0586・コウジ達のゴールダーム観光 その5
食事やゴールダームの話などを終え、それぞれに宛がわれている部屋へと移動する。ミク達は明日どこを回るかの話をしており、それらを相談し終わった後は自由時間とした。
ミクは真っ暗でも本が読めるが2人はそうではない。それぞれが【生活魔法】の【灯り】を使いつつミクが出した漫画を読んでいた。寝るには少々早いらしく、たまに「クスクス」と笑い声が聞こえてくる。
お上品に笑う事からティアだと分かるが、読んでいるのが<ハイスク○ル・奇○組>なのはどうなのだろうか? 何故それをチョイスしたのか理解に苦しむが、本人が楽しいのならそれで良いのだろう。
ちなみにアレッサが読んでいるのは<寄○獣>である。こっちもこっちで何故それをチョイスしたのかは疑問だ。主人公であるシン○チとミ○ーが石を投げて寄生○を倒した場面でチラリとミクを見るも、その後は再び漫画に目線を戻す。
そんな感じで3人の夜は更けていく。
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Side:千芭尊
「で、オレは1人部屋なんだけど、何でここに来たんだ? そっちから来ておいて変態扱いとかは勘弁してほしいんだが……」
「流石にそないな事はせんわ。それより高う売れるもん知っとるんやから、キリキリ吐かんかい!」
なんでこの女がオレの部屋に来るんだよ。そもそもオレは嫌われてるんだろうに、何でコイツは寄ってくるんだ? だいたい関西弁って怖いんだよな。オレも千芭尊と同じで新潟の生まれだから、どうにも関西弁って聞き慣れない。
仕方なく知っている情報を話すと、何故か怒り出した。
「高う売れるもんとは言うたけど、そないに遠くのもんを誰がゆえ言うてん。そうやなくて東京に近いところからやろ。アタシは暇あるから行けるけど、千芭が無理なんやから行かれへんやないか。自分の事やねんから現実的に考え!」
何で怒られなきゃいけないんだ? 高く売れる物を言えっていうから言ったんだろうに……。確かに東京住みだから、東京しか日帰りできないとは思うけどさ。それと、アイテムを手に入れてもどうやって隠すんだ?。
「それは心配せんでもええ。ミクにアイテムバッグ貸して言うてるから問題ないわ。ただし絶対返せと言われとるけどな。それと借りれるんはアイテムバッグの小らしい。それで十分やろ?」
「まあ、持って帰ってきて葉月の御大に渡すなら、大きさは気にしなくていいんじゃないか? そこまで大きな物も無かった筈だし」
「それとアタシがミクに頼み込んどいたから武器もくれるって、せやから感謝しい。それもドラゴン素材やで」
「は? ちょっと待て、オレもか? ……いや、流石にオレにくれるっていうのは……」
「せやから便宜上、千芭の剣はアタシのもんやいう事になっとる。つまりアタシからの貸し出しやな。そうなっとるんは千芭の当主とかに奪わせへん為や。向こうがゴチャゴチャ言うてきたら、そういう事や言うといたらええ」
「何でそこまでするんだ? もちろん金の為なのは分かるが……」
「あのな? 後1年とちょっとでこの儲け無くなる可能性高いんやろ? そのうえ誰かが既に手に入れとるかもしれへん。こういうもんは早いもん勝ちや! せやったら今の内に急いで手に入れとかなあかんに決まっとるやろ! ええか、今しか出けへん金儲けなんや。これ逃したらアンタも儲からへんねやで。少しは気合い入れんかい!」
「お、おお……分かった。確かに早めに色んな所を回らないと金儲けにはならないな。特にゲームでは外れアイテムだった若返りの薬は早めに確保したい。それと武器も確保しておきたいんだけど、どうするかな……?」
「武器とかはドラゴン素材のがあるから後回しでええやろ。とにかく紙かなんかに書き出して纏めたいんやけど、迂闊に書いたら他人に見られるんよ。どないしたもんやろか……」
壮大なお金儲け計画が始動しているらしい。2人の間に多少の温度差はあるらしいが、お金さえあればそこまでタケルの人生も悪くはなるまい。
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Side:北条光時
「さて、起きてても仕方ないし、今日は長距離を歩いて疲れたから寝ようか?」
「それよりも【清潔】で汚れを落とす方が先ではありませんか? お風呂は無いみたいですけど、魔法で汚れは落とせるのですから落としましょう」
「あ、じゃあ俺はどこかを借り「大丈夫ですよ」てくるよ……」
「私達は部屋の中に北条君が居ても気になりませんし、ちょっとぐらいなら見られても問題ないですから。ただし背を向けていて下さい」
「え、えーっと……分かりました」
流石に鈍感主人公とかじゃないし、部屋を出なくてもいいという好意と信頼は分かるけどさ。でも名家の女性、しかも女子高生としては大胆すぎないかな? それとも俺が知らないだけで、周りのクラスメイトもこんな感じなんだろうか?。
とにかく部屋の隅に行って背を向け服を脱ぐ。流石に汚いよりは綺麗な方が良いので、俺も綺麗にしたかったんだよな。ただ、こんな形で綺麗にする事になるとは思わなかったけど。
「「………」」
なんかドキドキするけど、とりあえずさっさと【清潔】を使って済ませてしまうか。体に【清潔】を使って綺麗にした後、手で体を叩いて汚れを完全に落としておく。そもそも【清潔】の魔法には汚れを剥がす効果しかない。
使っただけで汚れの大半は下に落ちるけど、それでも叩いて下に落としておくべきだ。この方法で大体の汚れは落ちるので、後は服や下着にも【清潔】を使って綺麗にして着ていって終わり。
お風呂に入るより圧倒的に短い時間で終わるものの、それでも女性2人が終わるまでは壁を向いたままだ。足でちょこちょこ汚れを集めておいた方が良いかな? ミクみたいに【浄滅】が使えれば汚れを気にしなくてもいいんだろうけど、あんなの使えるわけ無いし。
「もういいですよ」
おっと、振り向いてもよくなったので、さっさとベッドに戻ろう。落とした汚れは明日でいいや。箒とちりとりを借りて掃除すればいい。
そう思って振り向くと、2人は既にベッドに座っていた。綺麗にした後なんだろうから特におかしなところは無い筈だが……何だろう? 2人がちょっと笑ってる。というか微笑んでる感じか。
「何か面白い事でもあったの?」
「いえ、何でもないですよ」
「ええ、何でもありませんよ。ちょっとお互いに布で拭き合ったりしただけです」
「そう。ま、そろそろ寝ようか。一応買ってもらってるけど、本来なら灯りだって有料でそれなりの値段がするらしいしさ。魔法が維持出来るなら良いんだろうけど……いや、できるかな?」
試しで【生活魔法】の【灯り】を維持してみたら出来た。思っているよりは難しいものの、魔法の距離を伸ばす練習よりは簡単だ。せっかくだから魔力が枯渇する手前まで維持しよう。その方が練習にもなる。
「【灯り】の魔法、上手く維持できているみたいですね? それなら灯りを消しても大丈夫そうですから消します」
フッという息の音が聞こえた後、俺が使っている【灯り】の魔法以外の光源が無くなった。何故か葉月さんも使い始めたが、そうすると京華さんも使い始めた。急に練習を始めたみたいだけど、2人も上手いね。
「葉月さんも京華さんも急に練習し始めたけど、何かあった?」
「北条君、その葉月さんというのは止めてくれませんか? 八重と呼んでほしいです」
「私も桜と呼んで下さい。名前で呼ばれないのは他人行儀な感じがして嫌です」
「じゃあ、俺の事も名前で呼んでくれる? まあミツでも良いんだけどね。どっちかで呼んでくれたらいいよ」
「どちらが良いのでしょう? どういう方からミツと呼ばれているのですか? 何故か動画のアカウント名もそうですけど」
「子供の頃から知り合いはミツと呼ぶよ。名前でちゃんと呼ぶのは母さんとセンぐらいかな?」
「「じゃあ名前で!」」
「そ、そう……」
そんなに気合いを入れて言う事だろうか?。




