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0594・共同訓練




 葉月家の本邸にミクとコウジ達が勢揃いしていた。その全員の顔が面倒だという思い一色なのは、今日からとある場所に行かねばならないからである。その事自体はかなり前から決まっていたのだが、半強制であった為、今でも全員が納得していない。



 「面倒なんですけど、行かなきゃいけないんですよね?」


 「まあね。こればっかりはどうしようもない。他国の軍人が来るので魔法の使い方から色々と学ばせてやらなきゃ駄目らしいからね。上の方が勝手に決めたとしても、国としてやらなきゃいけない事ででもある」


 「日本にとっては同盟国であるアメリカに、イギリスやイタリアなどの西側諸国の軍……ですか。NATOの一部の国と言った方が早いですが、しかしそれらの国がなぜ今ごろになって?」


 「裏に何かあるって思ってるんだろう? 私だって同じように思ってるけど、そこは何とも分からないね。色々な思惑があるっぽいけど、魔法の使い方はそれぞれの国に伝えてるんだ。日本より遅くとも魔力は知覚できてる筈さ」


 「??? ……それならわざわざ日本に来る必要ないんじゃないですか? 魔力が知覚できてるなら、後は努力あるのみでしょう。わざわざ日本に来て、しかも俺達が教える必要ってあるんですか?」


 「確かにな。無理にオレ達が教える必要もないんじゃ、後は日本との友好ポーズくらいしか思いつかないが……。まさか本気でそんな下らないポースの為に来るんじゃないですよね?」


 「可能性として無い訳じゃないだろうけど、向こうだってそんな暇じゃないだろうさ。そう考えると、何かしらの思惑はあって来るんだと思うけどね。軍人使ってハニートラップという線も考えにくいし、何がしたいのやら……」


 「文句を言っても始まりませんし、私達が指名されている以上は熟すしかありませんね。流石に国同士の事である以上は、私達は拒否できませんし……」


 「そうなるとミクが出るのはちょっと違うとなるけれど……。何故か相手はミクも指名してるのよねえ。教えて欲しいという気持ちは分からなくもないし、強い人から教えを乞うのは普通の事とも言えるだけに、ねえ」


 「変じゃないわ。変な事ではないんだけど、なぜ今ごろになって? とは思うわね。ハニートラップもするならもっと早くするべきだし、教えてくれというならもっと早く動くべきでしょう」


 「仮に日本政府が頑張って断ってくれとったにしてもや、だいたいの事は今さらやで。ここまで遅れたなら普通は方針転換するもんやし、そうやって方針転換なんぞしたら洩れてくるもんやけどなー。色々と」


 「残念ながら他国の事だから洩れてきてないね。向こうさんだって思惑は必死に隠すし、それはこっちも変わらない。とはいえ、そこまで我が国をどうこうというのは無い筈さ。同盟国まで含んでるんだ、おかしな真似はしないだろう」


 「流石に同盟国から教えて欲しいと言われれば断れませんし、日本は既に何度かアメリカ軍との合同訓練をしておりますからな。正しくは合同訓練と言う名の<魔法の使い方講座>ですが」


 「その<魔法の使い方講座>をしている以上、わざわざ今ごろ「魔法の使い方を教えろ」は無いでしょう。日本国としては友好的な国以外に教える気は無いようですし、それが一番対応としては無難です」


 「ま、ここで色々と推測しててもしょうがない。あんた達には悪いけど、今から1週間は共同訓練に出てもらうよ。これも名目だけで、正しくは各国の軍人に教えるだけなんだけどさ」



 ハルカが話を締めると、その場に居た全員が外へと出て行く。今日という日が来た以上は逃げられないのだが、コウジ達からすればこんな事で冬休みが1週間も潰れるのは堪ったものではなかった。


 そういう思いがありつつも、政府からの半強制依頼なので拒否する事ができない。実質は命令に等しいのだが、この中でミクだけがそれを拒否できる。それは当然この国の人間ではないからなのだが、ミクはハルカから依頼されているので拒否はしていない。


 ミクがハルカから依頼された内容は、何かあった際に全員を連れて逃げてくる事だ。何かある事を想定してミクに護衛を依頼しており、裏に胡散うさん臭さを感じているのだろう。


 そもそもミクがガイアに来たのは夏であり、動くならば夏に動いていなければおかしいのだ。仮に交渉で今まで掛かったとしても、年末に近いこの時期に急にでは疑ってくれと言っているのと変わらない


 となるとタケルが言った、友好のポーズをアピールする為の共同訓練と言った方が納得はしやすい。しかし、わざわざその為だけに軍人を派遣するのか? という疑問も残る。


 色々な事が考えられるが一旦それは忘れて頭を切り替え、コウジ達は軍の基地に到着した車から下りる。自分達が訝しんでるという顔を見せる訳にもいかないので、コウジ達は笑顔で歩いていくのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 基地の一室。大会議室に通されたミク達は、そこで椅子に座りゆっくりとしていた。未だミク達しからず、日本軍の軍人すら部屋の中には居ない。とはいえ監視カメラがある以上は迂闊な事を口走ったりはしない。


 適当な会話をしつつ時間を潰していると、扉の外から複数の気配がこの部屋に来るのをミクは感知した。コウジ達も魔力を感知したのか部屋の扉をジッと見ている。


 すると扉が開き、外から軍人達が入ってきた。どうやらそれぞれの国の軍人が一斉に入ってきたようだが、彼らは何故タイミング良く一緒に入ってきたのだろうか?。


 ミクがそんな事を考えていると、最後に日本の軍人が入ってきて扉を閉める。そして英語で話し始めた。今や翻訳アプリがあるので、わざわざ英語が喋れなくても意思の疎通は可能である。



 「集まっていただいた皆さん、こんにちわ。自分は日本軍大佐の中川と申します。今回の共同訓練ですが、皆さんも承知の通り最近増えてきた魔法を使う犯罪者の取締りの為のものとなります」


 「それは分かっているさ。我が国でも最近おかしな放火騒ぎなどが相次いでるからな。突然火の玉が飛んできて燃え広がるんだぜ? どう考えても魔法しかありえねーよ」


 「ええ。小火ぼや程度であればそこまで問題は無いのですが、ダークウェブ上にはどうやら危険な魔法の魔法陣まで流れているとされています。我々としても全てを掴めてはいませんし、それは各国も同様だと聞いています」


 「そうだな。それに我が国では移民連中に教えて、テロ紛いの事をさせている組織まで出始めた始末だ。早急に鎮圧するだけの力が必要になっている」


 「はい、それら魔法を使われた際の犯罪に対する抑止力。これは各国共に充実させなければいけないのは喫緊の課題です。ですので皆さんには今回、共同訓練での中心になっていただくのです。ドレイクが倒せるなら十二分に強いでしょう?」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 そういう理由だったのかと思うコウジ達であるが、同時に胡散うさん臭さも感じている。しかし中川大佐が笑顔を顔に貼り付けたまま、目だけで「そういう事にしてくれ」と言っているのが分かったコウジ達は、大人しく従う事にした。



 「それでは建物の外に出て訓練を始めましょうか。今回は市街地戦などを想定した訓練ではないので、通常の訓練場所で十分でしょう。では皆さんは案内に従って移動して下さい」



 立ち上がった各国の軍人は先導する軍人の後ろをゾロゾロとついていく。ミク達も立ち上がり、仕方ないなという思いと共について行くのであった。


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