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0475・かかる時間の間に




 「さて、軍の連中が帰ったからこれからの話し合いだ。おそらく奴等はこれから探索者資格の発行の手続きに入るだろう。仮に超法規的措置を行うならすぐに発行されるだろうけど、その可能性は低い。となると発行までに時間が掛かる」


 「確かにその可能性は高いですな。通常の法律の範囲で行うとなると、我が国の者ではない方に探索者証を発行する事になりますし、通常の審査などを経てのものになります。ただし素通しで行われるとその限りではありません。早ければ1日で作ってくるでしょう」


 「確かにね。殆ど何も記入されてない紙でも、国がOKを出せば通る。それは間違い無い事さ。ただ……今の政権にそれが出来るかは謎だねえ。今の首相はアレだし、あいつは官僚気質だ。前例のある事しかやりたがらないし、失敗に怯えるがあまり踏み出さないヤツでもある」


 「ならば時間が掛かるでしょうな。そもそもミク殿に探索者証を渡すという事だけですが、戸籍がネックになっております。ここは絶対に大事なところですが、ミク殿は異星の方ですからな……」


 「戸籍の有無が不逞外国人の浸透を防いでるんだ。戸籍の廃止を訴えてる連中が居るが、あんなものは声高に自分が売国奴だと証明しているに過ぎない。戸籍が無くなれば外国人は簡単に日本に浸透できるようになる。本当、外国勢力の為に働く売国奴が増えたもんさ」


 「ああいう輩こそが、かつての大戦の際に我が国を裏切っておったのですがな。何十年経っても変わらずに裏切り者など出てくるようで……。戦国時代以前から裏切り者など幾らでも居ますが、今の時代にも当たり前のように居ますな。ここまでの情報化社会になっても」


 「金さえ貰えりゃ何でもいいヤツ、自分さえ儲かれば何でもいいヤツ。そういう大陸気質のヤツが多いんだろ、きっと。我が国は良くも悪くも大陸の影響を受けてきた。大陸には我が国以上に裏切り者が大量に居るんだ、そういうヤツは大陸人とそっくりなんだよ」


 「まあ、そうですな。これ以上はダメだという歯止めの掛からぬ連中。確かに大陸人にそっくりだと言わざるを得ませぬ」



 ハルカとジロウエモンが会話をしているが、内容に関してはミク達はスルーしている。まだ朝も早い為、ミクはアイテムバッグからおにぎりを出して食べようとすると、横のセリオも欲しがったので開けてやった。



 「すまぬな、話が横に逸れたようだ。先ほどの話だが、早ければ1日で済むだろう。しかし遅ければ時間が掛かる。探索者資格が無い限り、私有地ダンジョンにしか潜れん。そこは土地の所有者が許可を出せば、資格が無くても潜れる。そうしておかねば、いきなり出来た時に対処できぬ故にな」


 「大奥様、もしかして破壊を望む私有地ダンジョンに……」


 「そうよ。ミクはともかく他の者の修練の為に、ダンジョン破壊を請け負ってはどうかという事じゃの。1日1人5万は高いわ。何日かかるか分からぬのに、6人で30万も掛かる。もちろん命の危険はあるのだが、それにしても高すぎよう?」


 「確かにそうですな。その所為で私有地ダンジョンの消滅は上手くいっておらぬと聞きます。いきなりダンジョンが出来てそれを土地の所有者が何とかせよと言われるのです。たまったものではありますまい」


 「それは分かりますが、そんなに都合よくダンジョン破壊に応募してくるでしょうか?」


 「何を言っておるのだ。だからこその配信であろう? 格安で請ける代わりに配信すればいいのだ。そちらで儲かるだろうし、ダンジョンの中の情報も拡散出来る。探索者の死亡率の高さは情報の少なさによるところも大きかろう」


 「情報……? ってもしかして魔法を使った戦い?」


 「その通り。私も幾つかそなたらの動画を見たが、魔法が有ると無いでは天と地ほど難易度が変わる場合がある。それを見せれば戦いのパターンも見つけられる筈だ。もちろんパターン通りにいかぬ事もあるだろうがな。それでも知識の有無は大きい」


 「だからこそ配信で儲ける代わりに、格安で請けるわけか。ついでに中で得た獲物は探索者の物ですから、そっちでも儲かりますね」


 「探索者資格を促す為には大々的にアイテムバッグをアピールする方が早かろうが、それをすると阿呆どもがなぁ……」


 「襲ってきても返り討ちにできるけどね? それもカメラに収めておけば良いんじゃないの?」


 「そうじゃの。最新のドローンカメラは超小型だし、アレであればミクに予備のバッテリーを持っていってもらえば済む。そこに阿呆どもが映っておれば叩き潰せるの。むしろ都合が良いか? そなたらには覚悟をしてもらわねばならんが……」


 「【身体強化】も多少は使える様になったから大丈夫かな? それにミクが防具を作ってくれたしね。まさかこんなに器用だとは思わなかったけど……」


 「それでも私のはあくまで素人の物、本職の物に比べれば劣るから注意して。と言っても、この星には今のところは本職が居ないけど」


 「そうなんだよねー。だからこそ2人の武器も作ったんだし?」


 「薙刀と刀でしたね。どちらもグリードベアの素材で、鋼よりも遥かに切れ味が鋭くて驚きました。ついでに魔力を流すと更に切れ味が上がりますし」


 「話が横に逸れてるから最後に言っておくよ。少し前にも話してた通り、そろそろ庭のダンジョンを終わらせるべきだろう。いつまでも庭にダンジョンがあるのは落ち着かないだろうしね。そしてそれをダンジョン破壊の第一号として配信する」


 「ああ、それで応募してくれる人を待つ訳ですか」


 「そういう事さ」



 これからの行動指針が決まったので、早速準備に取り掛かった5人。ミクはいつでも動けるので準備の必要すら無い。まあ、そもそも防具などすら必要ないのだから、準備が無くても良いのは当たり前である。


 グリードベアの革鎧を身に着けた5人が集まった。ちなみにヤエ達3人はグリードベアの皮で出来たブーツを履いている。これもミクが作った物だが、中敷だけは市販の物である。ミクがそれに合わせて作った物で、鋼の短刀でも貫通しなかった。


 他にも防具を着けた方が良いという話にもなったのだが、今度は防具を着けすぎると重量で動きが鈍るので良くない事をミクは説明。戦闘における基本は回避であり、防御は盾で行うべき事だ。


 【身体強化】が使い熟せれば回避も移動も格段に変わる。それを徹底して行う方が大事であり、傷や怪我を気にするなら最初から戦いの場に出るな。そうハッキリ言ったのだ。ちなみにこの言葉を一番支持したのがハルカである。


 防具の事はヤエの事を思っての言葉だったのだろうが、ハルカがミクを支持した以上は誰も文句など言えない。それが葉月グループの総帥という立場である。



 「さて、そろそろ出発しよう。途中で休憩を挟むけど、コアルームまで一気に進む。既に分かりきった道ではあるが、安全第一で進むぞ!」


 「「「「了解」」」」


 「ふむ、自然とこの形になったかい。これから多くを経験していくんだろうけど、とりあえずは合格かねえ」



 コウジが一応のパーティーリーダーとなっている。とはいえ本人が好んでやっている訳ではなく、一番前で戦っているので何となくである。ちなみにリーダーではあるが、指示を出したりはしない。指示役はヤエだ。


 その為、今はドラゴン素材の薙刀をミクから借りている。指示を出すのもあるが、武器は基本的にリーチが長い方が有利なのだ。それを痛感したのか、練習した事のある薙刀に武器を変更している。


 そんな装備の6人は、コアルームへの道を【身体強化】で走って行くのであった。


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