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0597・年始のパーティー その2




 パーティーには色々な者が出席しており様々な者が多くの会話を行っている。もちろん唯のお喋りに興じている訳ではなく、そこは情報収集という名の戦場であった。主に情報を収集しているのは、各名家の中でも筆頭と言える分家の当主となる。


 名家の当主は挨拶回りやその他、やるべき事が多く情報収集をしたくとも出来ないし、そんな大物相手に妙な情報をお洩らしする者も居ない。もし居るとすれば、その情報自体が何かしらの罠である可能性が高い。


 だからこそ筆頭となる分家の当主と一族が、様々に情報を収集するのだ。それは何処の家も変わらず、筆頭分家の仕事となっている。筆頭分家にとっても、自身の家の存在意義の1つであるので決して手を抜かない。……本来であれば。



 「筆頭分家はその地位に相応しく、宗家の為にこういった場では情報収集をする筈なのですが……。千芭家の筆頭分家である、千川家の当主に動きが殆ど無いのですよね。何故か全く動く気配すらありませんし、ボイコットしているような雰囲気です」


 「あれはどうなのでしょうね? 千川家の者も右往左往していますよ。どうやら千川家の当主の独断なのでしょう、一族の者がこれでいいのかとオロオロしていますし。それにしても見事にバラバラなうえ、筆頭分家の当主に公の場で噛みつかれるなど……」


 「恥にしかなりませんが、いったいどうする気なのでしょうね? いえ、正しくはどう収拾をつけるのでしょうか。あれは内紛すら孕んでいる動きですよ。もしかしたら千川家の当主は千芭家を引き摺り下ろす気でしょうか?」


 「無いとは言えないところが何とも言えませんね。過去、そういった動きが無かった訳ではありません。歴史を紐解けば下剋上などよくある事としか言えないですし、だからこそ宗家であっても安泰とは限りませんから」


 「名家って言っても色々大変なんだなぁ。俺達みたいな庶民にはサッパリだ。なあ、セン」


 「まあ、それは当たり前だと思うけど、家臣筆頭がボイコットって本気でヤバいんじゃないの? 普通に考えたら、それ以外の家臣だって同調してる可能性高いでしょ。って事は……」


 「ええ。だからこそ、こういった場でああいう行動をするのです。他の者達の賛同が無ければ、ああいう事など出来ません。支持無き事を行っても、自分の首を絞めるだけですからね」


 「逆に言えば、あれが出来るという事は一定以上の賛同者が居るという事になります。だからこそ普通は動くなりするのですが、千芭家の御当主に動きはありませんね? もしかして気付いていないのでしょうか?」


 「御大が鉄面皮っていうくらいだから、分かっていても顔色は変えないし動かないんじゃないか? 動かない事で大物感を出すとかさ」


 「それは悪手です。動かないとなれば理解していない、または分からないほど愚かだと周囲に喧伝してしまいます。腹が立っても動かなければいけないところですし、それが分からない筈は無いのですが……」


 「ミクはもう始めてたりするの? だから動かないとか?」


 「いや、まだ何もしてないよ。ハルカからのゴーサインが無いから動いたって仕方ないし、千芭家の者は既に何処に居るか分かっている。一度魂魄反応を覚えれば、後はそれを追跡するだけで済むからね」


 「えーっと……どういう事?」


 「簡単に言えば、魂というのは人それぞれ違うんだよ。そしてその魂を現在ロックオンしてるって事。ハルカからのゴーサインが出ればすぐに始める。ただ……おそらく高い確率で気絶すると思う」


 「気絶って……」


 「だから気を失っても仕方ない状況でやった方が良いんだけどね。今回は仕方ない。私は顔を知らなかったから分からなかったし、いちいち分体を新潟まで派遣する気にもならなかった。そもそも、こういう所でやった方が手っ取り早いからさ」


 「そうなんだ。まあ、やるのはミクだし、ゴーサイン出すのは遥さんだから良いんだけど。それでも人前で倒れるというのは良い事じゃないと思うよ?」


 「そんな事を言われてもねえ。じゃあゆっくりと変えていこうか? そうすれば気を失う事は無いかもしれない。善人や悪人に変える事は、善意や悪意の増減とは違うんだよ。それよりは遥かに高度な事を行うんだ。だから意識が耐えられないんだよね」



 そんな話をしていたら、急に1人の女性が近付いてきた。ドレスにも腕に指にもジャラジャラと宝石を付けた人物で、別に顔やスタイルは悪くないのに、その宝石類の所為で台無しな人物である。


 おそらく高い確率で千芭家の奥方だろうという事は、コウジやセンですら分かった。その女性が挨拶をしてきたので、コウジ達も挨拶を返す。



 「ダンジョンという随分危険な所へと行っているとお聞きしますが、あまり褒められた事ではありませんよ。名家の女性として、まずは家を支える事と子を為す事を第一に考えねばならないでしょう?」


 「それは仰る通りですが、<ダンジョン暮らし>の社長業はお祖母様からの命でございます。また自らで行ってみなければ、実際の事など理解は出来ません。<百聞は一見に如かず>と申しますし」


 「………」



 千芭家の奥方からジロッとした目で見られる。どうも宝石好きだけでなく、性格もあまり良くないようだ。そんな中、ヤエとサクラではなくコウジ達にターゲットを変えてきた。



 「貴方達は確かダンジョンという所に行っている少々名が売れている子達だったわね。尊も一緒に居るようだけれど、なぜ貴方達のような一般人が多く映っているのかしら? 少し図に乗り過ぎでは?」


 「申し訳ありませんが、我々にどのような映像を流すかの決定権はありません。葉月家の総帥が全てお決めなので、何か問題があるのでしたら総帥までどうぞ」


 「………」



 コウジに反撃されたからか、明らかに不機嫌オーラを撒き散らし始めた千芭家の奥方。ただし葉月家の御大の名が出ると不利を悟ったのか、矛先をミクに変える。



 「そういえば貴女が異なる星の女性だったわね。動画を拝見したけれど、あれほどの強さの割にはスタイルは悪くないようで何よりだわ。強いのであればゴリラのような体型でないとおかしいとは思うけれど」


 「それはこのガイアの少し前までの常識ならば、でしょう? そんな古い考えを元に喋られても……鼻で笑うくらいしかできないよ? もうちょっと考えてから喋ればいいのに、頭が悪い奴ほど直接的なんだよねえ」



 ミクの反撃を聞き、怒りで額に青筋が浮かびそうな千芭家の奥方。プルプルと震えていると、近くの給仕がミクに飲み物を渡す。実はコレがハルカからのゴーサインである。


 それが来たミクはタイミングを計って行動する。丁度バカがプルプルと震えているのだ。更に煽れば気を失っても不自然ではあるまい。そう思っていたら、新たな乱入者が現れた。



 「母上、如何しましたか? 随分とお怒りのようですが……」


 「少し心乱れる事があっただけです。それより貴方は何をしにここへ来たのですか、己の為すべき事はあるでしょう。次期千芭家の当主として顔を売ってきなさい」


 「いえいえ母上、そこに葉月家の者と京華家の者が居るでしょうに。将来私の妻になるのですから、挨拶ぐらいは必要ですよ」


 「何を勘違いされているのかは知りませんが、私が貴方と結婚などあり得ないので、そういった妄想を語るのはお止め下さい。迷惑です」


 「なに?」


 「私の方も大変に迷惑ですね。何故勝手にそう思い込んだのかは知りませんが、現実にはあり得ないのですから、八重さんが妄想とおっしゃるのは当たり前でしょうに」


 「………」



 どうやら尊の兄のようだが、こいつも来て早々に怒りを持ったらしい。親子揃って煽り耐性の無い奴等である。


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