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0596・年始のパーティー




 各国の軍人との共同訓練も終わった後、年を跨いで正月。今日は名家が集まるパーティーが開催される。毎年恒例ならしいが、各家の持ち回りで行われており、今年は葉月家が主催なのだと言う。


 去年から用意されていたパーティー会場と料理やお酒などで盛り上がっており、名家やその分家などが大量に集まる日である。豪華な会場に華やかな出席者。そこに何故かミクとコウジとセンが居た。


 完全な場違いではあるが、3人ともハルカに呼ばれた為に来ているだけだ。というか、本当ならば来たくもなかったというのが本音である。ミクとセンは借り物のドレスであり、コウジはタキシードを着ていた。


 身長と胸があるミクは綺麗に見えるドレスを、センはレースなどのちょっとしたヒラヒラの多い可愛いドレスを着ている。正直に言って面倒臭さが滲み出ないように堪えるので精一杯なコウジとセン。そして無表情のミク。


 そんな3人は適当に壁近くに居たが、助けというか更なる地獄というか、そんなものを告げる2人がやってきた。



 「こんな所に居たのですね。探しても見当たらないので変だなと思っていたのですが、挨拶回りなどがありましたので時間が掛かってしまいまして……」


 「申し訳ありません。本当なら最初から私達が相手をするべきなのですが、こちらにも色々と事情があったもので」


 「いえいえ。自分達はここに居ますのでお構いなく。……それよりも大丈夫なのか? 今日の事は聞いてるけど」


 「おそらく問題ないと思います。光時君とセンには申し訳ないのですが、今日の作戦は今後に必要な事ですので……」


 「まあ、俺も千芭の事は悪く思ってないから、今回の事は必要な事だと思ってる。依頼料も貰えるみたいだし、当然ちゃんとやるよ」


 「そうそう。それにどうなるかはちょっと見てみたいし。ミクは何も変わらないって言ってたけど……」


 「表面上は変わらない感じだね。流石に状況によって使い分けるけど、そこまでの苦労もなく処理は終わると思う。それに追い詰められて来てるなら上手くいくでしょ」



 そう、ミク達はパーティーに参加させられただけではなく、ある目的を持ってここに居る。それはハルカに依頼されたからであり、内容は千芭家当主、及びタケル以外の家族の善人化だ。


 正しくは千芭家当主とその妻、並びにタケルの兄の3人を強制的に善人化する。ミクが神の権能の一部を持つがゆえに強引に為す事が可能であり、洗脳などというチャチなものではない。


 その人間の根幹から変えてしまうソレは、まさしく邪法や外法と言われても仕方がないほどのものである。それでも使用に踏み切ったのは、千芭家以外の5名家の当主が賛成したからだ。


 流石に本気でマズいと思ったのだろう。ハルカはミクに許可をもらい、各家の当主達にミクの素性をバラしたのだ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 およそ1ヶ月前の葉月家本邸の執務室。そこには各家の当主が映るスクリーンがあり、部屋の中にはハルカとミクだけが居た。



 「今日はいったいどないしてん。葉月の御大から緊急会議やなんて、またぞろ碌な事やあらへんやろな?」


 「お前の軽口に付き合う余裕は無いんだよ。他の家の当主も気付いてるだろうけど、今日の会議に千芭は居ない。これは意図的であり、理由は大凡おおよそで想像がついてるだろう?」


 「千芭家の本業が苦しい件ですか……。しかしまだ危険水域までは行っていないのでは? こちらの情報でもまだ2年は大丈夫かと思いますよ」


 「私の方でもだいたいそんなところだな。2年で危険水域に入る恐れがあるというくらいか。幾ら信用を切り売りしていたからといって、千芭家がすぐに崩壊する事は無い筈だ」


 「ウチでもそうだね。流石に腐っても名家、そう簡単には崩壊したりしないよ。それでも信用が無い今、相当厳しい舵取りを迫られるだろう。とはいえ、それは親子二代の自業自得だ」


 「それで済めば簡単なんだけどねえ、従業員その他を考えると結構な問題を孕んでる。その事は共通している筈さ」


 「ま、そうやな。で、御大は何が言いたいねんな? まどろっこいしい建前は要らんで」


 「なら結論を先に言おうか。来年始めのパーティーに千芭の家族も招待する事に決めた。来年のはウチが主催だから呼んでも特に問題無い。あそこの一族は碌なもんじゃないからね、千芭が傾けばこっちまで痛くもない腹を探られる」


 「痛くもない腹を探られるのは分かりますが、それで千芭家の家族を呼ぶ理由が分かりません」


 「今横にいるミクにカメラを向ける、そしてその意味を理解すると良い」



 ハルカがミクにカメラを向け、ミクは首から上を怪物に変えた。その瞬間、各家の当主は動けなくなる。



 「お前達に見せるのは初めてだな。これが私、<喰らうもの>だ。本来の私は肉の塊であり、その私は神に創られたのだよ。お前達が信じる信じないはどうでもいい、大事な事はこれから何をするかだ」



 各家の当主達は静まり返っていたが、ハルカが説明すると深い深い溜息が聞こえてきた。



 「その女がバケモンやというんは分かっとったけどや、正真正銘の化け物やとは思わんかったで。流石にそら無理や、それを想像せい言うたところで出来るかいな。でけたヤツは洩れなく頭おかしいわ!」


 「まあまあ、夏沢。ここでミクの本性をアピールしたのは他でもない、ミクは2つの権能を持つからなんだよ」


 「「「「権能……?」」」」


 「簡単に言えば私は前の星で神を喰らっている。善を司る神と悪を司る神だ。そして私はその2つを喰らった事で、権能の一部が行使可能となっている。これはどんな人間種だろうが、強制的に善人にも悪人にも出来るという権能だ」


 「…………ムチャクチャやん。幾らなんでも、そんなやりたい放題が許されてええんか?」


 「安心しろ、私は神に創られたと言ったろう。それ故に神に背く事は出来んのだ。私に与えられた神命は、星に住むゴミ共を食い荒らせというものでな。それに必要な事であれば、強制的に善人にするぐらいは許されるのだよ」


 「つまり……どういう事でしょう?」


 「ミクは最強の怪物だが、しかし真面目に生きているヤツを喰ったりはしない。そして悪徳な人間を強制的に善人に変えてしまう事は許されてるって事さ。千芭は……さてどっちだろうねえ」


 「ああ、そういう事かいな。千芭の家が傾く前に、千芭の家のもんを全員善人にして自分らで解決させようっちゅう事かい。説教されても聞かへんやろうけど、強制的に善人に変えられたらどうにもならんわな」


 「そうさ。そしてそれを行う場が、新年のパーティー会場だ。ミクとコウジとセンは私が招待した事にする。理由は<ダンジョン暮らし>で功績があった3人の顔見せであれば、特に変な事じゃないだろう?」


 「そうですね。本当に善人に洗脳? できるなら、千芭家も良くなっていくでしょう。彼は名家というものを勘違いしてるんですよね。一グループ企業じゃないんです。汚い事をする事が許されないから名家なのですよ」


 「ええ。だからこそ我々のグループは名家というブランドで守られる。そのブランド価値を毀損して頭が良いなど、マヌケに過ぎるでしょうに」


 「とにかく千芭家が立ち直って面倒にならなくなるならば、洗脳でも何でも構いません。正直に言って、鬱陶しい動きをされる方が問題です」


 「よし。それじゃ5名家の名で、千芭の一族を善人に変えてしまう事を承認する」


 「それでええんやけど、尊のヤツはせえへんねやろ? 流石にあいつは千芭に比べたら可愛いもんや。性根がひん曲がっとる訳やないからな」


 「流石に娘の未来の旦那は変えられたくないかい? 今回の事に千芭尊は関わりなしだよ。そんな事をしたら翠が五月蝿いだろうからね」


 「そんならええわ。アレは単なるガキなんと、教える奴がらんかったからっちゅうだけや。磨いたらそれなりに良うなるヤツを潰されたらかなんで」


 「ほう、思ってるよりも評価してるじゃないか。そこまでかい?」


 「そこまでっちゅうより、今までがちょいおかしかっただけや。外側を剥いたら、中身は素直なガキやで。アレは幾らでも道を正したれる。尊の兄の方は千芭そっくりやから、あらもうあかんわ」


 「そうかい。なら強制的に善人で決定だね。後、この事は勘付かれないように」



 こうやって年始のパーティーで強制善人化の刑が決まった訳だが、こうなったのはミクが喰って「はい終わり」とはいかない為だ。それをされると当主不在で大混乱をしてしまう。


 足下が揺らいでいるとはいえ、千芭家に連なる会社の従業員は多い。多くの人員を解雇ともなれば、大混乱は必至なのである。


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