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0608・スライム育成師




 ドアを開けると「カラコロ」と音が鳴り、中に入ると前に会った事のある魔女風の出で立ちの女性が居た。相変わらずのようで見た目も変わっていないようだ。



 「いらっしゃーい。……前に来た事があるかしら? 見た事があるような気がするんだけど」


 「よく覚えてるね、1度しか来ていない客の事をさ。それはともかく、そっちに魅力的な話を持って来たんだけど、どう?」


 「貴族のお抱えとかそういうの? 残念だけれど、そういう気は一切無いの。だからこそ私は自由にスライムの研究が出来るんだしね」


 「むしろそれで良いんだけどね。どんどんと研究してもらって構わないよ、こっちの仕事がしてもらえるならさ。ところで異なる星と繋がったのは知ってる?」


 「?」


 「やっぱり知らないか。実はダンジョンに進む魔法陣の近くに新たな魔法陣が出来たんだけど、その魔法陣は異なる星に行く為の魔法陣だったんだよ。そして向こうには魔物が居ない」


 「えっ? ……魔物が居ない?」


 「そう、魔物が居ない。これは明確な事実。向こうにもダンジョンはあるんだけど、天然の魔物は存在しない。そんな向こうの星で、1つの魔物を連れて来て有効活用したいという声が挙がった」


 「それがスライムってわけ? 貴女の話がタチの悪い妄想でなければ興味があるわね。とはいえ異なる星ってどんな所か知らないけれど、地獄とかいうのかしら?」



 全く信じていないが、それは織り込み済みなので、ミクはハコを取り出して動画を見せていく。最初はよく分かっていなかったが、板から動く絵と音声が聞こえるので驚いている。



 「こ、これ……!」


 「そう。これで記録すると、何度でも記録した場面が見れるというもの。向こうの星はこちらと違って技術が相当に発達している。しかし逆に魔法は最近まで使えなかったし、スキルも無かったと言われてる。技術と魔法がアンバランスな星」


 「へー……」


 「そして天然の魔物が居ないし、ダンジョンの魔物はこちらと同じく外に出せない。でも私が連れてるスライムやライノは移動出来る。つまり、こちらの星から天然の魔物を連れて行く事は可能なの」


 「ふんふん。だから私とスライムを連れて行きたいという事ね。それ自体は別に構わないと言えば構わないわ。流石にそんな物を見せられたら信じるしかないし、この店は弟子だけでも問題は無いから」


 「弟子が居たの? じゃあ、それも含めて連れて行くかどうか判断して。後、連れて行くスライムは厳選してほしい。あまり大量に連れて行けないし。まあ、最悪は反則を使うんだけど」


 「??? ……まあ、よく分からないけど、弟子は置いて行く事になるわね。あの子は獣人だし、元気にやっていくでしょ」


 「という言い方をするって事は獣人じゃないんだね」


 「ああ、私はエルフよ。髪で耳を目立たなくしているけれど。樹王国が下らない事をしてくれた所為で、若干肩身が狭い思いをしたわ。それも半年前ぐらいには終わったから、今はのんびりだったの」


 「とりあえず、探索者登録はしてる? してるならどこまで進んだ?」


 「探索者登録はしてるわよ、スライムの餌を獲りに行かなきゃいけないし。ちなみに攻略は第4エリアを攻略済みよ。流石に第5エリアは昔組んでたチームでも突破出来なかったわ」


 「昔? 貴女いったい幾つ? っと名前を聞いてなかったね。私はミク」


 「私は……まあ、無くなったからいいか。私はフェイリーフ・アドムニス・エルフィン。一応その名前は名乗っていい事になってる女よ。もう250に近いお婆ちゃんね。まさかエルフィンの王族が全員死ぬとは思ってなかったけど、私を担ぐ事は無理よ」


 「そもそもそんな気はないし、エルフィンの王族の大半を殺したのは私だよ。いや、全部だったかな?」


 「………どういう事かしら?」


 「こういう事だよ」



 ミクは首から上を怪物にし、何故エルフィンの王族を食い荒らしたかを説明した。



 「冗談でしょ、まさか【死霊術】を悪用するような一族だったなんて……。しかもノーライフキングになるって何よ。最低に過ぎる。どれほど生命を冒涜ぼうとくすれば気がすむのかしら。呆れて物も言いたく無くなるわ」


 「3代目の王から狂ってたんだから、どうにもならないね。それはともかく向こうの星に行く事になるんだけど、それはいい?」


 「問題無いわ。というか、貴女が化け物すぎて全て信じるしかないじゃないの。他に道は無いでしょう?」


 「じゃあ。今の内にコレ飲んでくれる?」


 「なにコレ?」


 「若返りの薬。実は向こうのダンジョンでは稀に手に入る物なの。流石に250じゃね、いつ死ぬか分からないしさ。だからそれ飲んで20歳まで若返ってよ」


 「簡単に言うけれど、コレとんでもない物じゃない。よくもまあ、こんな物をポンと渡すわね?」


 「ちょっと色々と事情があってね。それは表に出せない物なのよ。それに私には寿命が無いし死ぬ事も無い。だからそもそも必要ない物でしかないの」


 「流石は神様に創られたと言うだけあるわね。まさか寿命が無いなんて思わなかったわ。…………マズッ! こんなにマズイの? 若返り薬って」


 「そうなんじゃない? 後は一晩寝て起きたら若返ってるらしいけど、とりあえず今日の内に第5エリアを攻略しておこうか。明日は<竜の牙>と第6エリアを攻略して、明後日には向こうの星に行くよ」


 「随分と強引で急ねえ。まあ、何かしら理由があるのでしょうけれど」


 「向こうの星に行く星間魔法陣は、第6エリア攻略者しか使えないのよ。どちらか一方でも使える様になれば往復出来るんだけどね」


 「第6エリアの攻略か……。流石に私には無理なんだけど、いったいどうする気?」


 「どうする気も何も、私が連れて行けばあっさり攻略なんて出来るよ。そもそも第10エリアまで完全に攻略してるし」


 「………」



 フェイリーフは唖然としているが、ミクにとっては然して難しい事でもない。だからこそ驚く事でもないのだが、普通の者では違うのだろう。驚いた後に顔を左右に振って諦めたフェイリーフは店の奥へと入り、ある程度の時間が経った後で獣人の女の子を連れて戻ってきた。



 「とりあえず留守はこの子に任せるから、顔見せをしておこうと思ってね。それじゃ、私はスライムを連れて行くから、貴女は留守番をお願いね」


 「分かりました!」



 元気よく獣人の子が答えたので、ミクとフェイリーフは店を出る。まずは第5エリアを攻略しておかねば話にならない。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 次の日。昨日は第5エリアを攻略した後、<竜の牙>に話して了承をとり、今日はフェイリーフと<竜の牙>を連れて第6エリアの攻略をする。ミクがフェイリーフとスライムを連れてダンジョン前へと行くと、何故か<竜の牙>とラーディオンが居た。



 「何でワシが居るのかってこったろうが、それなりにギルドの偉い奴が向こうに渡れねえと証明しようったって無理なんだよ。立場のある者が自分の目や耳で確かめなきゃいけねえのさ」


 「で、本音は?」


 「ズルいじゃねえか、お前さんらばっかり。向こうには美味い飯も酒もあんだろ? そりゃワシだって行きてえってもんよ」


 「そんな事だろうと思ったよ」



 相変わらず非常に分かりやすい人物というか、分かりやすい動機で動く男である。それはともかくとして今日はダンジョン攻略だ。ミクは早速第6エリアに進入し、フェイリーフを背負うと走り出す。


 ミクが走り出したからだろう、後ろからついてくる<竜の牙>もラーディオンも走ってついていく。今日はなるべく早く攻略したい。そう思い、ミク達はダンジョンの中を進んで行った。


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