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0585・コウジ達のゴールダーム観光 その4




 「〝ああ? 女、てめえ随分いい度胸してるじゃねえか。あんま調子に乗ってると、ここでその綺麗な顔が潰れっちまうぞ?〟」


 「〝お前は弱い癖に随分と調子に乗ってるらしいな。そのまま調子に乗ってると、死ぬぞ?〟」



 ミクは絡んできた男達に対し、ほんの少しだけ本質を解放する。それは絡んできた男達4人だけであり、他の者達には一切被害をもたらさないものであった。制御は完璧である。



 「「「「※A#L!F※E?DN%HRJ#!S※S※T!」」」」



 男達4人は一斉に奇声を上げたかと思うと、ミクに背を向けて走って逃げていった。コウジ達は「ポカーン」としているが、アレッサとティアは「何かやったな」としか思っていない。


 最強の怪物だと知っている以上、何をやったかなど迂闊に聞いたりはしない2人。コウジ達も神に作られたという情報は知っているが、それが怪物というものに繋がらないのだ。怪物の姿を見た事が無い故に。



 「バカどもは失せたから、さっさと行こうか。ここに居ても別の鬱陶しいのが絡んでくるだけだろうしね」


 「あ、ああ……。そうだな。疲れてるし、さっさと宿に戻ろうか」



 他の面々も疲れているので歩き出し、<妖精の洞>へと戻って行く。ミク達が歩き出すも他の連中はスルーして見送る。どう考えても何かをやったのだが、何をやったのか分からない相手など怖くて誰も喧嘩を売ったりしない。


 先ほどの連中は素行が悪いというより愚かなのだ。何故なら相手がどんな力を持っているか分からずに喧嘩を売ったのだから、どう考えても愚か以外に言い様が無い。頭が悪いと世の中は生きて行けないのだ。


 <妖精の洞>に戻った面々は食堂の椅子に座ってようやく一息吐く。流石に1階層20キロは疲れたらしい。それでも第1エリアは階段同士が近いのでそこまで苦労はしない場所である。



 「第2エリアや第3エリアと進んで行くと、もっと階段同士が離れてたりするから、その分だけ時間も掛かるし疲れるよ。だからこそ上手く【身体強化】が使えないと先に進めないんだ、それに素の体力も必要だしさ。ここでダンジョンアタックを繰り返していると必要な体力も自然につく」


 「それはそうだろうけど、それまでにどれだけ大変かを考えると二の足を踏むなぁ。とはいえ体力があって悪い訳じゃないし、階段で休憩しつつ進めば良いだけか」


 「それにダンジョンの地図は探索者ギルドに貼り出してあるから、それを写して持って行けばいいだけ。階段の場所さえ知ってたら、そこまで苦労する事も無いよ。当たり前の事だけど、魔物に気をつけるくらいかな?」


 「ダンジョン内ではそれに気をつけなきゃ駄目でしょ。こっちの星の場合は外でも気をつけなきゃいけないみたいだけどさ」


 「時間があるなら他の国に行っても良いと思うけど、今はまだ早いかなぁ……。それに行ってもそこまで変わらないだろうし。行って意味があるのはジャンダルコとドルムぐらい?」


 「そうですね。ジャンダルコは荒地から砂漠ですし、ドルムは地下王国の名の通り、地下に街が築かれていますから。あそこなら観光のし甲斐があると思います」


 「地下に町を作ってる国があるんだ。何でまたそんな事をしてるの?」


 「ドルムはドワーフの国なんだけど、冬になるとメチャクチャ寒いのよ。だから地下に町を作って、それで寒さを凌いでるってわけ。食料も乏しいから輸入に頼ってるけど、代わりに鉱山を多数抱えてるから生きていけるの」


 「ドワーフかー。ずんぐりむっくりの人達ってイメージがあるけど、本物はどうなの? やっぱり背が低くて横に大きくて指が太いの?」


 「まあ、基本的にはそんな感じね。ただ、もちろん背の高いドワーフも居るし指が細いドワーフも居るわよ。そうじゃないと細工物とか作れないでしょうに。指が太いドワーフは大体指が太くても出来る仕事をしてるわよ」


 「夢もロマンもないけど、だいたいそんなものよね。太くてゴツイ指でどうやって細かい仕事をするのかって考えたら、流石にそれは無理って分かるし。現実的じゃないもの」


 「まあ、せやわなぁ。流石に太い指やったら、物理的にどないもならんやろ思うわ。あの太い指で小さな細かい仕事は無理やろ思うし、もし出来るんやったら何か別の力使とるんちゃうか思うわ。サイコキネシスとか?」


 「一気にファンタジーからSFに変わった気がするのは気のせいでしょうか? それ系ってSFのイメージがあるのですよね、何の作品の影響かはちょっと忘れましたが……」


 「私はサイコキネシスとかテレパシーもファンタジーに分類されると思いますが……。その辺りって厳密にはどうなのでしょうね?」


 「さあ? そこはどうでもよくない? それより食事が来たから食べましょうか。こっちの星に来たら、こういう食事がスタンダードになるって覚えておきなさいよ」



 そうアレッサがいう食事は、コウジ達がファンタジー作品でよく見る食事に似た物であった。それでも野菜と肉が多く、そこまで味も悪くなかったので十分に食べられた。ミクは相も変わらずの大麦粥だったりする。



 「大麦の粥……ですか?」


 「炭水化物が少なく他の栄養素が多いからね。独特な匂いはあるし好みが分かれる味だけど、玄米よりも栄養は豊富で脂肪になりにくいって言えば分かる? だから食べてるの。これなら沢山食べても太ったりし辛いよ」


 「それに栄養を多数とってないと危険みたいだしね。あんた達の星に行って色々見たりして分かったけど、あんまり同じ物ばっかり食べてるのも良くないって分かったし」


 「それなら豊富な種類の物か、1種類で豊富な栄養素を含んでいるものかになります。その中で安くて手に入りやすいものと言えば……」


 「まあ、大麦になるね。だからこそ私は大麦を食べてるんだよ。もちろん肉や野菜も食べるけど、小麦を食べるよりはねえ」


 「私達もそうした方が良さそうですね。もちろん炭水化物も必要な栄養ではあるのですが……」


 「それでも太り難い食事ってなったら、そっちを選びます。それに健康なら余計に」


 「それはそうよ。肌も健康も食事は第1で、第2に運動よ。今日は足が痛くなるほど歩いたし、運動は十二分にしたでしょ。これ以上の運動は要らないわね」


 「これ以上歩けと言われても無理ね。とはいえ小さな子供達があんなに頑張ってた以上、泣き言を言うのもどうかと思うけど」


 「あの子供達も、確かに今思い出してみたら元気に働いとったなぁ。まあ、あれだけ山ほどの麦とか生えとったら、そら楽しいやろうと思うわ。何たって目の前に自分らが食うもんあるんやし」


 「だからゴールダームでは孤児院なんかも暗い雰囲気が無いのよ。食べられていればさえ、そこまで辛い事になったりもしないわ。そもそも国だって支援してるんだし」


 「それに探索者も協力する事が多いですしね。そもそも両親が探索者で、その両親がダンジョンから帰ってこなかった子供達が多いですから……」


 「そうか、探索者が多いって事はそういう事になりやすいんだな。それはそれでどうなのかって思うけど、探索者っていう仕事がある以上は仕方ないんだろう」


 「それでもゴールダームでは恵まれています。孤児の数はそれなりに居ますけど、それでもダンジョン1階に食べ物が豊富にありますからね」



 景気にも左右されず天候にも左右されない。行けばそこに食料があって刈り取れば済む。それは非常に大きな意味を持つ。それでも死亡率が高いのが、こちらの星である。


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