0486・鑑定の石板と新スキル
「どうやら問題無いようだ。という事はコレと引き換えにミクが魔法を教える事になるんだけど、ちゃんと人員は決まってるんだろうね? 一応ミク達も<魔法の使い方講座>の為にカメラを回すから、変なヤツだと記録に残るよ。注意しな」
「それは分かっています。問題の無い者を選んでいると思います」
「選んでいると〝思います〟、ねえ……。上の阿呆が選んでいるのかい? それとも軍の中に居る怪しい連中が選ばれてるのか。それは知らないけど、次々に軍の内部の澱みが暴かれないといいね? ま、私達からすりゃ暴かれた方が都合が良いんだけどさ」
「「「「「………」」」」」
「さて、そんな事よりも何処でミク達から手解きを受けるつもりだい? 指定しなきゃ市井のダンジョンっていうか、公的ダンジョンで受ける事になるよ? まあ、そっちの方が良いとも思うけどねえ」
「………おそらくそうなるかと。軍の基地には私有地ダンジョンがありません。もともと軍の基地は有事の際に民間人を匿う為の広さを持ちますし、だからこそ出来たダンジョンは軍が威信をかけて破壊しています」
「威信をかけて破壊してるのか、壊して宝箱を手に入れてこいと命じられているのかは知らないけどね。建前上はそうなんだろうさ、建前上は」
「「「「「………」」」」」
「そんな軍の建前はどうでもいいとして、ミク達がウチの仕事をする場合はどうしようかね? 軍は邪魔だし……」
「ウチの仕事? とは、いったい……」
「葉月グループに新たに探索者支援の会社を立ち上げたのさ。で、ミク達にはその新会社に所属してもらってる。簡単に言えば持って帰ってきた獲物は葉月グループに売る。その内の何割かは取り分だが、多くは新会社の売り上げって事さ。代わりに所属探索者には手厚いサポートと給料が出るって会社だね」
「つまり全て自分の収入ではない代わりに、サポートと給料が貰えるという事ですか。一線級の探索者を相手にする訳ではない?」
「おや、よく分かったね。ウチの新会社が求めている人材は燻ってる連中さ。そういうヤツをサポートするのが目的だ。代わりに持って帰ってきた獲物の多くはグループでの研究販売に回す。日ダンは獲物を公平にしか回さないからね、言い換えれば研究分すら足りてない」
日ダンとは<日本ダンジョン探索者支援協会>の事である。基本的には日ダンと略されて話される事が多い。日本ではよくある事らしく、略称しか覚えておらず元の名前を知らない人も稀に居たりするそうだ。
「それは確かに聞きますね。日ダンも何処に売っているのかは知りませんが、結構な企業から突き上げを受けているそうです。その割には毎日探索者から買い取っている筈なのですが……」
「だよねえ。その大量の獲物はいったい何処に行ったんだって話さ。だから私達は新会社を立ち上げて、独自に集める事にしたんだよ。葉月グループには私有地ダンジョンがあるからねえ」
「公的ダンジョンであれば日ダンに売らなければいけませんが、私有地ダンジョンの場合は税さえ払えば手に入れられますからね。あの法律は変えられないでしょう。変えれば国が責任を持つ事になります」
「だからこそさ。だからこそこっちが私有地ダンジョンを使うんだよ。ま、それはいい。それより軍の連中を鍛えるなら新宿ダンジョンかい? ここから一番近いのは」
「千代田ダンジョンもありますから、そちらでも構わない気はしますが……。おそらく新宿ダンジョンという事になると思います。東京はダンジョンが多かったですが、その反面浅いものも多かったので今はあまり残ってはいません」
「大都市である以上、スタンピードの事を考えたら減らすしかないだろ。代わりに私有地ダンジョンが遅々として進んでないけどね。とはいえ、新会社は私有地ダンジョンの破壊も請け負う。これからは多少は減っていくだろう。既に1つ潰しているし」
「それでも金額が金額ですから、払うのは難しいでしょう。そこは如何されるので?」
「ウチの新会社では料金を取ってないよ。代わりに私有地ダンジョンで得た物は全てこちらの物という契約さ。向こうはタダで破壊してもらえる。こっちは手に入った獲物で儲かる。お互いに得をするって寸法だね」
「それは獲物を持って帰ってこれたら、という大前提が必要となりますが?」
「持って帰ってこれるのさ。ま、色々とあってね。それとその御蔭で手に入れられた物があるんだよ。ミク、前に宝箱から手に入れた物を出してくれないかい?」
「コレの事?」
ミクがアイテムバッグから出したのは鑑定の石板だった。それを見た軍人5人はすぐには理解しなかったが、最初に西島少尉が気付き声を出した事で他の4人も理解した。
「そこのお嬢ちゃんはよく知ってたね。イギリスでしか出ていないっていうのにさ」
「私ダンジョンで出た物を暇つぶしに見ていたりするので、鑑定の石板の事も覚えていたのです。まさかイギリスでしか発見されていない物が我が国で発見されるなんて……」
「だがアレは……確か運が良ければ鑑定される、という程度の物じゃなかったか? だから使えないと言われていた筈だ。そんな事を同僚が言っていた」
「ああ、それは偶然使えただけだろうってさ。ミクが言うには魔力を流さないと使えないとの事だ」
「「「「「!!!」」」」」
「そうか、それで使えなかったのか!? ……あれ? 運よく使えたんですよね。という事は偶然魔力を流せた際には使えた?」
「おそらくそうだろう。だから運が良ければ鑑定されるなんていう、よく分からない事になったんだろうね。実際に私も使わせてもらったけど、普通に鑑定できたしねえ……ほら」
そう言ってハルカは鑑定の石版に手を置き魔力を流す。その結果、ハルカ個人の鑑定結果が出る。
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<葉月遥>
種族:人間
年齢:20
性別:女
スキル:薙刀術・精神看破
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「……あれ? 何でスキルがもう1個あるんだい? 昨日使った時には【薙刀術】しか無かった筈……」
「はい、私も見ていましたがお祖母様は1つしかスキルを持っていらっしゃいませんでした。何故2つ目があるのでしょうか……。そしてお祖母様は知らなかったのですよね?」
「ああ、全く知らない。………ん? という事は2つ目のスキルを手に入れても教えてくれない?」
「私もそこが引っ掛かってまして……。もしかしたら2個目のスキルがあるのを知らない人も居るのではないかと」
「となると、鑑定の石板は非常に重要な道具となりますが……。国に売られるおつもりは?」
「ある訳ないだろ。これは新会社の、そして今はミク達の物だ。まだ新会社は立ち上げたばかりで、貴重品を安全に守れないからね。この世で一番安全な者に持っていてもらった方が良い」
「それにしても【精神看破】とやらはどう使えば良いんだろうね? 持ってると分かっても使い方が分からないんじゃ、どうにもならないよ」
「周りの魔力を知覚すればいい。その近くに色が付いているのが分かる筈。それが精神の色であり、汚くなるとすぐに分かる。黒い色だったり灰色だったり、それが澱んで腐っていたりと色々違うから。多くの精神を看破すれば自ずと分かる様になる」
「要は使って学べという事だね。上手く使えば交渉で非常に有利になれるし、危ないヤツも分かる様になる。便利なスキルをもらったもんさ。ありがたく使わせてもらうかね」
葉月グループのドンが今まで以上になる。この情報に戦々恐々とする他の名家達であった。




