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0574・千代田ダンジョン その4




 「そもそも貴方のような者を好きになる者など居ませんよ? 自分の視線や目線が下卑た爺どもと同じだと理解していないのでしょうけれど、貴方の視線や目線は女性を物のように見ている者の目です。そんな目で見てくる男性を好む女性は居ません」


 「そう、本当に下卑た爺どもとそっくり。自分では理解していないところも含めて本当によく似てるわ。その卑しい視線を女が分からないとでも思ってるのかしら。そしてそんな目を子供の頃からしているという異常性も、また理解出来ないのでしょうね」


 「転生者というならば分からなくもないけれど、でも異常な子供だったという自覚は無いようね。仮に貴方のいうゲームの世界だったとしても、貴方は主人公足り得ないでしょ。子供の頃から女性を物のように見る主人公なんて居ると思う?」


 「そんなんるわけあらへんわな。18禁の主人公やったらるやろうけど、<ダンジョン暮らし>とかいうゲームはたぶん全年齢なんやろうしなぁ。流石に王道主人公がクソみたいなヤツは無いで」


 「………」


 「簡単に考えると、物語の主人公として生まれても、中身が主人公でない以上は主人公になれないって事だろうね。おそらくお前の知っているゲームの主人公はハーレムラノベで出てくる主人公だったんだろう。お前は完全に違うタイプだけど」


 「オレが、オレだから……千芭尊は主人公じゃなくなった? 前にそんな事を考えた事があるけど、やっぱりそうなのか……」


 「そもそもここは現実だし、ゲームの中じゃないでしょ。まさかゲームの通りになるとでも思った? 残念ながら完全に現実だよ。しかも主人公の中身がクソに変わってる以上、その物語はとっくに崩壊してる。物語の強制力? そんなご都合主義が現実にある訳ないでしょ」


 「………」


 「そもそも物語であっても、その物語の中の者にとっては現実ですよ。そこにゲームの知識を持つ者が居ても、現実である事に変わりはありません。貴方はこの世界をゲームと捉えたのでしょうが、私達がゲームの中のキャラクターなどの訳がないでしょう。どれだけ失礼な考え方か理解していないのでしょうね」


 「怒るのは分からなくもないけど、しっかり聞かせてもらおうか。ただし歩きながらね。今はダンジョン攻略の最中だ。休憩は終わりにして先を急ぐよ」



 ミクの一言で立ち上がり、歩き出す一行。その後ポツポツと話し始めるタケル。<ダンジョン暮らし>というゲームの事、そこでの主人公やメインヒロイン、サブキャラクターの話。更には何処のダンジョンに何があるかまで。



 「メインヒロインである葉月さん達を、ゲームの攻略キャラみたいに見てたって事か……。だから人じゃなくて物みたいに見てたんだなー。キャラクターを見る目ってなると、そうなるのかな?」


 「それでもおかしいと思うけどね。後、お兄ちゃんがモブっていうのは分かる気がする。昔から地味って言われてきたし」


 「まあ、言いたい事は分からなくもないな。俺は主人公ってガラじゃないし、なりたいとも思わないからさ。アレだ、勇者という名の便利屋。主人公なんてアレと同じ扱いだろ? だったらこっちからお断りだ」


 「北条君の言っている事も分かります。アレをしなきゃ、コレをしなきゃと都合よく使われる。そんな立ち位置は御免ですし、巻き込まれたくもありません。そんなのは奉仕精神に溢れる方だけがやればいいのです」


 「本当に八重さんの言う通りです。訳の分からない揉め事とか頼み事とかを持ってこられても困りますし、ここは千芭君に全て任せましょう。主人公らしいですし」


 「えっ?」


 「主人公って事は頑張らないといけないでしょ。そういう事に巻き込まれ続けるのも主人公なんだし。でも現実問題として、そんな男を好きになるかと言えば無いわね。だっていつ死ぬか分からないし、危険に巻き込まれるのなんて誰だって御免よ」


 「本当よね。流石に便利屋の仲間として扱われるのは……。ちょっと考えれば誰もが遠慮するわよ。ま、私達は関係ないしメインヒロインでもないから、千芭君だけ頑張りなさい。有名になれば、それなりに良い女性を捕まえられるわよ」


 「そうですね。ゲームではないのですから、他の女性を捕まえればいいだけです。メインヒロインとされている私達以外には変な目を向けていないようですしね。他の女性なら騙されてくれますよ。きっと」


 「………」



 情け容赦ない無慈悲な攻撃で、ついにタケルは撃沈したようである。そもそも下卑た視線を向け続けていた。これだけでマイナスを通り越している。つまり、何をどう言ったところで取り返しなどつかないのだ。


 それを理解したからだろう、ぐうの音も出ないタケル。流石に居た堪れないコウジは助け舟を出す。



 「千芭は色々なダンジョンの事を知ってるんだし、そこに行ってアイテムを取ってきて売れば大金持ちになれるんじゃないのか? 仮に葉月さん達が無理でも、有名人とかは狙える気がするけどな。名家である千芭家の人間なんだし」


 「有名人と呼ばれるのは大半がアレな人達ですけど、中にはまともな人も居ますから、そういう人を狙えばいいと思いますよ。ただ、その年齢で高額アイテムを手に入れても千芭家に取られるでしょうから、成人してからでしょうか?」


 「もしくは洗いざらい葉月家の御大に話して協力を要請するかね。そうすれば御大だもの、協力はしてくれると思うわよ。千芭家が鬱陶しいらしいしね」


 「なぜ千芭家はあんなにも葉月家に対して攻撃的なのかしらね? どうにも葉月家が名家のトップなのが気に入らないって感じじゃない? そこが妙なのよ。そもそも6名家は互いにメインの業種が被らないようにしてるのに」


 「たしかにせやな。千芭家が葉月家に……いうんはちょこちょこ聞くけど、何でかは知らん。おとんからも聞いた事ないし、もしかしたら誰も知らん?」


 「私も理由までは聞いた事が無いわね。千芭家と葉月家の間で何かあったのかしら? 千芭君は何か知らないの?」


 「いえ、何も。そもそもあの男はオレに禄に何も話しませんし、あの兄貴は危ない考えしか持ってないので近付きたくないんです。正直に言って、家に居場所が無いんですよ。オレ」


 「家に居場所が無いって……」


 「いや、事実だ。正直に言って主人公じゃなきゃ、お前みたいに一般家庭の方が良かったよ。すっげえ寒々しいんだぜ? あの男はふんぞり返って偉そうにしてるだけだし、あの女は何処かで買ってきた宝石とか見せびらかすだけ。兄貴は自分の手柄を立てようと犯罪スレスレすら平気でやる。あの一族は頭がおかしい」


 「マジで? 名家って大変なんだなー……痛っ!!!」



 タケルが足下を見ると、コウジの足がヤエとサクラから踏まれていた。それはもう力いっぱいグリグリと踏まれている。それを見てちょっと引くタケル。



 「流石に名家の全てがそういう家ではありませんよ? そこは考え直していただかないと」


 「ええ、桜さんのおっしゃる通りです。北条君、そこはちゃんと考え直して下さいね?」


 「は、はい!」


 「………」



 微妙な顔でヤエとサクラを見るタケル。もしかしたら自分はメインヒロインの良い所だけを見ていたのかもしれない。現実に生きてるならこんなもんだよな、と色々と納得するのであった。


 魔物はミクや<鮮烈の色>にリュウレンが倒してくれているので特に問題なく、14階のブルーオーガどころか、15階の爪が鋭い熊すら一撃で殺している。


 そんな中、階段を見つけた一行は16階へと下りていく。未だに色々と話しているが、タケルも徐々に立ち直ってきたようだ。


 しかし16階の火山のような光景に、ミク以外の全員の顔が引き攣る。それでも進まなければいけない以上、渋々進むのであった。


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