0587・コウジ達のゴールダーム観光 その6
次の日の朝。ミクは既に部屋に戻ってきているが、昨夜はダンジョン内を走り回っていたので大変だった。分体は第3エリアでゴブリンを虐殺し、アイテムバッグ小を3つ入手。分体2は第8エリアでマジックキラーの採取。
それらを行ってきたので時間もかかったのだが、それでも投げナイフを作る事は十分にできた。それ以外にも少し小さめのラウンドシールドと大きめのラウンドシールドを2つ作った。
大きめはコウジとケイコ用で、小さいのはタケル用だ。そして渡すアイテムバッグにマジックキラーの投げナイフを入れておく。
ミクは朝になったのでアレッサとティアを起こし、食堂に移動して椅子に座る。2人はエアーマットを敷いて寝たからか、随分と深く寝ていたようだ。その所為か欠伸が止まらないらしい。
「ふぁ~あ……。良く眠れたのに欠伸が止まらないのもどうなのかしらね。快適だったけど、快適過ぎるとこうなるの?」
「さあ? それよりコウジ達はまだ起きてこないみたいだけど、起こしに行った方が良いのかな? それとも寝かせておくべき?」
「悩ましいところですけれど、別に無理して起こす理由も無いのですよね。昨日のダンジョンで疲れているでしょうし、今日はゆっくりさせておいてもいいと思います」
それもそうかと思い、ミク達はゆっくり休ませておく事にした。朝食を頼んで少し待ち、運ばれてきたら食事をする。アレッサやティアにレティーとセリオと食事をしていると、シャル達も起きてきた。
店員に朝食を頼んでお金を支払い、それが終わったら隣のテーブル席へ。適当な雑談をしつつ食事をしていると、どうやらコウジ達が起きたようである。
ミクは椅子から立ち上がり、「コウジ達が起きた」と言って食堂を出る。それぞれの部屋に行ってノックし、食堂に来るように伝えたら戻る。部屋の中の者が起きているのは分かっているので、それで十分事足りるだろう。
最初にやってきたのはジロウエモン達だった。その後にアスカ達で、そのすぐ後にタケル。そして一番遅かったのはコウジ達だ。ただし理由は簡単で……。
「髪が跳ねてしまっていて、直すのに一苦労しました……」
「桜ちゃんの髪が綺麗に跳ねていたので、ちょっと面白かったです」
「【清潔】とか使ってみたけど、やっぱり綺麗にしても癖は直らなかったよ。当たり前だけど」
「それはそうでしょうね。寝相が悪かったのか、それともたまたま跳ねたのか……。あまり良いものじゃないとは聞いていたけど、そこまでメチャクチャ悪いという程でもなかったわ。藁のベッドって」
「それは新しい藁が簡単に手に入るからよ。ゴールダームではダンジョンの第1エリアで収穫を毎日行ってるから、新しい藁が安く簡単に手に入りやすいの。普通は何日も使うから最後にはぺっちゃんこよ?」
「最初のような弾力が無くなるわけね。それなら藁のベッドが嫌がられるのは当然かしら。藁そのものを被るとチクチクするでしょうし、シーツがあるから良いけど、なかなかこういう時代って難儀ね」
「それはそうでしょ。私も向こうに行って色々と調べたけど、あんた達の星だって良くなったのは近世に入ってからじゃない。藁のベッドなんて何千年使われてたのよ?」
「せやな。日本はちょっと違うけど、それでも庶民は藁被って寝てたいう記録もあるらしいし、何処の国でも長い間変わらんかったんやろ。ある意味で由緒正しい寝具やで、藁は」
「そう言われればそうだけど、戦国時代には綿花栽培って盛んじゃなかった?」
「それって木綿の事よね? あれって確か大名とか武士が買う物で、庶民だと着物とか手ぬぐいじゃないの? 庶民にお金なんて無いんだし、寝具なんてそうそう変わらないでしょ。おまけに綿も要るし」
「中に詰める綿がないと、綿だけあってもお布団は作れないか……。やっぱり難儀よねえ。綿の詰まったお布団の方が良いけど、コストを考えたら圧倒的に藁でしょうし」
「毎日手に入るなら格安でしょうし、この国は藁から離れられないかもね。焚き付けにも使えるからか、色んな意味で生活に密着してるみたいよ」
「何と言いますか、修学旅行より勉強になりますね。こちらの方が文化的に遅れていても、それを目の当たりにするからこそ、考えさせられる事が多いです」
「言いたい事は分かるわ。何と言うか、実際に見て触って体験してみないと分からないのよね。思っている以上に色々な事を学んでいる気がするわ」
コウジ達が食堂に来てからビデオカメラを回しているので、おかしな言動はしないコウジ達。それにしても模範解答が過ぎると思うし、もうちょっと砕けた話でも良い気はする。ミク達はそんな風に考えていた。
朝食後、まずは町中をうろつく事に。最初に出かけたのは南東の商業区であり、色々な店が並んでいる通りだ。特に武具などを取り扱っている場所である。
そこでプレートアーマーやらラメラーアーマーにカイトシールドやタワーシールドなどを見ていく。もちろんバックラーであったりガントレットなども物色。なかなか面白い物だとフラフラしながらも楽しむ一行。
女性陣も戦う為、色々と参考になりそうな物は積極的に吟味していく。1人1つくらいなら買っても問題ないので、お土産みたいに選ぶように言う。既にコウジとアスカとミドリにはアイテムバッグ小を渡してあり、そこに詰めて持って帰ればいいだけである。
一応後で返すように言ってあるが、第3エリアで手に入れてきたものなので、最悪は無くなっても構わないと思っている。ミクが持つ時間が停止するアイテムバッグは駄目だが、幾らでも手に入る物はそこまで気にしないようだ。
色々と見て回るもコレという物が無く、持って帰っても邪魔になると困るので悩む一行。結局様々な事を考慮した結果、購入は見送る事に。
買わないのかと思うものの、置き場所に困る物など買っても仕方がないらしい。名家なのにと思ったが、どうやら違うようだ。
「名家だから気にするのですよ。こんな物しか買わないのかとか、あんな程度の物を家に飾るのかと言われるんです。異なる星の物だというだけで価値があるのに、そういう価値が分からない連中というのは多くてですね……」
「わざわざこっちが低レベルに合わせなきゃいけないのよね。分からないなら当たり障りの無い事を言っておけばいいのに、自ら無知を晒す愚か者が居るの」
「しかも分かっていない癖に上から目線で、本当に嫌になるわ。ああいう連中は」
ミクがビデオカメラを回していると分かっていてこの話だ。よほど腹に据えかねていたのか、別の星の記録に紛れ込ませて攻撃している。いちいち嫌味ったらしい人間というものは居るが、名家の近くにもどうやら居るようである。
大変だなとは思うものの、密かにティアが「うんうん」と頷いているのが大変印象的ではあった。
そのまま歩いて行き、屋台の出ている大通りで買い食いをする。ちょうど串焼きであったり、甘味を売っている店があった。どうやらハチミツを練りこんだクッキーみたいな物を売っていたので試しに購入。皆で分ける。
「………素朴な味がして良いですね。私、こういうの割と好きです。甘さがクドくなくて。光時君はどうですか?」
「……うん。桜の言ってる通り素朴な味でいいね。あんまり飽きないタイプかも」
「……そうですね。桜さんも光時君も言っている通り、これぐらいが一番良いのかもしれませんね。思っているよりはハチミツが使われているのではないでしょうか?」
「「「「「「「………」」」」」」」
全員が気づいたが、突っ込む事もせずにスルーする事に決めたようである。だが一部の女性はニヤニヤしているので、分かっていて放置するらしい。楽しみ方が下品な気がするのは気のせいだろうか。
尚、ジロウエモンとタケルとミドリは関わらないように距離をとっている。




