表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/994

0051・言葉の重さ




 脱出したミクとカルティクは真っ直ぐ探索者ギルドへと進む。特に周りから何かを言われる事もなく移動し、探索者ギルドの裏に行くと素材を出す。



 「おお、お前さんか。それにしても牙と爪だけなんぞ珍しい事もあるもんだ。お前さんなら死体を丸ごと持ってくると思うのだがな?」


 「ツインヘッドフレイムは牙と爪しか売れないって聞いたから、それしか持ってきてない」


 「なに!? ツインヘッドフレイムだと!? …………うーむ。…………間違いないな。これはツインヘッドフレイムの牙と爪じゃ」


 「特徴的な赤のラインと焦げた跡がありますから、間違い無いでしょうね。それにしても第4エリア突破かー。彼女なら第5エリアのマッスルベアーやスチールディアーにオーガを持って帰ってきてくれるでしょう」


 「おいおい、アレらはかなりの魔物だぞ。早々簡単に持って帰れたら、誰も苦労はせん。特にマッスルベアーの牙とスチールディアーの角はエクスダート鋼の素材じゃからな。特に高値で売れるが……」


 「危険度は怖ろしく高いと聞きます。欲しいというのは当然ですけど、簡単に取ってこいと言えるものでもないですね」


 「そういう事だ。解体師としても腕が鳴る……と言いてえが、アレらは流石に危険すぎるからな。お前さんも無理に戦うんじゃないぞ。第5エリアなら逃げても誰も笑わん。むしろ命を残す事の方が重要じゃ。覚えておくようにな」


 「分かった」



 木札を貰ったミクとカルティクは、ギルドに入り受付へ。受付嬢に提出すると、大きな声で叫ばれた。



 「えっ……。ツインヘッドフレイム!? ツインヘッドフレイムの牙と爪って書いてあるんですけど!?」


 「受付嬢が売った物をバラすというのはどうなのだ? これで我々が狙われたら、どう責任をとってくれる?」


 「あ、いえ……それは、その………」



 周囲からはあからさまに興味津々という目を向けられており、一部からは悪意の篭もった視線を向けられている。探索者が同じ探索者に後ろから襲われるというのは、それなりにある事だ。


 だからこそ、最低限の自衛はしている。その一つが自分の情報を無闇に外に出さないという事だ。もちろん知られていい情報は出すのだが、知られて困る情報などは出さない。


 どんな者でも裏切りに遭えばどうなるかは分からない。優秀な人物が信頼している友人に暗殺されるという事もある。決してこの世は優しい訳ではなく、そんな事は探索者は全員知っているだろう。


 しかし受付嬢は違う。彼女達はただ受付業務を熟しているだけだ。探索者と違い、命を懸けてなどいない。だからこそ他人の命に対しても軽いのだ。


 自分の命が危険に晒されていないから、探索者の命に対する危機感が理解できない。理解できないからこそ、軽く口に出してしまうのだ。ミクは前にもこれをやられていて、ガッツォとかいう少年に絡まれている。



 「そんな事があったのか。本当に受付はどうなってるんだ? 私は久しぶりに木札を出したが、幾らなんでもメチャクチャだろう? むしろミクを殺そうとしているとしか思えないぞ」


 「い、いえ! 私はそんなつもりじゃ!!」


 「そんなつもりかどうかは別にして、お前のやった事はそういう事だ。間接的に殺そうした事と変わらない。これが探索者ギルドの受付というのは、本当にマズいぞ?」


 「「「「………」」」」



 どうも他の受付嬢も大なり小なり似たような部分があったらしい。むしろ黙った受付嬢に対し、探索者から厳しい視線が向けられている。


 それはそうだろう。自分達がどれだけ気をつけても、受付嬢が漏らせば何の意味もなくなるのだ。つまり探索者ギルドが自分達の命を危険に晒しているとさえ言える状況である。


 どんな者でもそうだが、自分の尻に火が着くとなれば話は別だ。ミクに対して悪意を向けていた連中でさえも、今は厳しい目で受付嬢を見ている。そんな中、ギルドマスターが偶然下りてきた。



 「………何だか随分と雰囲気が悪いが、何かあったのか?」



 ここに居る全員を代表してカルティクが言うと、流石のギルドマスターも受付嬢を睨む。その顔を見て怯える受付嬢。



 「お前らなあ、探索者どもがどれだけ気をつけても無意味じゃねえか。てめえらの所為で殺されたら、いったいどうしてくれるんだ? お前らが残された家族の面倒を看てくれるとでもいうのか!? ああ!!」


 「「「「………」」」」


 「どうしてゴールダームに孤児が多いか知ってるよな!? それだけ死んじまう探索者が多いんだよ! 中には殺された奴も大勢いる。てめえらの所為で、死ななくてもいい奴が死んでるかもしれねえんだぞ! 分かってんのか!?」


 「「「「申し訳ありません!!!」」」」


 「……ったくよお。探索者ギルドっつーのは、探索者の為のギルドなんだよ。受付嬢に給料やる為のギルドじゃねえんだ。そこを忘れるなよ? 今度忘れてたら、お前ら全員クビな」



 受付嬢は青い顔で「コクコク」頷くだけとなっていた。その様子から、彼女達が如何に軽い気持ちで口に出していたかが分かる。自分達の喋っている言葉の重大性を,まるで認識していなかったという事だ.


 ギルドマスターは呆れた感じで奥に入っていった。どうやら何かを取りにきたらしい。ミクとカルティクは大銀貨3枚ずつを貰い、ギルドを出て宿へと戻る。その道の最中に、カルティクが話し掛けてきた。



 「ミクには芝居に付き合ってもらい感謝してる。流石に途中からはバレていたみたいだからな。私がワザとああいう発言をしたのが」


 「まあねえ。何か周りを窺ってるし、ギルドマスターの部屋を確認してるっぽかったし。これは何かあるんだなと思ってたよ」


 「ギルドマスターから言われていてな。最近の受付嬢の軽さは少々目に余ると。先ほども言っていた通り、探索者は命がけだ。だからこそ殺されないように気を付けるが、受付嬢は命の危険が無い。なので簡単に口走る」


 「お金を持ってると思われれば襲われる、それと同じだね」


 「その通り。だからこそ探索者はお金を持っていると周囲には見せない、見せる事が危険だから。それでもギルドに屯している奴等は何となく知っている。そこから情報が出回っているのかは知らないが、ギルドマスターはまず受付嬢に釘を刺す事にした」


 「それがさっきのお芝居って訳か」



 宿に戻ってきたので食堂に行き、大銅貨1枚で大麦粥を注文する。カルティクも注文を済ませると、先ほどの話の続きになる。



 「打ち合わせなどは無かったけども、ちょうど良い機会だからと話題にしたわけ。途中で【気配隠蔽】を使ったり解除したりと繰り返し、ギルドマスターが気が付くように仕向けたけど」


 「そういえばカルティクって、ちょこちょこ話し方が変わるよね。それって何で?」


 「ああ。これは他人に対して構える時と、そうでない時に分けてるの。まあ、自分で切り替えてる時もあれば、勝手に言葉使いが変わってる時もあるんだけど。単純に言うと、意識を切り替える為かな?」


 「意識をねえ……」


 「ミクみたいに圧倒的なら必要ないんだろうけど、私は弱いのよ。だから意識を切り替えて緊張感を持たなきゃいけない時には、厳しい言葉使いをワザとしてる」


 「それで助かってきたなら、それで良いんだけど。何か不思議だなと思ってね」


 「私も長く生きてきたから、それが癖となって抜けないって部分もあるのよ。たまにどっちが自分の自然な言葉使いか分からなくなる事もあるし、でも意識を切り替えないとダンジョンなどでは危険だし……」



 どうやら意識を切り替える為の暗示のようなものかと、ミクは当たりをつけるのだった。


 この意識というのは重要で、実力の高い者ほど上手く意識を切り替える。カルティクがその方法で上手くいくなら、ミクは言葉など気にしないのだが、理由を聞かなければ分からなかったので聞いたのだ。


 そして理由を聞き、納得したようである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ