0485・鑑定と探索者証
ミク達の衝撃の鑑定結果は横に置いておき、せっかくなので様々な物を鑑定してみる事に。やはり最初はセンであり、出して来たのはミクに借りているブーツだった。何故これを鑑定しようと思ったのか分からないが、とりあえずのようだ。
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<ドラゴンブーツ>
グリーンドラゴンの皮と鱗を用いて作られたブーツ。異常なほど強靭でありながら、柔らかくフィットする逸品
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「おぉーっ! 改めて見てもやっぱりドラゴン! 何というか鑑定してもらって改めて実感するよね、ドラゴンの皮や鱗だって」
「まあ、気持ちは分かるけどな。ブーツの鑑定結果がそれだって事は、こっちだとどうなるんだ?」
コウジはそう言いつつ、メイスを鑑定の石板の上に置く。そして魔力を流すと鑑定結果が出た。
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<ドラゴンメイス>
グリーンドラゴンの角と牙と爪と鱗と魔石を砕いて練り合わせ、形を作ってから焼いて作られた一品。儀式魔法を使って焼かれており、その耐久力は同じドラゴンにも負けないほど
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「ドラゴンに負けないメイスって凄いなぁ。とはいえ長巻はドラゴンを切り裂けるって言ってたから、ドラゴンに負けないっていうのも普通なのか。……普通ってなんだろう?」
「そんな哲学的な話じゃないし、鑑定結果でもないでしょ。それはともかくとして、他のも色々とやってみようよ」
その後はミクのアイテムバッグから色々と出してもらい、様々な鑑定結果を見て楽しむ5人。ミクは見ながら「へー」と思っているが、それ以上の感想は無かった。イマイチ何が面白いか分からないからである。
そんな時、ミクのアイテムバッグを鑑定しようとセンが言い出したので「まあ、いいか」と思い、ミクはそれを許可。実際にはどう表示されるか微妙に興味があったからだ。
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<アイテムバッグ?>
アルファドラゴンの皮で作られたアイテムバッグと思しき物。星の神程度では破壊する事も出来ない。内部では時間が停止しているが、それは時間と空間が断裂しているからである。それを実現させて通常空間に固定するには星の神の権能では足りない
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「「「「「………」」」」」
ミクにとっては<根源の神>が作った物だと知っているが故に当たり前の事なのだが、コウジ達は知らないので訳が分からないのだろう。ミクにとっては何でもありの神々なので今さらだが、コウジ達は慣れていないので放り捨てる事が難しいらしい。
それでもミクの鑑定結果の時よりは早く復帰し、全てを放り投げる事に決めたようだ。
「とりあえず疑問とかそういうのは全て放り投げよう。さっきも言ったが考えるだけ無駄だし、意味が無い。訳の分からない物は訳の分からない物で済ませる他ないしさ」
「……そうだね。とにかく星の神程度では破壊できないらしいよ。つまりドラゴンの皮の鎧より、あのアイテムバッグの方が強いんだね。その事だけはよく分かったよ。意味は分からないけど」
「それ以前にアルファドラゴンとは何でしょう? 始まりのドラゴン? 最初のドラゴン? それともアルファドラゴンという名前のドラゴンが居るのでしょうか?」
「その辺りも考えるだけ無駄ではないかと思います。そもそもダンジョンで手に入れたようですし、そうお話されていました。であるならば、そもそもミク殿でも分からないでしょう」
ミクもアルファドラゴンという者は知らないが、誰が作ったかは知っている。しかし、前にハルカがダンジョン産だと言った時に肯定も否定もしなかったミク。それは意図的であったが、今回も明言はしなかった。
「おっと……御嬢様、そろそろお戻りになられる時間ですぞ。我等もお暇せねばなりませぬ」
「もうそんな時間でしたか、早いですね。とりあえずミク殿、<鑑定の石板>は持っていてもらえますか? それが一番安全ですので」
「分かった。預かっておく」
ヤエ達は北条家を出ると、車で帰っていった。それからもコウジとセンと会話をしていたが、リオがリビングに来たので夕食作りの開始となった。ちなみにミクはコウジの包丁を壊した代わりに、予備の解体ナイフを彼に渡している。
その切れ味はあまりに鋭いものの、最近は使うのに慣れてきたようだ。その辺りが一番怖いので、用心だけはしておくように言う。
夕食を食べた後はササッと片付け、いつも通りミクの指導の元に魔法の練習だ。生活魔法などの魔力消費の低い魔法で練習するのが一番なので、攻撃魔法が使える様になっても基本の練習は欠かしてはいけない。
魔法も感覚なので、使わなくなれば腕は錆びる。なので毎日感覚を調整し最適な状態にしておかないと、いざという時に上手く使えない事もあるのだ。いきなり動いてしまい体の何処かが痛くなるのと一緒である。
いつもの練習が終わったら各々は部屋に戻り、ミクは毛皮を敷いた後で【浄滅】を使って綺麗にする。それが終わったら寝転がり、瞑想をして朝まで過ごすのであった。
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それから3日。依頼も無くゆっくりしていたが、ようやく軍が探索者証を持って来た。そこにもハルカが立会い、弁護士と共にカメラを回していたが、それよりも若くなったハルカに驚いていた。
ちなみに来たのは前回と同じ軍人5人であり、だからこそ唖然とした顔が印象的であった。
「あの……若返られたのですか?」
「ああ、そうだよ。ここの家の庭のダンジョン、そのコアルームを破壊した時に出たらしくてね。それで譲って貰ったのさ。ちなみに5億円の税金は既に払ってあるから、誰にも文句は言わせないよ」
「それはまあ、我々の関知する事柄ではありませんが……。きちんと支払ったのですよね?」
「いんや。彼らは私に10億円分の便宜を図ってくれと頼んできたのでね、お金は払ってないよ」
「な!? ……いったい何を考えているのですか!?」
「あんたこそ何を考えているんだい? 仮に10億だとして、それが渡されればどうなる? 絶対に余計な者どもがこの家族を特定し、脅したり拉致したりとするだろう。彼らは自分の命を守る為にも便宜という形にしたんだよ」
「……いいのですか?」
「俺達からしたら降って湧いたような金です。そんなものに生活をメチャクチャにされるなんて堪ったものじゃありませんよ。それとも軍が守ってくれるとでも?」
「いえ、そのような事はありませんが……」
「なら黙ってるんだね。口だけで何もしない者など、お呼びじゃないんだよ。いちいちしゃしゃり出てくるな。葉月からの便宜ってのは、当然だけど家族の保護も含まれている。こっちはそうやって動いてるんだよ」
「………」
「黙ってないで、さっさとミクの探索者証を出しな。法的に有効かどうか調べるんだからね」
「なっ!? 我々を疑うと?」
「当たり前だろうが。前にも私は言った筈だよ、過去の日本軍は何をした? とね」
「………」
「言われて腹が立つなら過去の亡霊を怨みな。過去の連中がやらかした所為で、今のあんた達が苦しんでるんだからね。そして今の若者に押し付けて好き勝手やるジジイども。それこそが癌であり、あんた達が本来怨むべき相手だろうが」
「「「「「………」」」」」
それを言われても自分達では何も出来ない。忸怩たる思いを持ちつつも同時に安堵している軍の5人。何故なら軍を批判する内容も当たり前の様にライブ配信されているからだ。
もちろん葉月家が意図的にやっている事も知っている。だが軍からは何も言えないのだ。やってはいけない事では無いのだし、機密でも何でもない。である以上、軍を腐らせるゴミを口撃しても咎める事はできないのだ。
5人は咎める気も無いが。




