0469・19階まで
コウジ達は必死に練習しているものの、こちらは一気に駆け抜けていく。ミクにとってこのダンジョンの魔物はザコに等しい。とはいえ神が喰える怪物からすれば全てザコだが、特に厄介でもないという意味でザコなのだ。
ミクはさっさと11階に下りると、アンガーブルを蹴散らしながら進み、触手で持ち上げながらレティーに血抜きをさせる。そのレティーはどんどんと血抜きを進めていき、終わった物はミクが収納していく。
下への階段を見つけたので下り、12階へと到着。そこに居たのは額に捻くれた2本の角を持つ黒馬だ。何という名前かは知らないが、これもまたミクの敵ではない。走ってきて角を突き立てようとするが、その前に首を落とされる。
触手が視認できない速度で振り抜かれ、その一撃で首が刎ねられたのだ。その後は触手で持ち上げられて血抜きをされていく。11階と変わらない光景だが、ミクにとっては一番手っ取り早い方法だと言える。
その黒馬を適当に狩りつつ13階へ、ここには大きな蛙が出てくる。しかも体に付いている粘液が油という、とても面倒臭いヤツなのだ。しかもこの蛙は厄介な事に、使ってくるのである。【火魔法】を。
味方をも燃やすようなヤツであり、燃やされた蛙は火達磨になりながら突っ込んで来るのだ。まるで焼身自殺をしながらも道連れにしようとしてくるという、まともな探索者なら戦わないであろう相手である。
ミクの場合は魔力を食い荒らすので、そもそも【火魔法】を無視できてしまう。しかしこんな攻略方法では説明できないし、燃やさずに持って帰る方法も編み出しておいた方がいいとは思ったようだ。
「とはいえ1匹だけで居るヤツを狙えば、特に問題なく狩れるし持って帰れるんだよね。わざわざ倒す方法を確立しなくても、頭を潰せば終わるか。こいうのはシンプルな方が楽でいいね」
という事で槍を取りだし、素早く頭を突いて絶命させるミク。表面が油で滑る筈の蛙の皮膚をあっさり貫いた。実はそういう意味でも厄介な魔物なのだが、やはり怪物の敵ではなかったようだ。
適当に何匹かを狩り、火達磨になったヤツは食い荒らして進む。次の階への階段を下りて14階へ。ここが草原ラストの階層だ。次の15階は何故か魔物が全く出ない場所で、安全な階層となっている。
そこは変わらず草原のようなエリアなのだが、何故か1階層が非常に狭いのだ。100メートル四方ほどしかなく、真っ直ぐに進むと次の階へと進める。更にミクの能力を駆使しても、他に生命反応等は見つからない。
つまり確実に魔物の出ない階層なのだ。まあ、その後の山の地形を考えれば分からなくもないのだが……。
それはともかく14階の魔物はカマキリである。体高3メートルで鈍重だが、鎌を振る速度だけは異様に速いと言う魔物。ミクは【身体強化】で一気に近付き腹を蹴り上げる。カマキリの柔らかい腹は簡単に潰れ、尻から黒くて長い物がウネウネと出てくる。
ミクはそいつが全て出てきた段階で燃やし、カマキリの死体をアイテムバッグに入れる。多くは必要ないだろうと思い、他のカマキリは魔法で焼き殺しながら15階へと進んだ。
15階がセーフティエリアなのは無視し、休憩の必要がない怪物は16階へ。
16階からは、うって変わって山の地形だが、最初に登場するのは大きな蛇だ。特に厄介なのは、口から霧状の毒液を噴射してくる事となる。体に付く程度ならば良いが、眼や口に付くとそこから体内に侵入してきてしまう。
そうなれば当然毒を受けるし、何といっても眼がやられてしまうのが厄介極まりない。麻痺毒なので体の動きも悪くなってしまう為、こいつは魔法で遠距離から倒すのが望ましいのだが……。普通の探索者には荷が重いと言わざるを得ない。
(【気配察知】が使えればいいけど、無いなら難しいんじゃないかな? 気配を読めればいいけど、そう簡単に人間種は出来ないらしいしね。スキルは努力で超えられるけど、その努力は大変なんだよ。人間種にとっては)
ミクは毒霧蛇の首を素早く落とすものの、身に毒が移ってしまう事を確認。そいつを解体して構造を調べる。その結果、首よりも更に10センチ身側まで落とさないと、毒の影響はゼロに出来ないようだ。
次に現れた毒霧蛇は大きく首を刎ね、レティーに血を吸わせると大丈夫だと返事が来た。どうやら頭の方から出ている紫色の汁が毒のようだ。もちろんミクは持って帰る気が無いので、出来る限り捨てていく。
残っている僅かな物でも調べられるだろう。毒を持って帰って悪用されても困るので、ミクとしては騒ぎになるような物を持って帰る気は無かった。
後は適当に食い荒らしつつ、更に下へと下りて17階。新たに出てくる魔物は黒い色の猪だ。こいつは珍しい【闇魔法】を使い、こちらの目を見えなくしてから突進してくるというタイプだ。それ以外に特徴は無い。
ミクは既にこいつから魔法を受けた事があるので、こいつの使う魔法は知っている。【闇檻】と呼ばれる魔法であり、魔力で払拭しない限り目が見えないという魔法である。しかも魔力を篭めれば篭めるほど強力になるというものなのだ。
(そんな魔法を私が使わない筈がないよねえ?)
ミクは黒い猪に【闇檻】を使い、視界を闇に閉ざしてしまう。しかし黒い猪は自分も使う魔法だからか、解除する方法を知っているようだ。なので解除しようとするも、解除できない。何故ならミクの魔力の方が強いからである。
必死に魔力を篭めて解除しようとする姿は滑稽であり、自分がやる筈の事を返されたマヌケさに満ち溢れている。その後は首を切られて派手に血を噴出し、首筋に貼りついたレティーに一気に吸い上げられて死亡した。
こいつの皮はそれなりに優秀みたいだがスルーし、次の18階に進むための階段へと急ぐ。道中の魔物は食い荒らし、18階へと駆け下りた。
18階、ここの魔物を多めに狩ろうと思ってやってきたのだ。ここに出てくるのは【旋風弾】を放ってくる鳥で、頭上から一気に攻撃を仕掛けてくる。しかも群れているので厄介と言えば厄介だが、バカな鳥でもある。
理由は至極単純で、耐えていればやがて魔力枯渇で落ちてくるという、ハッキリ言って鳥頭な魔物なのだ。ミクは適当に魔法を使わせては、自分の目前で魔力を食い荒らす。なのでミクにはダメージが無い。
それでも無駄に繰り返し、魔力が無くなったら落ちてくる鳥を絞め続けた。30羽ぐらい確保できたので良しとし、ミクは最後の19階へと進んで行く。ここの魔物も狩っておかねばならないとミクは思っている。
19階に下りて見えた魔物は、赤黒い色の大きな熊である。立ち上がった姿は4メートル近いという大きな熊であり、魔法は使わないが純粋なパワーファイターだ。そして足が速い。なかなかに良い素材になるだろう事は確実だ。
流石に重さがシャレになっていないので数を狩ってもトラックに乗らないだろうが、牙や爪ならば大量に乗る。ミクとしては儲かるかもしれない物だ。なので今の内に送っておきたい。
赤黒い熊は立ち上がり、ミクを威圧するように咆哮する。しかしそんな隙を見逃す怪物ではなく、熊は立ち上がった姿のまま首を刎ねられた。長巻でも同じ事が出来るので、この殺し方には問題が無い。
流石に人間種に再現できないのはマズいが、これは【身体強化】を使えば可能な事である。なので死体を見られても、おかしな点は無い筈なのだ。この星の今の連中には出来なくても、それは説明すれば済む。
要は怪物だとバレなければいいのである。怪物だとバレなければ。




