うと集団から弾かれて生きていけなくなるって聞いた事があるわ。信じられないって思ったけど、たぶん事実なんだと思う」


 「異常者の中に居ると、正常な者が異常とされてしまうのさ。悲しい話だけど、正常な者は異常な集団から出るしかないんだよね。たとえそれが生まれ故郷でも」


 「向こうの星は向こうの星で大変だねえ。話には聞いていたけど、親が子供を洗脳し、その孫もまた洗脳される。負の連鎖がどこまでも止まらず、断ち切るには一度ゼロにしちまうしかないんだろうさ」


 「バラ撒いた病原菌がゼロにしてくれるんじゃない? 神謹製の悪徳抹殺兵器みたいなもんだし」


 「その事実が一番恐ろしいというか、神様も本当に容赦が無いよ。とはいえ仕方がないと言えば、仕方がないんだろうけどね。悪徳なのが悪いと言われれば、返す言葉が無い」



 誰しもそうだが、己の身に降りかかるまでは理解しないものである。2つの星にバラ撒かれた病原菌はどのような結末をもたらすのか。ハルカは色々と考えているようだが、ミクはその結末に興味は無かった。


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