0582・コウジ達のゴールダーム観光
全員集まり準備も整ったので千代田魔法陣へと出発する。それぞれの車に乗り込んで移動し、千代田魔法陣の前まで移動したらさっさと魔法陣に進む。マスコミ連中が鬱陶しいが、そもそも彼らの移動の邪魔は出来ない。
魔法陣の中央まで進むと、一行はゴールダームへと転移された。
前回1度試しているが今回は正しくゴールダームへの滞在である為、少し緊張しているコウジ達。そんなコウジ達を引き連れて移動していくミク。立ち止まってもいられないので、ビデオカメラで撮影しながら<妖精の洞>へと案内する。
ゴールダームの町中を興味深そうにキョロキョロしながら進む一行。獣人が居たら驚き、人間が居ても不思議がる。彼らからすれば異国よりも遠い異星なのだから仕方ないのであろう。
そんな田舎者のような姿をしつつも歩いていき、宿の前まで歩いてきたらミクが説明する。
「ここがイリュの宿である<妖精の洞>。とりあえず部屋を確保しておかなきゃいけないから、まずはイリュに話して部屋を確保する。お金に関しては既にアレッサが払ってる筈。私が持ってたお金の全てを持ってる筈だし」
「全てって、どれぐらいですか?」
「忘れた。多分だけど大金貨も含めたものだったと思う。闇ギルドを強襲して潰して、そいつらの持ってたお金をゴッソリ頂いて来た事もあったし。だから結構な金額だった……筈」
「そんなにお金を持ってたんですか? なのに何故アレッサさんに渡すんです?」
「まあ、いつでも幾らでも稼げるしねえ。代わりに向こうのお金はほぼ私が持ってるから、アレッサは全くと言っていいぐらいに持ってないし。どっちかが払うって感じかな?」
「何だかよく分からない関係ですね? いえ、他人の関係に横から口を挟んだりはしませんけど……」
「別に変って訳でもないんだけどね。それより宿の部屋を確保しておこう。まあ、宿の部屋が満室って事は無いだろうけど」
「え? 何故ですか? ……失礼ですが、そこまで大きい宿でもないですし、満室である可能性はあるのでは? 何故無いと言えるのです?」
「それはここが<鮮血の女王>の宿だからだよ。ついでにスラムに非常に近い宿なの。この隣がスラムだから。立地的にここまで泊まりに来る者は多くないんだよ。ここより大通りの宿なんかに泊まるのが一般的だね」
「「「「「「「「へー……」」」」」」」」
コウジ達が納得したところで宿に入り、受付に座っている女の子にイリュを呼んでもらう。するとすぐにイリュが出てきたので部屋割りを決める事になった。
「俺は1人部屋として、センはどうする?」
「私は皆と一緒の部屋で良いよ。そもそもバラける必要も無いし、バラけない方が良いと思う。修学旅行的な感じ?」
「そうですね。ですが北条君も無理に1人部屋でなくてもいいと思いますよ。私と2人部屋でどうでしょう?」
「どうでしょうじゃないですよ、八重さん。抜け駆けは禁止の約束でしょうに、いったい何を言い出しているのですか。それはズルいでしょう?」
「せやったら、あんたら3人部屋でええやん面倒臭い。それやったら納得やろ。部屋ん中で好きなだけ取り合ったらええがな。センも巻き込まれた無いやろ?」
「うん。色々と面倒臭いし、巻き込まれるのはちょっと……。話を聞くだけでも面倒なのに、色々と質問されても私はお兄ちゃんじゃないから知らないし。そんな不毛な質問を何度されたか……」
「た、大変やったんやな。ご苦労さん。せやからそっちの3人は決まりにして、あたしらは4人部屋かいな」
「ごめんなさいね。4人部屋は埋まってるのよ。女の子だけのチームがあって、その子達が使ってるわ。そもそもこの宿は表向きにやってるだけでもあるから、そこまで大人数を想定してないの」
「そうか、せやったらしゃあないな。明日香はんと慶子はんとセンでええわ。アタシはジロウエモンらと泊まるさかいに」
「そう? ならタケルだけが1人部屋ね。じゃあ、そういう事で鍵を渡しておいて。向こうのホテルとは違うから覚悟しなさいよ?」
「「「「「「「「………」」」」」」」」
何となく覚悟の種類が分かったような気がしつつも、まずは自分達が泊まる部屋へと行くコウジ達。そこで見たのは木のベッドに清潔そうなシーツが掛かった寝具だった。そこまで悪くはないのでは? と思う一行。
「それでも日本のベッドに比べれば当然良くないからね。我慢はする事になるよ。代わりにガイアの暗黒時代のような汚さは無いから。魔法を使えば綺麗になるしね」
「それは良い事よね。私達も使えるけれど、魔法を使えばすぐに綺麗になるから重宝するのよ。そう考えると中世暗黒時代とは雲泥の差と言えるくらい清潔よね、こっちは」
「一応ビデオカメラで撮ってるから、その話題は止めましょう。向こうで見られた際、絶対に文句を言ってくる国があるわよ。どうせ諸外国の人達まで見るんだし翻訳もされるもの」
「そうね。悪口になりうそうな言葉は止めておきましょう。とはいえこちらが思っていた以上に清潔な事に変わりはないんだけど」
「とりあえず今日夜に寝てみてからやで。どうしても自分の体に合わへんねやったら、こっちに来るんは止めた方がええやろうし。それかエアーマット買うてくるかや。キャンプ用のあるやろ、あれ敷いたらええねん」
「そうだな。最悪こちらで生活する事になるし、向こうから色々と持ってきたら生活環境は改善させられるだろう。色々と考えてみるか……」
タケルはこっちで暮らす事を念頭に入れているからか、こちらでどう生活するかを考えているらしい。しかしこちらで暮らす場合、ソロ活動は思っているよりも難しい。その辺りは経験させた方が良いと黙っているミク。
宿の紹介が終わったところで、次は探索者ギルドだ。別に無理矢理作る必要は無いのだが、それでも記念に探索者証を作っておく事にしたのだ。ミクは宿に居たアレッサとティアを連れて探索者ギルドへと移動する。
「あんた達やっと来たと思ったら、宿の部屋に入って「ああでもない、こうでもない」とか話すってなに? もうちょっと色々とあるでしょう、リアクションとかいうヤツ」
「そこまでの事とは思いませんでしたし、予想の範疇にはありましたから。ですので思っていたよりはマシな部類に入ります。一番酷い想定は中世暗黒時代の不潔さで、平安時代当初ぐらいの理不尽なのを想像していましたから。これでも想定よりは遥かにマシです」
「それは不潔すぎるし危険すぎると思う。中世暗黒時代ってあまりにも汚すぎて病気が蔓延した時代だし、日本の平安初期って理不尽に人が殺されたリ弾圧されてた時代でしょ? 流石にそれは無いと思うけどなぁ」
「まあ、私も無いとは思っていましたよ? でも一番酷い想定はそういうものを想定していたというだけです。ですのでこの状況は随分マシでしょう?」
「まあ、それは確かに……」
ミクがビデオカメラで映していたとはいえ、別の星なのだ。幾ら前もってある程度は見れているからといって、現地の文化や風俗は全く分かっていない。
親指を隠しただけで集団リンチに遭うかもしれないし、帽子を被っていただけで笑われるかもしれない。黒髪だというだけで差別されるかもしれない。
日本人が想像するファンタジーに合致しやすい国なだけに、色々なラノベやアニメの設定が頭の中に出てくるのだ。
その設定の最悪を想定すると、未だに楽観視できないヤエであった。完全に考え過ぎなのだが、納得は本人しか出来ないので難しいところである。




