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0494・軍人への魔法指導 その8




 「さて、そろそろお昼だけど、上への階段で食べようか。色々と話しながらやらせたけど、大凡おおよそ問題ない事が分かったからね。これからは上に戻って魔法の練習と、武器を持って戦う練習を始めるよ」


 「魔物との戦いも学ばねばなりませんからな。それに【身体強化】もです。良い悪いは別にして、これからは出来て当たり前の時代が来るのでしょう。治安を守る為にも【身体強化】は必須となるかもしれません」


 「そのうえ銃弾を弾く防具でしょう? 我々軍はともかく警察はどうするんでしょうね。銃弾を防ぐ防具を身に着けたヤツが、無差別殺傷事件を起こす可能性もあります。場合によっては即射殺を行った方が良いかもしれません」


 「遠方からの狙撃ですか? 確かに防具と言っても。顔が全て守れる訳では無いでしょうし、狙えばダメージを与えられる場所はあるでしょう。なので銃弾ではどうにもならないとも限っていません」


 「それでも盾だのを使われると難しくなる。とはいえスタンピードの事も考えると、色々と持っておく必要はあるしなぁ……。兼ね合いが難しいと言わざるを得んな。アメリカでは一部の場所で魔物の素材が取り引きされているらしいしな」


 「魔物の素材ですか?」


 「何でもアメリカの一部のダンジョンに出てくる草の魔物らしい。そいつの体を乾燥させて細かくし、パイプで吸うんだとさ。良い気分になるものの麻薬のように中毒性も依存性も無いうえ、体に健康被害も無いんだと。そういう理由もあって、かなりの高値で取り引きされているそうだ」


 「健康被害が全く無い薬物ですか……。そんな物が国内に氾濫したら結構マズいのでは?」


 「そう思うが、良い気分になるのも一時的なものらしいからな。効果は10分くらいで切れると聞く。なのでそこまでの依存もしないとは言われている。我が国なら取り引き禁止か国家の専売か、おそらくどちらかだろう」


 「また専売事業の復活ですか? 別に悪いとは言いませんけどね。実質、魔物素材なんて専売と変わりませんし」


 「<日本ダンジョン探索者支援協会>そのものが、政府直属の下部組織ですからね。そこが魔物素材を吸い上げて各企業に売っているんですから、確かに専売に近いですね。だからこそ葉月グループが私有地ダンジョンを利用する事にしたんですし」



 6階へと上がる階段に着いたので、階段の途中で腰を下ろして休憩する一行。ミクはそれぞれの弁当などを渡しているが、他の面々は話を続けている。



 「お祖母様は全国で集められている魔物の素材の量と、各企業に売られている素材の量が合っていないと言われていましたね。いったい素材が何処に消えているのか不思議だと……」


 「そんな事が? 我々は流石に知りませんね。内閣が勝手にやっているのか、もしくは何処かの政治家が手を入れているのか……。所詮は利権塗れですし、我々のような下っ端の所には情報なんて下りてきませんよ」


 「まあ、でしょうね。良い悪いは別にして、そこは最初から期待していません。そもそも下っ端に情報が下りてきた方が問題です。セキュリティが穴だらけだという事にしかなりませんので」


 「ええ、まったくです。それはともかく、皆さんは普通に食事をするのですね。我々もレーションを持って来ていますが……」


 「昨今は昔と違ってそれなりに美味しい物に変わったと聞いていますが、それでも美味しくないのですか? もちろん普通の料理と比べてではありませんよ? 携帯食ですし」


 「そうですね。少しはマシになっているとは聞いています。しかし皆さんのような弁当とは違いますね。それと、古いレーションを処理する為なので、美味しい物を持たされている訳ではありません」


 「世知辛いとはいえ、捨てるなどという勿体ない事は出来んからのう。致し方なしと言ったところか。私達の場合は、作ってもらって然程の時間が経ってない弁当をミク殿のアイテムバッグに入れてもらっておるからなぁ……」


 「時間停止でしたっけ? それなら美味しいまま運べるんですね。熱々なら熱々のまま。本当にラノベなんかと変わらない反則仕様だと思います。そんな物がこの世に、うえぇぇぇーーっ!?!?!?!!」



 西島少尉が見ている先では、セリオとレティーがおにぎりを食べていた。ミクは惣菜のきんぴらの蓋を開けており、それも摘みつつおにぎりを食べていく2匹。それを見て唖然としている軍人達。アイテムバッグの上に居たので気付いていなかったのだろう。



 「いえ、気付いてはいましたけど、ぬいぐるみだと思っていました。まさか生きていて、あまつさえ普通に食事をするなど……。というか、その小さい生き物はサイですか?」


 「正しくはドラゴンライノとマルチスライムだね。ドラゴンライノの名前がセリオ、マルチスライムの名前がレティーね」


 『よろしくー』


 「よろしくお願いします」


 「「「「「「!!?!!?!」」」」」」



 軍人6人は驚きながらも周囲をキョロキョロと見回す。それを見て「自分達も最初はああだったなぁ」と懐かしむコウジ達。すっかり慣れきってしまったようだ。



 「先ほど頭に直接語りかけてきたのがセリオで、機械音声みたいに喋ったのがレティーですね。どちらも魔物ですが、魔物の中には温厚な種族も居るらしいです。<ガイア>でいうところの犬や猫のようなものと考えれば分かりやすいと思いますよ」


 「ああ、成る程。そういえば犬や猫の魔物が出るダンジョンもあるらしいし、そう考えると温厚な魔物も居るのだろうな。普通におにぎりを食べているが……」


 「むしろ意思疎通ができる分、セリオやレティーの方が一緒に居て楽しそうですけどね。犬や猫なら躾が必要ですが、セリオやレティーは頭が良いので会話で分かってくれますし」


 「そもそもだけど、セリオもレティーも人間と同じかそれ以上の知能を持ってるしね。レティーなんて全身が細胞で脳みたいなものだって言ってたし、そうなるとスライムって猛烈に頭が良いって事になる」


 「実際に頭が良いんだから何とも言えないけどな。何たって<ガイア>に来て2日で日本語を話したし、普通に会話ができたもんな?」


 「あの時までは様々に聞いて単語や文法を覚えていましたから、それで声を出さなかっただけです。聞いて理解する方が先でしたしね。【念送】ならば楽なのですが、会話は簡単ではありません」


 「「「「「「ねんそう?」」」」」」


 「先ほどセリオが話した方法。想念や思念を相手に放出するものだね。スキルとして存在するけど、あれはスキル無しでも使えるものだよ。そして【念送】は念を送るという性質上、相手の言語で受け取られる。だからわざわざ相手の言語を覚える必要が無い」


 「………という事は、わざわざ相手の言葉を覚えなくても会話が出来ると?」


 「そう。受け取った相手が自動的に自分の言葉で解釈するから、齟齬も生まれないし言葉の聞き間違いも無い。そういう意味では優秀だけど、お互いに【念送】が使えないと会話が出来ないの。何故なら一方通行だから」


 「それは無理ですね。……となると、あのセリオは我々の言葉を聞いて理解しているという事ですか。頭、良いんですね」


 「さっき言ってた通り、人間と同じかそれ以上の知能はある。むしろ人間の方が知能が低いかも」


 「「「「「「………」」」」」」



 食事に夢中のセリオを見て、「そうかぁ?」と疑問を持つ軍人6人。それとは別にコウジ達は、「小さい姿しか知らないからなぁ」と思うのであった。


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