0602・大陸にて その2
毎日毎日喰らいながら病気を撒き散らし、日によって居場所を変えている為、未だに拘束も何もされていない分体2。鳥になって飛び、一気に移動しているなど誰も想像できないのだろう。随分と混乱してきている。
ちなみに病気の所為で数も減っている為、それも混乱に拍車を掛けている。その病気自体は、この国の罹患した連中が世界各国にバラ撒いてくれたので猛批判を受けているが、この国の奴等は面の皮が厚いので気にしていないらしい。
だからこそ嫌われているのだが、嫌われようが大陸の国に戻ってくれば済むとでも考えているのだろう。無法地帯に慣れた者は、唯の無法者でしかないという事である。
あれから十字架の宗教の連中から襲撃は受けていないが、1度あった以上は期待しているミク。とはいえ今は飛び回っている為、分体2を捕捉するのは困難であり、それ故に襲撃が無い事は不思議ではない。
そんな事を考えつつ夜の町中をうろつき喰らっていると、今度は弁髪の者達に囲まれた。手には棍を持ち、どう考えても功夫の連中だと思われる。どの流派かは知らないが。
ミクも分体1で功夫映画を見た事があり、何となくはどういうものか知っている。とはいえ怪物にとっては相手にならないものでもあるので映画として楽しんだだけだ。
「お前がこの付近で人を襲っている者か。覚悟しろ。我らの目の黒い内は、無法など許さんぞ!」
「この無法国家に住んでいる無法者がいったい何を言う。お前達の国では幼児の目をくり貫いたりしているじゃないか。そんな無法者の国の者がいったい何の冗談だ?」
「五月蝿い! 皆の者、容赦はするな。一気に叩き潰せ!」
「「「「「「「「「「応!」」」」」」」」」」
棍を突き、振り回してくるものの、ミクにとっては敵になれない程度の連中だ。敵にならないのではなく、敵に〝なれない〟のである。敵という認識すらされない程度ではあるが、それは他の者達も変わらない。
未だかつてミクを追い詰めた者など居ないが、これは根源の神にそう創られたのだから当たり前の事でもある。最強の怪物として創られた以上は、根源の神を除いて最強なのだ。最初からそういう存在なのである。
適当にかわしつつ鳩尾を突き上げたり、顎の骨を殴り折ったりしつつ相手をしていると、突然銃を発砲してきた。お前達は僧兵じゃなかったのか? と言いたくなる光景である。
「やったか?」
「それはフラグというのだが、お前達は知らんのか?」
ミクは派手に飛んだが、それは自分から飛んだので銃は関係ない。右手で銃弾を掴みつつ飛び、その後すぐに起き上がっている。更に周りの者達が動きを止めた隙に殴り倒す事もしている。
しかしバカが銃を撃った所為で、何がしかの者達がやってくる可能性が高い。ミクは今のところ誰も殺していなかったが、それは幸いしたと思った。殺していたなら死体をどうにかしなければいけないところである。
大陸の公安(警察)のサイレンが聞こえてきたので逃走する弁髪集団。ミクも見つからないように逃走し、路地に入り込んだ後で鳥に姿を変える。田舎の地方都市なので、そこまで監視カメラも多くない。
鳥に姿を変えたミクは、すぐさま弁髪集団を空から追い駆ける。夜であっても見えているミクにとっては、逃走する弁髪集団を見つける事など容易い。
そのまま大きな寺へと入って行く者達を追い、ミクも寺の中へと空から侵入する。先ほどの連中の棍捌きはなかなか優秀だったので、おそらくスキル持ちであろうと予想していた。
そんなミクは本堂の近くにある建物の近くに下り、ムカデに変わって建物へと侵入。中の者達の声を聞く。
「ふむ、失敗したか。各地の寺から報告のある怪しい男。人を喰うておるという話も聞くに、妖怪かもしれん。何をバカなと思うかもしれぬが、今やスキルというものすら存在する以上、妖怪が居らぬとは言えまい」
「申し訳ございません、師父。どうしてもの場合は使ってよいと言われていた銃も効きませんでした。それに仲間には顎の骨を折られた者も居ります。まさかあれ程までに強いとは思いませんでした」
「そうか、そなたらがそこまで言う程とは……。しかも倒せなんだという事は、ここを襲ってくるやもしれぬ。警戒は厳重にせねばならん。そなたらは休むと良い。それと病院に連れて行かねばな」
そんな会話をしていたが、どうやらミクは妖怪と勘違いされているらしい。この国にも昔から様々な話があるので、そういう風に結論付けたのだろう。もしかしたら某宗教の連中も、ミクを悪魔か何かと勘違いしたのかもしれない。
実際に人間を喰う以上は、悪魔と言われても反論は難しいのだ。とはいえミクは反論する気も無いので、その辺りはどうでもよかったりする。
だいたいの事情が分かったので、ミクは透明の触手を突き刺して麻痺毒を注入していく。あっと言う間に麻痺して動かなくなり、建物の中の者を全員喰らった。他の者は関与していないので放っておくが、襲撃者と指示した者を許す事は無い。
なので喰らい情報をレティーに奪わせる。しかし襲撃者と指示者を調べても、妖怪と勘違いしたという結論しか出なかった。どこまでも下らない話でしかなかったようだ。
ミクは呆れたものの、さっさと寺を出ると再び食い荒らしに出る。
(神どもの一柱が病原菌をバラ撒けって命じた以上は、おそらく間引きなんだろう。割合としては均等に被害は出てるんだけど、やっぱり突出して日本人の被害が少ない。何か理由があると見るべきだね)
その理由は分からなかったが、意図的に根源の神がそういう病原菌を作ったのは事実である。このガイアの神は、別に八百万ではない。他の星と同じく管理する神は決まっている。もちろん八百万な神々の居る星もあるのだが、惑星ガイアはそうではない。
つまり、一国の者だけ優遇する理由にはならないのだ。
(いや、もしかしたら星間魔法陣。アレがあるから優遇されている? でも神どもが置くなら何処でも良い筈。あいつらなら好きに置ける筈だ………まさか、<世界>?)
ミクは根源の神から聞いていた。<世界>というものは意思を持ち、根源の神ですら理解できない事を急に行ったりする、と。もしあの星間魔法陣が根源の神ではなく、<世界>が設置したものだとしたら?。
(そうであれば理由が分からないから、あの国の者だけは減らせないとなるね。まあ、多少は減ったところで問題は無いんだろうけど、他の国みたいにポンポン減らしたりは出来ない訳だ)
<世界>の邪魔をしようものなら、何をされるか分からないらしい。根源の神ですら怯えるのだから相当の高次存在なのだろう。ミクには関わらないので気にもしないし、<触らぬ神に祟りなし>である。
流石の最強の怪物とて、絶対に勝てない相手に喧嘩を売ったりなどしない。そんな事をしても無駄だからだ。
大陸の国は大きいが、それでも食い荒らしつつ病気を撒き散らしたので、そろそろ移動を考えるミク。
もう1つ大量に人口を抱える国はあるが、そっちは既に病気を撒き散らしており、更に恐ろしい速さで拡がっているので放置している。人口が密集しており蔓延しやすいのだ。
だから大陸の国ほどミクが撒き散らしに移動しなければいけない訳ではない。そろそろ大陸の国の中に撒き散らし終わったので、次は砂漠の方を予定している。
(さて、根源の神の要求だから更に減らしていくけど、私がこの星に来る最初の目的とズレてる気がする。これも<世界>が関わってきたからだろうか?)
内心で首を捻りつつも、今やるべき事を黙々と行うミクであった。




