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0050・第4エリア攻略




 ミクが前衛で様子を窺い、後衛のカルティクは離れて様子を見ている。ミクならばどうにでもなる為、カルティクは決して前には出ない。何ならミクを見殺しにするだろう。何故なら1人でも余裕だからだ。



 (ミクに対してだけは見殺しという言葉が成立しない。彼女にとっては1人が一番強いから、むしろ仲間が居ると足手纏いになってしまう。私が一番するべき事は、彼女の邪魔を一切しない事。つまり逃げ回る事だ)



 カルティクも長く生きている為、流石に自身が何をすべきかは理解している。強すぎる者にとって、仲間は足枷以外の何物でもない。だからこそ、強者の足を引っ張らない事が弱者の最もするべき事なのだ。



 (流石にそこを間違えたりなどしないが、ツインヘッドフレイムは足が速い。本気で追い掛け回されれば逃げられないだろう。魔法を撃つ用意をしておき、連続で撃って牽制するのが一番か)



 カルティクがそう思っていると、ブレスを吐いていた個体が動き出し、そいつはカルティクに向かってきた。流石にそれは予想外だったが、カルティクは冷静に【水槍】を発射する。


 しかし距離がありすぎた為、簡単にかわされてしまう。再び魔法を放とうとするも、ツインヘッドフレイムは一気に跳躍して接近し、最早カルティクの目の前である。



 (しまった!!)



 カルティクがそう思った瞬間、ツインヘッドフレイムの体は横に吹っ飛ぶ。ミクがウォーハンマーを投げつけたからだ。しかしそのミクは様子見をしていた個体に押し倒されていた。


 様子見をしていた個体は、ミクがウォーハンマーを投げた事をチャンスだと認識。一気に接近して噛み千切ろうとした。しかしミクもそれをしっかり認識しており、カイトシールドを向けて防ぐ。


 しかしながらツインヘッドフレイムの体重までは防げず押し倒されてしまい、現在の状況になってしまった。ツインヘッドフレイムの体が大きい為、地面に倒れているミクに簡単には噛みつけない。


 そのうえこの接近距離だ。ブレスを吐けば自分も受けるのか、ツインヘッドフレイムはブレスを吐こうとはしなかった。ミクの方は膠着状態に陥っているが、カルティクの方はそうではない。



 (今のうちにコイツを倒す! そうでないと不利になる。幾らミクのウォーハンマーを喰らったといっても、所詮は投げただけだ。ミクが力を篭めた一撃なら倒せているんだろうが、こいつは胴体に喰らっただけ。時間を置くと回復される)



 その考えから一気に攻めて倒す事に決めたカルティク。両手に握る大型ナイフを握り締め、一気に接近して切り裂く為に走り出す。


 【水弾】や【水槍】を放ちながら真っ直ぐ接近し、相手が口を開けて噛みつきにきたら横にステップしてかわす。ツインヘッドフレイムの左側面を走りながら魔法を連発し、近接攻撃が出来る隙を探す。



 (流石に周りをウロチョロされると鬱陶しいだろう。魔法でダメージを多少は受けているんだ、当然イライラは募っていく。このまま続ければ必ず隙が生まれる。そこを一気に攻撃して……!)



 カルティクを正面に見ようとするも、カルティクが側面へと回り込む方が速い。当然ながら側面から攻撃を受け続ける事になる。そのイライラが限界に達したツインヘッドフレイムは、当たらないと分かっていても噛みつきにいく。


 その攻撃は当たり前のように外れ、そしてカルティクは一気に近付いてナイフを突き立てた。右手に握るナイフを振り下ろして抜き、そこに左手のナイフを突きたてて抉る。


 痛みで吠えるツインヘッドフレイムから素早く離脱したカルティクは、再び側面に回って魔法を連打。特に自分が傷つけた場所を重点的に狙う。そこに【水槍】が当たる度に痛みでツインヘッドフレイムの動きが止まる。


 止まれば近付いてナイフで切り裂き、傷口を広げていくカルティク。ツインヘッドフレイムは憤怒の表情でカルティクを殺そうとするも、カルティクは側面に逃げ続け、決して正面には立たない。


 そんな戦いの結末は突然訪れる。傷口を抉り広げていたカルティクは、いきなり倒れたツインヘッドフレイムに困惑する。



 (急に倒れた!? もしかして死んだフリか? しかしツインヘッドフレイムがわざわざそんな事をするとは思えない。ならば出血多量か何かで立てなくなった?)


 「止めを刺さないの?」


 「ひゃぁ!!! ……ミク、驚かせな……あれ? ミク、あの圧し掛かってたツインヘッドフレイムは?」


 「ああ、あいつならウエストポーチから槍を取り出して、下から滅多刺しにしてやったよ。噛みつきさえ防げばどうにでもなる相手だから、特にどうこうなんて無いし、私の方の戦闘はとっくに終わってた」


 「だったら手伝ってくれても良かったんじゃない?」


 「危なければ助けたけど、上手く戦ってたじゃない。あれなら余計な手出しはしない方がいいよ。手を出して倒せた代わりに大怪我しましたじゃ、手出しした意味が無いしね」


 「まあ、確かにそうだけど……」


 「もう止めを刺すだけなんだから良いじゃない。はい、コレ。近付かなくても済むでしょ」


 「え? ああ、ありがとう」



 そう言ってミクが差し出した槍を受け取り、カルティクは慎重に止めを刺しにいく。ブレスを吐かれたら死んでしまうので、倒れているツインヘッドフレイムの背中側から接近して突き刺していく。


 流石のウィリウム鋼というべきか、あっさりと胴体に突き刺さり、三角錐の穂先が傷口を広げる。ツインヘッドフレイムの悲鳴が響くが、カルティクは気にせず何度も突き刺していく。


 何度も刺していると悲鳴も無くなり、ボス部屋の壁が観音開きに開いた。どうやら倒し終わったらしい。



 「どうやら倒し終わったみたいだけど、ボスの素材はどうする? 結構大きいけど、素材として売れるのは牙ぐらいかな?」


 「いえ、ツインヘッドフレイムの素材には爪も含まれるわ。ミクは……死体を食べたみたいだけど、牙と爪はどうするの?」


 「まだ本体空間に死体は置いたままだよ。牙と爪で良いなら剥いでから食べよう。まずは血抜きが先かな?」



 そう言ってミクはレティーを転送し、血抜きをさせたら死体から牙と爪を取っていく。本体の牙で首と足を切り裂き。解体しながら人外パワーで引っこ抜く。


 そうやって手に入れた牙と爪を分体に転送して、死体を貪り食うミクであった。尚、これでツインヘッドフレイムの姿にも変身できるようになったが、使える場所はあるのだろうか?。



 「天然にも居るらしいから全く使えない訳じゃないと思うけど、ゴールダームの近くに出てくるような魔物じゃないわ。だから使えないんじゃない? ミクが人間種を襲うならオークで十分でしょ」


 「まあ、オークかゴブリンかなぁ……。前にエルフを襲った時はゴブリンだったしね。あの姿だと相手がバカにしたり舐めてくれるから助かるんだよ。色々な意味でゴブリンの方が使い勝手は良いかなぁ」


 「使い勝手というのも色々アレだけど……っと、そろそろ帰りましょうか。流石に昼を過ぎてるだろうし、ギルドで精算してから宿に戻りましょう」


 「そうだね。カルティクも1人で勝てたから言い訳は出来るし、今回の攻略は色々な意味で上手くいったんじゃないかな。カルティクが第5エリアに行くかは知らないけど」


 「行かないに決まってるでしょ。誰も攻略できてない危険地帯よ? 流石に行ったって死ぬ可能性が高いし、実入りが良いとも限ってないもの。それに不良探索者や迷賊を監視しないとね」


 「ああ、いつもの仕事を熟さないといけない訳ね。情報収集してくれると私も助かるし、頑張ってよ」


 「ええ」



 会話をしながらミクとカルティクは魔法陣に乗り、第4エリアを脱出するのだった。


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