0483・依頼の完了
暑い砂漠の中を歩いていくミク達。と言ってもミクには何ら問題は無く、汗1つ掻かないのだが、コウジ達はそうではない。いきなりの暑さに汗を掻きつつ、それでも階段を探して走り回る。
疲れたら途中で歩き、体力が戻ればまた走る。11階はブラックキャメル、12階はイエロースコーピオン、13階はレッドオーク、14階はシャドウ。特に14階のシャドウは魔力や気配が感知できないと、急に現れて消える厄介な魔物だ。
どうやら影から影に移動するらしく、コウジの影からジロウエモンの影に移動したりしていた。シャドウ自体が影のような体をしている為に見分けがつきにくく、コウジ達は苦労をしていた。
レッドオークに関しては、オークより強く肉質は良さ気ではあった。1体だけ持って帰る事にし、残りは始末して先へと急いでいる。そもそも砂漠であり、暑すぎるのだ。だからこそ早めの攻略の為に走り抜けている。
そして15階。ついにコアルームまで辿り着いた。北条家の庭のダンジョンと同じくキューブ状のダンジョンコアが浮いており、それを破壊すればダンジョン消滅となる。ミク達はどうするか話し合い、今度はヤエが破壊する事にした。
「それでは、行きます!」
ヤエはダンジョンコアに薙刀を振り下ろして破壊。それが終わった後に宝箱が現れた。素早く宝箱に近寄り開けるミク。実はダンジョンコア破壊後には確定で宝箱が出るらしいのだが、普通は大した物が入っていたりはしないらしい。
それと宝箱には罠が仕掛けられている事もあり、場合によっては死亡する罠なども存在する。なので代表してミクが開け、それまでは離れていてもらっていた。コア破壊後なので急がないといけないという事情もある。
コアの破壊後、もたもたしているとダンジョンが消滅し、消滅した段階で宝箱は失われてしまう。もちろん中身もだ。なので早く開けなければいけないという時間的制約も存在している。なのでミクが開けるのが一番良い。
そのミクが宝箱を開けるとガスが噴出したが、ミクには何の問題も無い。そして宝箱の中にあった石板を素早くアイテムバッグに入れて、コアルームの中央に集まる。その後は前回と同じく収縮するような感覚と共に、ダンジョンの外へと排出された。
「どうやら無事に脱出できたようです。最後にミク殿が手に入れたのが何かは分かりませんが、有用な物だと良いですね」
「どう見ても唯の石の板っぽかったけどね。それよりダンジョンの消滅は確実? 私には黒い渦は見えないけど……」
「俺にも見えてないし、間違いなく消えてるだろう。確認の意味で言ったんだろうけど、ちゃんと消滅しているぞ」
「それでは依頼者に話しに行きましょう」
ミク達は表に移動し、チャイムを鳴らして出てくるのを待つ。少しすると依頼主が出てきたので車庫に行き、ダンジョンが消滅しているのを確認して貰った。黒い渦が無事に消えている事を確認してもらい、依頼完了のサインと捺印を貰ったら挨拶をして車へと戻る。
ダンジョン踏破で疲れているものの、まずは車で北条家へと移動する。会社は出来ているとはいえ、あくまでも出来ているだけで本拠はビルの一室でしかない。しかもそこでは密談がし辛いのだ、一応会社の人間達が居るので仕方がないのだが。
早急に集まれる場所を用意しなければいけないが、そんな場所が早々見つかる筈もなく、今も北条家で話し合いなどが行われている。あそこだと知られてもいい人しか居ないのと、集まりやすいという理由もあった。
北条家に車が止まり、ミク達はやっと外に出る。攻略でミク以外は疲れており、車に乗る前に【浄滅】で綺麗にはしたものの、それだけである。ダンジョンの攻略を一気に行った反動であろう、心の方の疲弊も大きかった。
北条家に入って一息吐き、冷房の魔道具で冷えた部屋が心地良い。そんな中で飲み物を飲みつつ休憩する。ミクのアイテムバッグには飲み物も入っており、それを渡しているだけである。
「ふぅ……やっと楽に過ごせるよ。【身体強化】を使うと疲れるし、栄養が無くなるしで厳しい。思ってる以上に大変だって思うけど、その分だけ食べられるから微妙かなぁ」
「それでも使いすぎると痩せていってしまうけどな。そもそも食べられる量に限度があるんだし、吸収されるのにも時間が掛かる。それ以上の早さで栄養を消費し続けると確実に痩せ衰えていく。最後には腹だけ出て、手足は骨と皮みたいになるかも」
「可能性が無い訳ではないのが何とも言えませんね。葉月の専属医師も似たような事を言っておりました。栄養が吸収される速度以上に消費する恐れがあると」
「栄養と言ったところで吸収されるまでは無いのと同じ、にも関わらず【身体強化】で容赦なく消費され続ける、ですか……。体を鍛えられるのは間違いないですが、同時に上手くコントロールせねば体がおかしくなってしまいますな」
「それはもう諦めるとして、それよりミクが開けてくれた宝箱の中に入ってた石板。あれって何かな? 誰か知ってる?」
「おそらく、なら分かるぞ。多分だけどアレは鑑定の石板じゃないかって思う。イギリスだったか何処かで同じ物が出てた筈だ。………これだな」
コウジがハコの画面を見せてくるので、ミクはアイテムバッグから石板を取り出す。リビングのテーブルの上に出したが、ハコで映し出されている物とそっくりである。といっても唯の石の板だが……。
「使い方は石板の上に物の一部でもいいから乗せて、手を当てるんだと。運が良ければ鑑定されるらしい」
「運が良ければって何? 鑑定されるかどうかに運が必要なの?」
「俺に言うなよ。そう書いてあるから読んでるだけだっての」
そう言い合っている兄妹を尻目に、ミクはお茶のペットボトルを乗せて魔力を流す。するとミクの目の前にウィンドウが現れた。
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<十三茶>
十三種の茶葉を使った飲料
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それだけが出ているが、商品名と同じなので間違いは無いだろう。それを見てコウジとセンが固まっている。ウィンドウの内容が見えていないようだが、しかし使えた事は分かったのだろう。驚いている。
「ど、どうやったの? 使えてるって事は運が良かったって事?」
「いや。単に魔力を流しただけ。多分だけど魔力の流し方を知らないから分からなかっただけじゃないかな?」
「「「「「あっ!」」」」」
どうやら言われて気付いたらしい。魔力を偶然流せれば鑑定できたのだろう。しかし魔力の流し方など分かっていない筈なので、偶然でしか鑑定できないとは……。使い勝手が悪くて仕方ないだろうに。
「本当にそうですね。偶然でしか使えないなど、役に立つとは思えません。それにしても十三茶はちゃんと十三種の茶葉を使っているのですね。そういった部分もきちんと表示されるなら、なかなか面白い事になると思いますよ?」
「世の中の物を鑑定する企画とかやりたいよね。どこの商品が偽物だとか、どこの商品は正しいとか。暴かれるのも良いと思わない?」
「セン、お前メチャクチャ悪い顔をしてるぞ。まあ、食品偽装とか過去に事件もあったしなぁ。企画としてはアリだとは思うけど……。企業によっては妙な圧力とか掛けてきそうだ」
「それなら葉月家の新会社としてやればいいと思いますよ。葉月グループにも食品会社はありますし、そこの商品も混ぜれば誰も文句は言わないでしょう。もちろん問題の無い商品だけにしますけど」
「「………」」
それはそうだよなー、と納得する北条兄妹であった。




