0600・年始のパーティー その5
「夏沢家の方はそれで良いとして、問題は葉月家と京華家の方なんですが……。納得はされているので?」
「納得というのはしていないね。ただし、こっちもそこまで拒否できる訳じゃないよ。拒否すると娘が何をし出すか分からないのと、少なくともこの年で3億を超えるお金は持ってるからね。御大に見せてもらって驚いたけども」
「私もそうだな。母に見せてもらって、そこまで稼げるのか驚いたものだ。ダンジョンというのは危険が大きいが、その代わりに実入りも良いらしい。とはいえ危険な仕事だから、あまり褒められたものではないがね」
「それは仕方ないやろ。リスクがあるからリターンも大きいねん。高校生で3億も稼いどったら十分過ぎるやろ。しかもこれからも稼ぎそうなんやから、どっかの時点で後は経営に専念したらええ。目標は10億ぐらいか?」
「そこまで稼げば、後は普通の生活なら死ぬまで生きていけるでしょう。彼らが持って帰ってくる物の中には若返り薬とか上級ポーションもあるらしいですし、それがある限り需要は無くならない」
「問題はダンジョンを攻略しなければ手に入らない事が多い事ですかね? ダンジョンの途中で箱に入っている事は滅多に無いそうですし」
「それは聞くね。ダンジョン途中で稀に木箱なんかにアイテムが入っていると。ただし何が入っているかは分からないから、良い物かどうかは定かじゃないらしいけど」
「そもそもの話、向こうの星に行って手に入れてきた物を、こっちで売れば儲かると思うよ。向こうの魔物の素材がどれほど有用かは分からないし、研究する必要があるからね。それを考えると、向こうの星に行ける人材は貴重だよ」
「そういや、向こうの星にはこっちには無い金属があるんやったな。どんな金属かは知らんけど、買うてってもうて調べなあかんで。ただし調べて分かるかは、やってみるしかないやろうけどな」
そう言いつつ、夏沢家の当主はミクを見る。どうやら情報が欲しいらしいので仕方なく口を開く。
「私は正確な配合や素材を知っている訳じゃないけど、少なくともドリュー鉄はジャンダルコ、ウィリウム鋼がドルム、そしてエクスダート鋼がゴールダームなのは知ってる。それぞれの産地は知っているけど、エクスダート鋼しか素材を知らない。必要素材は第5エリアのマッスルベアーとスチールディアー」
「マッソーな熊と鋼鉄鹿なあ……。何処の何を使うんかは知らんけどや、牙とか角とかを一緒に溶かしたりしとる気いするわ。そうなってくると、結構な回数の実験が必要やで。それでも素材が分かっとるだけマシやけど」
「それ以前の問題だ、夏沢。ゴールダームのダンジョン第5エリアまで行ける人員がガイアには居ない。ミク達なら行けるだろうけど、1階層20キロものダンジョンを攻略しなきゃいけないんだよ。向こうに行くのさえドレイクを倒さなきゃいけないっていうのに」
「問題は山積ですね。予想以上にやらなければいけない事が多いですし、予想以上に星間移動が難しい。今のところ娘達と尊君に北条君兄妹、それと御大だけですか……」
「それだけじゃないよ、私達はミクの厚意でドラゴン素材の武器を貰ってる。だから戦えたとも言えるからね。こっち側の素材だけで装備を整えて、そしてドレイクを倒す必要がある。マジックキラーも見つけたいところさ」
「あの刺したらブレス吐かれへんようになるナイフか……。ま、あくまでも投げナイフにしてあるだけやけど、あれ便利やと思うわ。投げたり近寄って突き刺したらブレス吐かれへんようになるし、相手の魔力で強化されてるんも消してしまうんやろ?」
「消すというより乱すが正しい。【魔法】も【身体強化】も魔力、ひいては魔素が整列している状態になっている。それを掻き乱すから強化や魔法は維持できなくなる。当然ブレスを吐こうにも掻き乱されるから吐けない」
「成る程。そういう理屈で使えなくなるのですか。……もしかして手に持っていると、自分も魔法などを使えなくなるので?」
「剥き出しのまま持っていると掻き乱されて使えない。だから鞘に入れておく必要がある。武器として持つのはあまり良い使い方とは言えない。だから投げナイフとして扱っている」
「そうですね。それが一番良いでしょう。それにドラゴン素材より切れ味が良いとは思えませんしね」
「マジックキラーの切れ味はハッキリ言って良くない。相手の魔力強化を乱して切りつけているから切れるだけで、本質的な切れ味は鋼鉄よりも上なぐらい。だからこそ、魔力強化が強い者の力を解除するのに使う」
「なかなか良い物ではあるのですが、それなりに使いどころは限られる、と。それでも切れない相手に刺せば切れるようになるのですから、十分過ぎるでしょう」
「そういう物を見つけ出す仕事も、<ダンジョン暮らし>の仕事だからねえ。北条君に八重を渡してもお釣りがくるのさ。でもねえ……どちらかと言わなくても、八重を渡すというより八重が突撃してるんだよ」
「うちもそうですよ、桜が突撃していて追認している形です。まあ、桜のスキルである【精神感知】でも、彼がおかしな人間でないのが分かっているからだそうですけどね。そうでなければ私も許可したりしませんよ」
「精神が分かるスキル持っとると、結婚相手を見つけるんは大変やと思うわ。おかしな精神しとらん人間なんてそうそう居らんし、そんなヤツ見つけたら突撃すんのも仕方ないわな。ここで逃したらもう出会わへん可能性あるんやし」
「私も悪いとは思ったのですが、それでも2度と会えないかもしれませんので突撃しました。その結果、八重さんと色々話し合いになり……」
「話し合いになり、どうしたんだい?」
「お祖母様、結果として私達2人と結婚という形にしました。どうやら向こうの星では妻や夫が何人居てもいいそうですので、向こうで結婚してしまえばいいと考えたのです」
「………八重、流石に私達が結婚式に出られないのは困るんだけどね?」
「そんな事を申されましても、こちらでは無理なのですから仕方ありません。慎ましいものであろうが、向こうでは2人で結婚しても問題ないのですから。当然向こうで結婚式を挙げます。ね、桜さん」
「ええ、八重さん。向こうの星に行けるようになっていて本当に良かったです。でなければ3人での結婚式が出来ないところでしたよ。そもそも私達にとっては、どちらも事実婚状態で構わない訳ですしね」
「強引やなぁ……。とはいえ好きおうとる奴等が好きに暮らすぐらい、誰も文句言わんけどな。この子ら見とったら、少子化や言うとるけど、日本人に限って複数の嫁や旦那を認めたった方がええ思うわ」
「1人に群がる形でも子供は増えるかもしれないし、複数人が一緒に暮らすなら生活はその分楽になるのかな? そうすれば子供も増えそうな気がするけどね。誰かが子供を見ていてくれるだろうし」
「複数人の収入が集まれば、それだけ生活は楽になるだろうから、確かに良いのかもしれないね。問題は日本人に限る事と厳格に調べ上げる事か。詐欺とかに使われる可能性があるのと、国籍取得に使われかねない」
「どっちも日本人に限るんやからそこまでおかしな事にはならん思うんやけど、一度法律関係を徹底的に調べ上げる必要あるなぁ。それで大丈夫そうやったら、ちょいと政治家どもに言うたるか」
何だか物事がどんどん進んで行くなー、と他人事のように見ているコウジ。実際にはヤエとサクラの為なのでコウジは他人事ではないのだが、自分とは関係なく進んで行く物事に自分と関わりがある実感が無いのだろう。
仕方がないと言えなくもない。




